【竹オジ対決】自分の事をカグヤ姫だと信じて止まない一般おじさんを月に送る配信 その一


 待ちに待った箱外コラボの日。

 先日あった魔王系吸血鬼VTuberのセレネ・シュヴァルツ様の雑談配信で、コラボの宣伝をしてくれた事もあり、エゴサしてみたときとか、普段見かけない名前の人達が結構楽しみにしてくれていたし、いつも以上に配信を頑張ろう。

 まあとりあえず、配信する前に挨拶でもするか。


─────20XX年8月20日─────  

11:36 浮世鴉 今日は頑張りましょうね!

11:37 セレネ ええ、よろしく頼むわ。

11:39 浮世鴉 それにしても、セール中に竹オジコラボ提案するかやりますね。

11:41 セレネ 安い方がいいもの、それに今なら私達の配信を機にゲームを買ってくれる人が増えるかも知れないでしょ? だから今しかないと思ったのよ。

11:43 浮世鴉 さては天才ですね、神ですか?

11:46 セレネ 魔王よ、もっと崇めなさい

11:47 浮世鴉 そうだ配下になっても?

11:49 セレネ 構わないわ、今なら四天王の地位を上げるわよ

11:51 浮世鴉 めっちゃ出世させてくれる草

11:53 セレネ 貴女だもの、そのぐらいはするわ。そうだ浮世鴉さん、コラボ終わったら聞きたい事あるのだけどいいかしら?

11:56 浮世鴉 別に良いぞ。でもそれはなら今でもよくないか?

11:58 セレネ あとで頼むわ 。 

11:59 浮世鴉 了解じゃ、時間作らせて貰うぞ。


 約束してしまったが、儂に聞きたい事ってなんじゃろうな。

 それは気になってしまうが、今はコラボに集中しなければいけないので一旦置いておき配信の準備をする事にする。


「そうだ。今日の配信のために竹オジを試しておきたいけど、流石に初見でやった方がいいか? そっちの方が面白いだろうし……」


 難しいとは知っているが、七尾の配信を見る限り結構簡単そうだったし、初見プレイで大丈夫……な筈。

 いやなんか嫌な予感がするな、そういえば仙魈様の方ではめっちゃ苦戦していたしあれは七尾が上手かっただけな気もしてきたぞ?


「いやでも期待されてるのは流石に初見プレイだろ。嫌な予感とか気にせずに頑張るとするか」


[待機]

[ロリコラボ助かる]

[ロリショタだろいい加減しにろ]

[どっちも子供定期]

[運バグ鴉VS運強吸血鬼――フェイト!]

[どんなコラボになるんだろうね]

[楽しみだ]


「マヨイビトの皆様方、こんばんはじゃー! 妖ぷろ三期生所属の浮世鴉、今日は告知通り吸血魔王ことセレネ・シュヴァルツ様とコラボしてゆくのじゃ!」

「さぁ魔物共そして初見の方も跪きなさい。異世界バーチャルズのセレネ・シュヴァルツよ。今日はこの世界の妖怪の浮世鴉さんとゲームをしていくわ」


 通話アプリで通話し貰ったセレネ様の立絵を画面に表示しながら配信を始めてコメント欄を確認する。

 初めて話す相手で緊張してしまうが、これでも一ヶ月近く配信をしているのでそこらへんは抜かりはないのじゃ。


[待ってました!]

[タイトル草]

[確かにその通りだけど]

[クワで月に辿り着ける一般おじさんとは]

[ロリ声とショタ声が同時に存在する場がみれてよかった]

[ロリショタ助かる]

[ロリショタは鴉様だろ!?]

[じゃあロリショタロリで]


「ロリじゃないんですけど!?」

「生で聞けた感動」

「鴉さん!?」

 

 セレネ様の持ちネタを生で見ることが出来て感動していれば、秒でツッコミをされてしまい。儂はふふっと笑ってしまった。

 

「というか主らロリショタってなんじゃ、男状態の儂はロリじゃないぞ」

「ロリ状態があるのに疑問を持って欲しいわね」

「…………そうじゃな」


 そういえば儂なんでロリ化するようになったんじゃろうか? 

 ……今更すぎるかもしれないが、配信で自然に性別を変えているのはなんでじゃろうな。どうしてだろうと思い原因を探ってみて頭に過るのは盟友兼同期の鶫の笑顔。


「……あれ今の地雷だったかしら、なんか表情暗いわよ?」

「いや、気にせんでくれ全部鶫が悪いのじゃ」


[源鶫:なんでですか盟友!?]

