久しぶりの糖杏菓晩餐会
コラボが決まってから約二日程経った月曜日。
今日も今日とてどんな配信をしようかと考えながらもネッ友の太郎丸45世さんと鬼ごっこゲーのランクマを午前中に周し、雫を見送った午後のこと。
「あー暇じゃ、午後から配信するのは変わらぬがそれまでまじで暇なのじゃ」
最近夏の暑さのせいか人間状態でいるのも面倒くさく、大体の時間を妖怪状態で過ごしているせいか常に儂口調になっている気がするが、それはきっと暑さのせいなので仕方ない。
まあそのせいで糀と話しているときや打ち合わせの時も妖怪口調が稀に出るのだが……。
「暑いのじゃー」
ゴロゴロと床を転がりながらクーラーの効いた部屋で休んでいるが、今日がかなりの猛暑なせいであまり冷えていないのだ。こんな時こそ気分を紛らわせる為にもエゴサでもして動画の感想でもとも思ったが、スマホが遠いせいで取りに行く気になることが出来なかった。
「……年々暑くなってるんじゃがまじで地球温暖化大変じゃよな」
昔はよかった……と思ったが、儂の全盛期である平安時代とか今の気温とあんまり変わらなかった気がするので、いかに家電の魔力が恐ろしいのかが分かってしまい、人間に一瞬恐怖を抱いたが、ありがたいのでそれはすぐに感謝へと変わっていった。
「こんな時こそ雪女の知り合いの家にでも行けば涼めるのじゃが、外出るの怠いからのぉ」
基本家に引き籠もってる儂にとって暑さは天敵である。
わんちゃん儂の種族が吸血鬼だったら永遠に家に引き籠もってるレベルで敵だ。
暑さが敵って部分で自分で首を傾げてしまったが……太陽=暑さみたいなものだから変わらないだろう。
「そういえば、近々チャンネル登録者であるマヨイビト達が八万人行きそうなんじゃよな」
同期である七尾達も八万人までもう少しじゃし、何か記念の配信でもしてみるべきか。
…………まあそこらへんは要相談じゃな、儂一人で盛り上がっても意味が無い。
「っと、そうじゃ久しぶりにマカロンでも食すか、結構溜まってたしそろそろ返さないと悪いじゃろう」
それと今回こそは例の怪異に遭遇しないようにマカロンに結界でも……電子の海に結界ってどう貼るんじゃ?
いつも現れる怪異マロの対策として結界を貼ろうと思いついたのだが、よくよく考えてみれば電子の世界に妖力を使う方法が分からなかったので断念する事になった。
あのマロは面白いのだが、毎回どういう経緯で一番上に紛れ込んでいるか分からないから当事者としてはかなり恐怖なのだ。読まないという選択肢もあるのだが、儂の第六感がやめとけと毎回のように警告してくるから逃げれない。
「じゃあ早速マカロンの整理じゃな! どんな質問が溜まってるか楽しみなんじゃ!」
よし暑さを振り払い事も兼ねてテンション上げてやってこー!
――――――
――――
――
鴉様こんばんはー
胡瓜食べませんか?
「さてマヨイビト及び川魚の諸君、なにか弁解はあるかのう?」
[だってコラボするし]
[胡瓜美味しいし]
[やっやれって天啓が!]
「いやな、これが二~四件ぐらいならよかったのじゃがな。なんじゃ三十件って儂の菓子倉庫胡瓜畑になったぞ!?」
いや本当にビビった。
これがクソマロ爆撃かと戦慄までしてしまったぞ?
でもまあ正直これを貰った時ふふって笑ってしまったし、しょうもなくて吹いてしまったせいで雫に変な目で見られてしまったのだ。
「主らのせいで今日の晩飯は胡瓜三昧だし謝っとくれ」
[食べたんだ……]
[草]
[食べてるの草]
[計画通り?]
「いやな、あんなに胡瓜テロされたら食べるしかないだろう」
これでもか! とやってくるクソマロならぬ胡瓜マロのせいで儂は無性に胡瓜が食べたくなり、地元のスーパーを何軒か回って胡瓜を買う羽目になったのだ。移動する度に増えていく同じ野菜に偶然あった近所のヒトとかに変な目で見られたし本当にどうしてくれようか。
「さてさて次のマカロンじゃが……これじゃな」
鴉様こんばんはー
お料理コラボの時の事なのですが
女性陣はどうやって牛を丸々完食できたのでしょうか?
