【ホラーゲーム】ほらーげーむはいしん……【ビビリ鴉】終
「なっ誰じゃこいっ―――――はっ!?」
突如現れた黒歌似の少女。
あまりにも夥しい量の血を纏った彼女、それは思考が固まってしまい操作するのを忘れていた儂と、そのせいで動けない優に一瞬で近づいて――――。
GAME OVER
「………………そうか、ハートって精神力だから残ってても、物理ダメージだと一瞬で死ぬのかのう……」
ゲームを始めて三十五分。
これから先大事そうな事を教えて貰ったことに感謝しながら、儂は死んだ目になりコンテニューしてやり直すことにした。
[冷静なの装ってるけど、めちゃくちゃ声震えてるの可愛い]
[ショタでも可愛いのずるい]
[ロリでショタで爺な婆……この四つ抜き出しても強いのやばい]
[あと十個持ってるからね属性]
[初見殺しかな?]
[あの娘足速すぎでしょ]
[オリンピック目指せるわ]
[それよりみてみろ、鴉様放心してるぞ?]
[人間に負ける大妖怪の図]
[この鴉は今日はロリ多めだから負けていいの法則、あると思います]
[ロリは負けるものだもんね]
「つ、つまり? ロリじゃない儂はもう負けぬという事じゃな、見ているがよいあの黒歌っぽい娘から逃げ切ってやるのじゃ!」
あのイベントはきっとダッシュに割り振られているボタンをずっと押して、逃げるルートをミスらなければ追いつかれることはないはずだ。だって、優君走るとあれぐらい速かったし、一瞬だけだが相手が走ってくるのには間があった。
なら走り出しが速ければ、きっと追いつかれない。
[あ、またイキッた]
[負けたな(確信)]
[即堕ち鴉が勝てるわけないだろ!]
[俺は鴉様がまた負けるのに、花京院の魂を賭けるぜ!]
[誰も信じてないの草]
[聞きたいんだけど、この鴉がイキッて勝ったの見たことある?]
[ないです]
[ね?]
おかしいなぁ……どうして誰も儂が逃げ切れないと思ってるんだろう?
いや、流石に分かれば逃げ切れるぞ? というか血塗れの子供はあまりみたくないから、出来るだけ速く先に進みたいし頑張るから、逃げられない訳はないのじゃ。
「ということでかかってくるのじゃ黒歌っぽいの! 儂が操る優の俊足に恐れ戦くがよい!」
三味線を取った事でさっきと同じように操作が出来なくなるが、儂はダッシュボタンを左手で押すのを止めない。既に頭にある逃走経路をなぞるために、十字キーに既に指は待機させてある。
勝負は一瞬――それもあの一枚絵が映し出されたら始まる。
「今じゃ!」
上を押し続けて、ドアの位置まで来たら即左を押してそのまま広間に直行。
本当にギリギリだったが、なんとか優は逃げられたようだ――だけど、まだ諦めない彼女がドアを何度も叩いてくる。
「儂は画面見ないから、そのドアを押さえるのじゃ! あれじゃからな? ドア破られたら儂泣くぞ? そして貴様を呪うぞ?」
[雑魚くて草]
[知ってるか? この鴉一応有能で色々出来るんだぜ?]
[ホラゲーで怖がって、十二歳のショタに全て任せる千歳児がいるらしい]
[へぇーそんなのいるんだ(棒)]
[見てみたいね!]
[それが今なら見れるんですよ!]
[どこで!?]
[ここの浮世鴉チャンネルで! しかもチャンネル登録すれば、リアルタイムでクソザコ鴉が見れるぅ!]
[チャンネル登録しなきゃ]
[というか呪おうとするなよ鴉様]
「いやだって血塗れの人間とか怖くない? 妖怪がいくら血に塗れてても怖くないが……人間となるとかなり怖いと思うのじゃ…………」
昔にあったことある数多くの戦闘狂とか、人間妖怪関係なく色んな者達の血で染まっていて、儂がビビり散らかした思い出あるからなぁ…………うん、忘れよう。それのせいで余計に怖がるのは嫌じゃし――――だからそんな事は置いといてとりあえず……。
「はい儂の勝ちー! そして優君の力を舐めた黒歌っぽいのの負けじゃな!」
探していた楽器も見つかり、敵からも逃げ切れた。つまり目的達成した儂らの勝ちで、もう暫く怖い思いはしなくて済むはずだ。
そうやって考えれば、自然と笑みが浮かんでしまうというもので……マヨイビト達には見えないだろうが、ちょっとガッツポーズをした。
[優君しか頑張ってないような……]
[気のせい気のせい]
[喜んでて可愛いからいいよ]
[そうそう、可愛いは正義だから大丈夫]
[すっごい笑顔でいいね]
[満面の笑みを浮かべてるんだから、俺らマヨイビトは喜んでればいいんだよ]
[あの……その笑みを浮かべてる後ろで優君超疲労してるんですけど]
[気にしたら負け]
[汗だくショタ好きだからいい]
[一画面で二つ楽しめるでしょ? なら大丈夫]
[こわい]
[これが訓練された鴉民達か(戦慄)]
――――――
――――
――
「なんじゃあの化物!? 市松人形と西洋人形のキメラとかふざけるでない!?」
それから暫く時間が進みやってきた屋敷の地下室。
それに精神をやられながらも新たな楽譜【青海波】を手に入れた儂は二人に演奏して貰う事にした。
「子供達の演奏楽しみじゃなー!」
[うっきうきで草]
[可愛いかよ]
[感情豊かで見てて飽きないね]
[全部新鮮な反応で見てて愉悦を感じる]
[もっとロリ化して?]