[いや草]

[なんも関係ないつぐみんが急襲されてるの草なんだ]

[本人降臨で更に草]


「とにかくじゃセレネ様、さっそくやっていこうとするかのう」

「そうね対戦コラボだけれど、せっかく遊ぶのだから長く出来る方がいいものね」

「そうじゃな。色々話せると楽しいじゃろうしお互い頑張ろうなのじゃ」

 

 そうやって儂らは互いにゲームを起動してそれを配信画面へと映し、準備を終わらせた。これから先は真剣勝負だけれど、せっかくのコラボだし仲良くやっていけると最高じゃな!


[この時二人は知らなかった壮絶な煽りあいになることを]

[不穏なプロローグやめるんだ]

[でもこのゲームだしなぁ]

[嫌な予感しかしないのだ]

[共闘しなければ友情破壊ゲームだからね]


「何故心配する民がいるのじゃ?]


 そんなにヤバイゲームなのかこれ、確かに七尾と仙魈先輩の配信は色んな意味で阿鼻叫喚なものになってたが……そんなに酷いものには見えなかったぞ。

 

「ゲームを起動したのはいいのじゃが……何なのじゃ、このおっさん」

「それがこのゲームの主人公よ鴉さん、ほら申し訳程度に長髪のカツラ被ってるでしょ?」


 ゲームを起動しパスワードを入れて合流すれば、画面には竹の中に入った二人のおっさんが映し出された。しかもなんかそのおっさんは長いカツラを被っていて手にクワを持っている。


「そうか、これが自分の事をかぐや姫だと信じて止まないというおっさんか……頭涌いてないか? ……こやつ」

「それはこのゲームをプレイした全人類が思っている事よ、まず常人は月を目指そうと思わないわ」

「そもそもかぐや姫に憧れた経緯はなんなのじゃ?」

「確か……かぐや姫の名前ってなんか格好良くね? とかいう理由で憧れたそうなの」


[理由あっさ]

[初めて知った]

[なんでそれで月を目指そうと思ったの?]

[あまりにも理由が浅い]


 まじで理由が浅いのじゃ。

 というかそんな理由の主人公でゲーム一本作るってこのゲームの作者凄いのう。

 まだ月を目指してクワを使って登るって事しか分からないが、今の時点でもツッコみ所がヤバいのじゃ。


「この景色は農場じゃな……牛に囲まれた農場で全裸の竹入おっさんって事案じゃろ」


 ポップした場所はのどかな農場。

 牛がいて空には鳥が飛んでいるこの場所に生まれ落ちた竹入おっさん。あまりにも場違いすぎて既に頭が痛くなってくる。


「このゲームにツッコんだら負けよ、というより序盤でツッコんでたら死ぬわ」

「死ぬのか!?」

「えぇそれもツッコミ死っていう割と哀れな死に方ね」

「そんな死に方大妖怪的にNOなのじゃ」


[そんな死に方やだ]

[鴉様ツッコミ属性だし死ぬな]

[ロリ化しそう]

[ホラー以外でも見れるようになるんだね]

[大妖怪? 妙だな]

[即堕ち系有能不憫ポンコツホラゲ苦手ヤンデレ大食いイケメン儂ショタロリ爺婆ママメイドが大妖怪?]

[初見ですが、なんだそれ]


「なぁ主ら儂の属性バグってない? え、今そんな事になっとるのか?」

「てっきり認知してるものだと思ったけど違ったのね」

「認知するわけないのじゃ」

 

 儂の当初の見通しではまじで有能鴉として名を馳せる筈だったのに、何故こうなったのじゃ? あれか、流されやすい儂が悪いのか? いやでも望まれちゃったし。


[#認知しろ鴉]

[#認知して鴉]

[あ、未だ伸び続けるハッシュタグだ]

[こわい]

[源鶫:流行らせたの僕ですけど、こうなるとは思ってませんでした」


「やっぱり主が悪いのじゃ鶫」

「カオスね、安心するわ」

「セレネ様!?」


 安心しないで欲しかった。でも流石は魔王このカオスにも適応しているとは凄いのう。

 と、そんな感じで雑談から始まってしまった竹オジ配信。

 まだこのときの儂は知らなかったが、このゲームは頭がおかしかったと言うことを先に告げておこう。


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