【竹オジ対決】自分の事をカグヤ姫だと信じて止まない一般おじさんを月に送る配信 その二
「そういえばセレネ様よ、このステージはどういうステージなのじゃ?」
「ドキドキワクワク海老と蟹を添えた海からコースね」
前に七尾の配信でやっていたステージとは別なので気になって彼女に聞いてみれば、とち狂ってるような答えが返ってきた。
このゲームの目標を考えると月を目指すはずななのに、どうして真逆と言っていいはずの海から行こうとしているのだろう?
そもそもなんでコース料理みたいな名前になっているんじゃよ。
「ちなみに出てくるのは蛸と雲丹よ、海老と蟹は出てこないわ」
「コース名が詐欺!?」
「それがこのゲームの常識よ、気にしたら負けなの」
「……既にどういうゲームか分かってきのたのじゃ」
[目がすでに死んでるの草]
[もうカオス]
[相変わらずこのゲーム頭おかしいわ]
[振り切れたギャグゲーっていいよね]
[わかる]
平坦なステージを鍬を使って進みながら雑談を続け、時折コメントを拾いながら配信をしていると急にステージの構成が変わり洞窟のようなものが見えてきた。
「そうだわ鴉さん、この先道が二つあるのだけど、せっかくだから別々の道でいかないかしら?」
「お、それはいい提案じゃな! 上と下で別れてるようじゃが、どっちの方が難しいのじゃ?」
「そうね、難易度的には上だけど下は色々な仕掛けがあって面白いわよ?」
与えられた二択。
配信的に考えれば難しいほうをやったほうがいいかもしれないが、儂の勘的に下でやったほうが笑いが取れると告げている。
だから儂は迷わず下を選ぶことにして、彼女にその選択を告げることにした。
「それなら下じゃな、面白い展開バッチこいじゃ!」
「了解したわ……強く生きて頂戴ね」
[黙祷]
[面白い鴉を亡くした]
[死因:ツッコみ死]
[グッバイ鴉様]
「おっと主ら? なぜ儂が死ぬ前提なのじゃ?」
「いえ、そんな事は思ってないわよ……ただ――いえ、なんでもないわ」
「なぜそんなに不安を煽るのじゃ……」
「期待させるのは演者の基本じゃない」
それは期待させるのじゃなくて絶望へと肩を押してるのじゃないか?
そう思ったけど、どこかで聞いたことがある言葉に儂は一瞬を首を傾げ、操作ミスをして早速目の前にある穴に落ちてしまった。
「む……穴に落ちてしまったのじゃ」
まあ落ちたのなら上がればいいじゃろう。
そんな考えで気楽に進めようとしたのだが、急にゲーム画面からなんか無駄にいい声で誰かのセリフが流れてきた。
「人生何事も経験ですよね。時には穴に落ちてしまう、そして相当なストレスが溜まり失敗が続いてしまう……そんなの悔しいですよね?」
「まあそうじゃな、悔しいのじゃ」
「そうでしょう! だからこそ前に進むのです……時間はいくらでもありますから、前進前進!」
「このゲーム励ましてくれるのか、優しいのう」
「それでは魂込めて、進んでください!」
[落ちる度に台詞流れるんだっけ?]
[無駄にいい声なの草]
[仲間が増えたねやったね鴉様]
[おい馬鹿やめろ]
そこから別々のルートで進むことになってしまったから、同じ場所で難しさを共有することが出来なくなったので、適当に雑談を続けながら進んでいくとまた儂は落下してしまう。
「己を強く持ってくださいね、私達が失敗と呼ぶのは落ちるのではなく落ちたままでいること……そんな事を言っている方もおりますし、這い上がってくださいね」
急に難易度が上がったせいか、ミスが増えてきたが励ましてくれる仲間がいるので大丈夫、メンタル保って進んでいくかのう。
[セレネ様もう随分先に行ったよ]
[神社についたみたい]
[トマトジュース飲んでるよ]
「神社って結構先なのか? ……ふっ、だが儂はその手には乗らぬぞ、どうせ先に進んでいると伝えて儂を動揺させる気じゃろう? じゃがな、儂はこのゲームについて何も知らぬので精神攻撃は効かぬのじゃ!」
[ドやる事じゃないよ]
[可愛い]
[なんも誇れなくて草]
[ドヤ顔鴉様再び]
[ちなみに事実]
[セレネ様はやいな]
「あ、鴉さん。負けたほうホラーゲームね」
「聞いてないのじゃ!? そもそも今回は戦うだけじゃろ!?」
「言ってないもの、それに罰ゲームなしなんてつまらないじゃない?」
「それはそうじゃが、せめて食べる系飲む系にしないか? 儂ホラー駄目なのじゃ……」
まじで次ホラーやったらどんな属性が増やされるのか分からないし、何よりホラーは前回のは楽しかったが、基本的に無理なのでやりたくない。
だからホラーを望む声など見えないし、そういう感情などは感じない。
つまり儂がやる事と言えば勝つことで何も心配することなのどないのじゃ!
「よし決まりじゃな」
「何を決めたのかしら?」
「ふっ勝利への道をじゃ、覚悟を決めた儂はもう止められぬぞ」
「知ってるかしら鴉さん覚悟だけじゃどうにもならない事だってあるのよ」
「今に見ておれよ」
吸血鬼の戯言など効かぬ。
儂は基本的にゲームは得意なのじゃ、初見のゲームだって今までクリアしてきたし……なんの問題もない。
「ちなみにやってもらうのはVRホラーね」
「のじゃ!?」
それを聞いた瞬間、全身に鳥肌が立ちありえないレベルの操作ミスをしてしまい儂は穴へと真っ逆さま……そしてすかさず流れるいい声のセリフ。
「何度も穴に落ちてしまい、絶望してしまう……そのお気持ちわかりますよー。ですが、諦めてはいけません。前に進めば未来は見えますとも!」
「こいつさては煽ってるじゃろ!?」
そのセリフにさらに集中を途切れさせられ、続けざまに洞窟の奥へと落下してしまった。そして畳みかけるようにまた台詞がやってくる。
「あ、また……くぅ~お悔やみ申し上げます!」
「こいつ祟る!」
「鴉さん落ち着いて、そいつを呪ったって意味ないわよ」
「でもこやつだけは許せないのじゃ……というか、セレネ様が止まれば解決ではないか?」
「何言ってるのよ、真剣勝負で止めれるわけないじゃない。それに私もホラー苦手なのよ?」
それならなぜホラーを罰ゲームに提案するのじゃ?
至極当然な疑問、それが頭に浮かんだと同時にセレネ様が言葉をかけてきた。
「そんなの決まってるじゃない……叫ぶ貴方が見たいのよ」
それは心底体が冷えるような声であり、なんとも熱を帯びたモノだった。
どうして儂を虐めるんだ? 何か癪に障る様な事をしたのか儂は? ……そんな疑問があふれるが、感じられる感情は好意のみで儂の頭は混乱した。
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