第3話
「離せ!余は助けなど必要ないのだ!!!」
魔王は惨めであった。
魔界の自分ならば、こんな小娘二人振り切って一瞬で殺せるのに。人間の体……しかも二日も何も食べていない状態では、ただ引きずられることしかできなかったのだ。
「余を愚弄するか!貴様ら!!」
「オジサン、偉い人なの?シャチョーとか?金持ってる?」
「ちょっ、アンリー、やめなよ。エンコーするつもり?」
「そんなんじゃないけどさ、気になってー。うちらもマッ○の金くらいしか出せないじゃん?」
「ペイ〇イなら多少出せるわ、うち」
「あー、うちも。親に出してもらえばワンチャン」
魔王を引きずりながら会話する女子高生二人。その口調はまるで、クラスメイトの男の子にハンバーガーを一つ奢ってあげるくらいのノリだった。
「か、金……?余は魔王であるぞ!!そんなものは持たなくて良いのだ!余は……余は……力で全てを解決するのだ!」
「え、オジサン、マオウさんっていうの?うちと名前似てるじゃん」
「へ?」
大声で威嚇したつもりだったが、全く怯まないショートカットの方の娘の一言に目を見開いてしまった。
「うち、マオっていうんだよね。よろしく、マオウさん」
「ま、マオだと!?」
「あー、マオってたしかに『マオー』って呼ばれるときあるしね。うちはアンリ。よろしくー」
ポニーテールの方はアンリというらしい。二人とも茶髪で、赤いリボンのついた制服を着ている。
「人間界にも、魔王がいたのか!?」
魔界の魔王は声が震えてしまった。そんなことは聞いていない。天使たちも知らない情報なのだろうか。たしかに、この娘たちは自分に怯えていない。
「貴様らが人間界のトップだというのか!だから余をこんな風に扱うのだな!おのれ!舐めるな!!!」
「ちょっと落ち着いてよー、マッ〇連れてくだけだって」
「そろそろ着くからさ、なに食べるか考えておいてよね」
「うち何にしよっかな。新メニュー出てたっけ」
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