番外編:【同時視聴】ママの配信を見守る息子+鳩達【妖ぷろ/3期生】

[つぐみん配信始めるって!]

[ママの配信って鴉様の?]

[そうっぽい、概要欄みると許可取ってるらしい]

[新鮮な息子の反応楽しみ]

[七尾様今日も勉強配信してたって!]

[酒猫また飲んでるよ!]

[ぽっぽ、ママが配信始めたよ]

[狂天狗が、また眷属達の心を折ってるよ]

[依童様がまた晩酌してるよ]

[クソマロ送りつけときますた!]

[ポン童子が、昨日シャンプーぶちまけて機材壊してたよ]

[鳩多いなw]

[それ確か50万ぐらいのやつ……]


 配信のコメントが流れ始めたのを確認してから、盟友の画面を映して最終動作確認を済ませる。

 そして声を出すために一度深呼吸してから、同期の二人が考えてくれたいつもの挨拶を皆の前で披露する。


「ヒョーヒョーという鳴き声からこんにちわ、妖ぷろ三期生所属源鶫っです! 今日はあれですね、待ちに待ったママのホラゲー配信! ちゃんと許可を取ったので、いっぱいママの反応を楽しみましょう!」



 久しぶりに出来た新たな仲間。 

 そんな彼は今頃自分が勧めたホラーゲームの配信を始めてくれたようで、僕もそのおかげか安心してこの枠を開くことが出来た。

 同時視聴というのを責めるコメントもあるが、それはこれを企画してくれた盟友に悪いので無視だ。告知はしてないけど、自分の視聴者がこっちにも流れて欲しいという彼の善意からの企画。

 それに、このタイトルなら他の方々の視聴者も来るんじゃないかと予想してくれていたが、成功したのかコメント欄には見慣れない名前がチラホラ見える。


[鳩配信って事はなんでもいっておーけー?]

[いいんじゃない概要欄にもあるし……]

[じゃあ早速、昨日総大将がまた爆死してました!]

[フェス中に100連爆死]

[虹2つ]

[今度狂天狗バトルロイヤル開くって!]

[参加するの?]


 早速始まる鳩行為、普段は嫌われる物かもしれないけど……この配信はそういう趣旨なので、もっと盛り上がってくれても構わない。

 そんな訳で僕は所々コメントを拾いながら、盟友の配信に触れる事にした。画面の向こうの盟友のモデルはこれでもかというぐらいに消沈してて、いつもの覇気を感じなかった。


「あ、ママが死んでますね……いやぁ、あれですよね自分が勧めたホラゲーをやってくれるのは嬉しいですよね! 見てるだけで、やりたくなります! まあ僕は基本見る専なんで自分ではやりませんけど……」


[早速つぐみ構文出てるじゃん]

[お前のせいでママ元気ないんだけど……]

[よくやったつぐみん]

[あ、依童様がきゅうり味のビール作り出してる]

[なんだそれ……]

[なんだよそれ、酔ってんのか]

[今見たけど、きゅうりすりおろしてビールに入れてた]

[草]

 

「いや、何してるんですか先輩……ちょっと味が気になりますよね! 胡瓜だったらそのまま食べたいですけど」


 やっぱり妖ぷろの先輩は濃いなと思いながら僕は自分の感想を述べて、前日に盟友から貰った日本酒を開けて、彼の配信に意識を集中させる。

 どうやら彼は今、主人公の服を剥いだみたいでそのせいでコメント欄が盛り上がってた。


「悲報、ママがショタの服を剥ぐ……うーん、このワードパワー強いですね」


[これは草]

[報道被害受けそう]

[事実なんだよなぁ]

[あ、今度僕誕生日です]

[おめでとう]

[ぽん童子も誕生日もうすぐだよね]

[初見です! 僕らのママの第一子の活躍を見に来ました]

[速報、鴉様ロリ化!]


 コメント欄にも目を通してみれば、そこには信じられないようなコメントが一つ。

 少しの遅延のせいでそうなっているのは分かるが、推しの姿だしそれは自分の目で知りたかった。とりあえず、いつも面白い盟友のコメント欄にも目を通せば、やっぱり面白いコメントがちらほらあったのでそれも拾ってみる。


「あれ、なんかコメント欄に腐りきった正義の味方いませんか?」


 いつも思うけど、あそこのコメント欄はどうしてあれほどネタが溢れるんだろうか? 