[それに結構ペースがいいから、こっちも楽しい]
[とても生きた反応で、このゲームを楽しんでるんだなぁって感じがする]
[鴉様かなり子供好きそうだね]
[あれじゃない? 表情を出しやすい子供相手だと演じてて楽しいとかじゃない?]
[子供と一緒のFA増えて欲しいな]
[めちゃくちゃ笑顔の鴉様だろうなぁ]
待ちに待った二人の演奏。
ちゃんと三味線と楽譜を優に装備させ、二人に演奏させてみれば綺麗な青海波を聞く事が出来た。今までのホラー要素から解放されるような感覚を感じていると、急に画面が褪せたような物に変わってしまう。
何だ? と思っていれば優が消え色褪せた世界に黒歌だけが残される。
底から始まったのは黒歌の回想。
彼女がこの屋敷で何をされ、どうしてこの場所に縛り付けられたのかが分かるようなそんな一幕。
かいつまんで説明するなら彼女――黒歌はなんらかの神に対する生贄のようで、この屋敷にいた奴らに酷い仕打ちを受けながらずっと琴を練習させられていたらしい。
それに彼女を生贄に選んだ父親は歪んだ愛を黒歌に向けていたようで――。
「こんな愛は……嫌じゃな」
[モデルの作り込みのせいで、鴉様の表情と気持ちが分かってつらい]
[本当につらそうに見てたね]
[あの父親許さねぇ]
[一回音が響く度に目を背ける鴉様をみるの嫌だった]
[本当に子供が好きなんだろうな……]
[しばらく引きずりそうだな]
[事案……捕まれ親父]
[…………]
[鴉様が純粋過ぎてつらい]
それからもサクサクと探索を続けていき、舞台は二階のとある使用人室。
「使用人の部屋とかアイテム沢山ありそうじゃし? ささっと楽譜を見つけ――――」
誰かに見られている気がする…………。
「やめて? 急に来るのずるいよ?」
一瞬固まったと思ったら出てきたテキストと流れた不吉な音楽に、すぐに童女化。
激しく動く心臓が悲鳴を上げるが、まずはヒントになりそうな落ちている紙を見ることにしよう。
あなたのうしろ
「――――!? ふっ…………いないではないか、まったくさっき「逃げろ」と助けてくれたから許すが、あまり妖怪を驚かせるでないぞ?」
[あの進めてください]
[うんうん、何もないから進めようね]
[怖くないんでしょ? 何もないって確認したでしょ? ほら進めよ?]
[めっちゃ早口で喋るじゃん]
持っている灯籠のおかげで視野が広いからこそ言うが、今の優の後ろには扉しかないしそれは画面に映ってるので、後ろに何かがいると言うことは有り得ない。はぁ、このメモ……さっきは助けてくれたし、きっとツンデレってやつじゃろうな! うん、そうに違いない。それにコメント欄がなんか言ってるが、儂は怖がってないから進むことぐらい出来るんだよなぁ。
「ん? ……儂のどこが怖がっているように見えるのじゃ? ほら進めたぞ――――なんだただの目目連ではないか――それなら家にいるし怖くないのう」
結局進んでみれば、出てきたのは赤い目だけの画面。
昔からこの神社にもいる目目連のようなその背景、それは今の儂の部屋の状況とあまり変わらないので怖いという事がなかった。
儂は趣味で付喪神系の妖怪を集めているし、目目連にはこの家を自由に動いていいという許可も出している。配信中にもたまにこっちを見てくるし、この程度だったら今更だ。
[これを怖がらないのは草]
[沸点分からねぇ]
[妖怪ぽいからでしょ、言ってたとおり目目連も似たような感じだし]
[いや違うな。鴉様ガチ勢的に言わせて貰うとこれは、妖怪を想像している事で怖さを紛らわせているんだよ]
[↑めっちゃ早口で言ってそう]
[でもわかる]
「はっ、そんな訳ないじゃろう? 儂が似たような妖怪を知っているのに怖がるだと? ……片腹痛いわ……え、これ……人間の目じゃと……………………すぅー……よし探索するか」
それから視聴者達と様々な謎を解き、一段落した路所で少し休憩を挟むために水を飲む。
「ナイスじゃぞ主ら、よく儂にネタバレ無しで伝えられたのう」
[褒めてママ]
[僕達頑張ったよね?]
[だからご褒美はあれで!]
[ママ化ママ化!]