気になって夜も寝れません
それは儂に聞かれてもと思ってしまうが、それは仕方ないだろう。だってそれは目の前で見ていた儂が一番訳が分からない事だし。
あれじゃぞ? 巨大な牛三頭が目の前でどんどん消えていくのじゃぞ? どう考えても恐怖以外の何物でもないし、今でも稀に訳が分からなくなる。
「あれは一種の怪奇現象じゃから気にせんほうがよいぞ質問者様よ」
[この鴉逃げたな]
[いや、逃げるだろ]
[怖かったよね]
「そうじゃなかなり怖かった」
[九十又仙魈:鴉? お前を食べるにゃんよ?]
[草]
[やべぇの来ちゃった]
[食べる(意味深)]
[キマシ?]
[いや物理だ]
丁度どんな反応が出てくるかなと思いながら偶然見たコメント欄。
そこには今丁度話題に上がってる女性陣の一人である九十又仙魈先輩の姿があり、儂は自然とひゅっと悲鳴を上げてしまった。
「あーあれじゃな、頭おかしい量でもいっぱい食べる女性って素敵じゃと儂は思うぞ?」
[阿久良椛:親友?]
[七尾玲那:鴉さん?]
[喧嘩売り続けてて草]
[あーあ]
[ばいばい鴉様]
[失言デッキ作ってるの?]
「すぅー……次のマロにでもいくかのう」
何故こんな平日の配信が同じ事務所の仲間に見られているのだろうか?
さっきからそのせいで体が冷えてくるのじゃが……早く話題を逸らさなければまた失言してしまいそうじゃな。
【隣の席の鴉様】
「あれ?」
机の中を漁ってから鞄を確認してからその一言。焦りを覚えながらもそういうも、目当てのものは見つからなかった。一応最後にロッカーを見てみるもやはり見当たらない。
「なんじゃ、何か忘れたのか?」
次の授業の教科書が見当たらず焦る僕に声を賭けてくるのは、ロリにもショタにも見える隣の席の妖怪だった。図星だったのが恥ずかしくちょっと顔を逸らしてみれば彼女は、仕方がないって様子で笑う。
「また教科書でも忘れたんじゃな、見せてやるから机を寄せい」
「悪いよ、それに見づらいでしょ?」
「気にするでない、それにそんな事を言うまえに忘れ物をなくせ」
「……善処するよ」
まったく本当に彼女には頭が上がらない。いつも助けられてるし彼女が隣の席で良かったな。
「まったく、反省するのじゃぞ?」
何がおかしいのか責めながらも笑う彼女に首を傾げていると、そっと顔を近づけてきて
「そうじゃ今日放課後付き合っとくれ」
ぼそっと囁くように告げられたその一言、あまりにもかわいい声でそう言われて僕の顔は真っ赤に染まり、今から放課後が楽しみになってきた。
[朗読は草]
[一人二役でさらに草]
[メンタル化物じゃん]
[傑作]
[泣いた]
[雪椿:次のイラストはセーラー服だね]
[首塚から出れない生首:草]
「ふぅ……誰じゃこのSS送ったの!?」
色々な質問や胡瓜食べませんかのマロのなかで異彩を放っていたこのSSマロ。
きっと頑張って書いたであろうこの一作を思わず朗読してしまった儂は一息置いてからそう叫んだ。
もうあれだツッコみ所がありすぎるのだ。儂が女になってるし学生やってるし、なによりなんかデレてるし! しかも微妙に出来が良いからムカつく。
しかもコメント欄にもツッコみ所があるせいでなんか疲れる。
母上がコメント欄で新たに儂のイラストを作ろうとしているし、なんかすっごい見覚えのあるNNがコメントしてるし!
まじでなにやってるのじゃ酒呑童子……現代満喫しすぎじゃろ。
「さて、そろそろ良い時間じゃし、終えるが今回は俗に言うクソマロが多かったの、儂としては楽しいのでどんどん送ってくれて構わぬが、送る相手は選ぶのじゃぞ?」
色々あって疲れたが今日は楽しかったのう。
そう思いながら最後にそう釘を刺し、配信を閉じた儂は一人伸びをしてあまりにあまった胡瓜を食べに行くことにした。
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