 そう思ってみたが、結構答えは簡単そうだ。多分だが、盟友の事を見ててもあまり飽きないからだろう。


[本当だw]

[天才……吹いたわ]

[そのコメント好き]

[MADでよく見る正義の味方じゃん]

[あのやばい電動MADか]

[速報:狂天狗マリカ三十回連続一位]

[やばくて草]

[速報、鴉様人間に恐怖する]


「姉さんなにや――――やっぱり! 狂天狗さんは凄いですね! 尊敬します!」


 そんな中、急に入った姉の所業に普段の口調で答えそうになってしまったが、すぐに大声でそれをかき消すことにした。


[姉さん?]

[そうか、そういえば絵師同じじゃん!]

[あれ、確かリアルでも――]

[そういう鳩はやめようねー]

[コメント流そう]

[誤魔化すために大声になりまくってて草]

[尊敬してる感じがしねぇ]

[速報、鴉様やっぱりクソザコ]


 あの姉はゲームになると本当に自重しないな……そのせいで、何度僕がボコられたか――思い出したらちょっとムカつくが、VTuberになることを勧めてくれたのは今でも感謝してるのであまり文句は言えない。


[九十又仙魈:つぐにゃんも一緒に酒飲もー!]

[猫様!?]

[あれ今配信中じゃない?]

[きた恒例行事酒凸だ!]

[そして数多の男が燃えてきたと……]

[酒猫ちゃんには悪気ないんだけど、一部の人達がね]

[あとアンチ]


「ちょっあ……あの仙魈さん! えっとファンです! 酒は自分あんまり飲めないので、コーラで乾杯しましょう」


 酔ったら多分大変な事になると分かってるので、ここはコーラで我慢。

 勿体ない気がするが、まだ推しと関わるのは申し訳ないので、もっと胸を張ってVTuberをやれていると言えるようになったら、こっちから絡ませて貰おう。

 まあでも……推しが急に来ると、取り乱しますね。

 椅子から落ちそうになってしまいましたし……。


[九十又仙魈:わかったーじゃあ私もコーラ飲むー、勝負しよー?]

[飲むの止めないの流石猫様]

[あの……いま既に八本開けてますよね?]

[九十又仙魈:知ってる-? 胃袋って限界ないのにゃん!]

[取って付けたような語尾、さてはまだ酔ってないな]

[胃袋って無限なんだ……]

[多分猫様だけ]


「あれ、僕この流れ死にません? 誰も心配してくれないのおかしくないですか?」

 

 やばい、推しであるこの方と楽しく飲むのはいいけれど……流石に死ぬ。

 あれですよね、この勝負わんちゃんどころか、胃が糖分に殺されるやつじゃないですか?

 思い出されるのは、今まで何度も見てきた彼女の配信……酒が消え、山盛りどころか三箱分のポテチが消え、最終的に三十分で食された満漢全席……そんな相手に今から自分が挑むという事実は予想以上に、自分の精神にクルものがあった。 


[九十又仙魈:もみにゃんは生きてたよ?]

[あの二期生の大食いズと一緒にしないであげて……]

[グッパイ……つぐみんb]

[また来世]

[平安時代に帰る前に、糖分で討伐される大妖怪]

[推しと最後に絡めて幸せじゃん……よかったね!]

[殺意マシマシ猫]

[なお善意しかないという……]

[いやぁ、つぐみんが親指立てながらコーラの海に沈む光景は涙無しでは語れなかったぜ]


「あれー誰も僕の安否心配してくれる方いないんですが? ……皆僕の子分ですよね?」


[私一升瓶]

[僕眷属]

[自分は総大将の義兄弟]

[某、鬼の餌]

[拙者も眷属]

[雪椿:私はマヨイビト]

[ワタクシは子狐ですね]

[我は川魚] 


「僕の子分が一人も居ない件について小一時間ほど問いただしたいんですが……あとやっぱりウチの箱のリスナーの呼び方狂ってますね」


 三期生の僕らの呼び方は比較的まともだけど、二期生の方々のリスナーの呼び方ヤバいですよね……まあ、僕も一升瓶の一つなんであんまり言えませんが、改めて並べられるとカオスな光景だと思ってしまいます。


「それに二個ほど食べ物的な方々いますし、妖ぷろってもしかして宴会会場ですか?」


 ふと思ったことをコーラを飲みながら喋れば、予想以上にこの説を支持するコメントが見ることが出来た。


[あってる気がする]

[これ真理では?]

[餌があり、魚が用意されていて、沢山の一升瓶と義兄弟にマヨイビト……それに子狐に眷属と]

[妖ぷろ、宴会説実証]

[眷属である俺らを忘れるな]

[鴉様、人間にキレる]

[そして、またクソザコ扱いされる]

[いつもやろ]


「あ、ちょっと通知来たので確認します…………おっ、狂天狗さんのバトルロワイヤルの開始時間発表されましたよ!」


 配信中になんだと思えば、阿呆姉という名前の者からの通知が二件。

#阿呆姉                                     

阿呆姉     今日 21:15   

私の話題はあまり出すな、滅ぼすぞ莫迦弟  

あのヒトにはサプライズするつもりだから、少しでも……あとは言わんでも察しろ。

あと返信はするな


 やはり横暴な姉にちょっと笑いながら、不器用な彼女らしい言い方に盟友の影響は凄いなと改めて思ってしまう。了解と心の中で返事をして、僕はさっき見えた鳩の方に反応する。


「あ、そろそろ第一の恐怖ポイントですね……きっと叫ぶママが見れるはずです!」 


 彼の配信はいまちょうど人形のシーンへと変わっており、かなり恐れながら人形を調べている盟友の姿あった。絶対にいいえを選ぶといいながら、くしゃみをしてしまう彼――その瞬間、まだ「あげる」を選択していたようで、誤ってそれを押してしまったようだ。


「くしゃみ……いいですね! ショタのくしゃみですよ? これできっと何人かの方は救われたでしょう!」


 まあその課程で、黒髪ショタである主人公君の目が消失してしまいましたが……それはコラテラルダメージ的なやつなので問題はない。


「あっママがロリママになりましたね…………? え、あれ……ロリママ? え? ――あ、雪椿さんがコメントしてますし便乗しますか!」


[朗報ママ完全ロリ化]

[鶫君超ガチ混乱]

[そして流れるように同意するの笑う]

[妖ぷろは仲いいなぁ]

[速報ロリママは存在する]

[まさか長年学会で議論されていたロリママ問題が、ショタのおかげで解決するとは思ってなかった]


 そしてママは混乱をしまくったままロリ化を極めて、声質口調なども完全に幼女みたいな物に変わった。リアルで見たときも思いましたが、紡さんの演じ分けは本当に人間やめてるように感じます。

 ……あのママ化した時だって雰囲気そのものが変わってましたし、本当に尊敬してしまうほどに演じてるキャラが生きてるんですよね。


「ロリママショタ爺……そういえば、これラーメンっぽいですよね。『大将! ロリママショタ爺一つ!』ってやっても違和感ない気がします」


[なんだその店]

[行ってみたい]

[看板メニューは鴉様]

[速報:酒猫寝落ち]

[悲報:つぐみん勝利]

[いま慌ててぽん童子様が配信切ったよ]

[あの二人家近いらしいからね]


「閃いてしまいますね……というか、勝ったんですか僕!?」


 やばいこれは妖ぷろの歴史に名を残せるかもしれない。

 だって、あの仙魈さんに勝ったのは総大将様ぐらいじゃありませんか? これは盟友に自慢できますね、ふふふ……これなら楽しく話せます。

 喜ぶ僕とは別にネタだろうが、ちょっと不穏なコメントが流れるが……すぐにそれは収まって、おめでとう? みたいなコメントが流れ始めた。

 


「いやぁ、これはもうあれですよ! 妖ぷろで大食い大飲み企画をやるしかありませんね、あの方に勝った僕はシードで最終戦だけやるかんじで」


[調子に乗るな一杯しか飲んでないだろ!]

[これはライン越えたわ]

[お前は逆に全員と戦え]

[今度こそ死んだわつぐみん]

[黙祷]

[鴉様ロリ化終了]

[悲しい] 


「あーやばいこれは失言デッキが埋まってしまいますね……しかし僕はつよい鵺ですから、こういうときには最強のカードを切れるんですよ……また盟友をママ化させるという最強の切り札をね」


 あのヒトとのゲームはやってて凄い楽しいし、また罰ゲームありでの企画をやるのも楽しそうだ。今度は二人を対象にして罰ゲームをやるのも良さそうだし、それを考えると……どんどんやる気になってくる。


[また罰ゲームありの企画やるんだ]

[これは応援しなきゃな!]

[負けたら分かってるよな?]

[勝ったら許してやろう]

[あれだね、一・二期生とのコラボも見たいね]

[そういえば、もうすぐ二期生の3D配信あるよね]

[勿論つぐみんもみるでしょ?]

 

「勿論ですとも! 既に予定は空けてますし、何よりその日の配信は休みにしましたからね!」 


 盟友と一緒に配信を見るという約束もしたし、これから先が楽しみだ。

 姉から誘われて、気紛れで始まったVTuber生活……まだ始まったばかりだけど、それは思った以上に楽しくて、かつてのゲーム生活を思い出してしまう。 


「じゃあ、どんどん鳩の方来てくださいね! まだまだ配信は続きますよ!」

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