[ハーリーハーリー]
[やらなくてもいいよ? ロリ化すればチャラだから]
……儂はそこまで鈍感ではないから分かるが、これはあの桃鉄配信での最後の儂を望まれているのだろう。
分からなかった謎解きを手伝って貰った手前、断るのは忍びなくやらなければならない気がしてきた――――だけど、今の儂はさっき驚きすぎて童女になったりしたが……まだ男だし、やるのはちょっと大妖怪の威厳的にぃ――――はぁぁぁぁぁ……やるかぁ。
「んんッ――――はぁー…………私の子供達、助けてくれてありがとうございます。そのおかげで私はこの部屋の謎解きを終えることが出来たので、感謝しかありません。本当に貴方たちは偉いですね」
うん……儂何やってるんだろ?
流石に男でママになるのはもう負けた気がするので、瞬時に女性に化けた儂は、冷静になってそんな事を考えた。
というかもう分からん、儂の目指していたVTuber道って何じゃっけ? あとさ、儂、なんか配信始めてから流されやすくなってる気がしてきた……ん? なんだ目目連よ、そんな今更じゃん見たいな目で儂を見てどうしたのじゃ?
え、喧嘩するか? ――配信後覚えとけよ?
なんか悟りかけてる儂の後ろの壁に宿る目目連がなにか訴えてきたので、念話でも使ってそんな事を伝えてからコメント欄を見てみれば、そこには大混乱の嵐が広がっていた。
当たり前だがこの配信が初見の方や途中から来た方もいるだろうし、そんな方達が急に声が180°変わった儂を見て混乱するのは仕方ないだろう。
「しばらくはこのままやらせて頂きますが、あんまり危ないコメントはしないでくださ――キャッ」
一刻も早く進めて丁度良いところで男に戻ろうと思い、喋りながら今いる部屋から出ようとしたのだが……どうやらこの部屋から出られなくなってしまったらしい。
「あの待ってください? あれです、流石にこの部屋にいる間は母親でいようと思った矢先にいうのはなんですが、もしかしてあれですか? ずっと私は女性でいろという悪魔の悪戯ですか? というか、なんで開かないんです!?」
混乱しまくって色々口走りながら、先の情報を知るためにテキストを進めていると鍵が開かないというイベントが急に始まって、どこからかこんな声が……。
女性の声:
これで邪魔者はいなくなった。
あとはあの子だけ
「知りませんよ! 私にとっての今の邪魔者は貴方ですから、はやく開けてください! キレますよ私!?」
黒歌の母親の幽霊に襲われながらも情緒を壊し、なんか大変な事になりながらも儂は先に進むが、コメントは余計に混沌を極めることになった。
[落ち着いてママ]
[慌てても敬語なの凄いな、一切ブレない]
[すでにお腹いっぱいなんだけど]
[性癖過多は別腹だよ?]
[涙目で草]
[まってショタボイスがロリボイスになってママボイスになるの意味分からないんだけど!]
[脳内で勝手にママ化した鴉やロリ化した鴉が浮かんでたけど冷静に見ればモデル変わってないんだよな……]
[鴉様の演技……もはや演技っていえないよね。化物過ぎる]
そしてそのあと残った最後の楽譜を見つけ、三つめの回想を終わらせゲームは終盤へ。回想が終わったのに色褪せた世界が変わらないと思っていたら、次は優君の回想が始まるらしい。
その後、このゲームのラスボスらしき呪いの神と対峙する事になりそれを撃破した儂は無事にエンディングに辿り着きなんとかこのゲームをクリアすることが出来た。
「夜が終わるな……お休みじゃ、黒歌。どうか安らかに」
最後に操作が可能になったので、最後に黒歌に話しかけ、このゲームを終わらせようとした――その時だった。
優が彼女に、今まで音楽をやってきて良かったという言葉を残し……このゲームのメインBGMでもありタイトルでもある幽魂の夜想曲を演奏し始めたのだ。
[お疲れ様!]
[優君イケメン過ぎるだろ!]
[ここで幽魂の夜想曲は鳥肌]
[いいもの見れたわありがとう鴉様]
[彼女の為に最高の演奏を聴かせるんだ優君!]
[TrueEND?]
[源鶫:お疲れ様ですママ!]
「粋じゃな――――ならば儂もそれに答えるとするか、主らちょっと席を空けるぞ」
[何するの?]
[エンディングみないの?]
[なんか鴉様がまたやらかすのか?]
[なんだろう、すっごいやる気を感じたよ今]
─────20XX年7月31日─────
22:30 浮世鴉 つぐみ今通話かけるぞ
22:30 源鶫 ……なにかやるんですよね
21:31 浮世鴉 主のピアノを借りたい、いけるな?
22:32 源鶫 当然、僕を誰だと思ってるんですか?
22:32 浮世鴉 やる曲は幽魂の夜想曲、全力で奏でるぞ盟友!
とても短いやり取りだけど察してくれた盟友に心の中で感謝してから儂は通話をかけて、儂の隣に鶫のモデルを表示させた。
[え、つぐみんなんで?]
[いま配信中だよね!?]
[突発コラボ?]
[え、なんで急に?]
[あれじゃないこのゲームを教えてくれた感謝をここで伝える感じ……]
[なんかピアノの音聞こえない? つぐみんの方から]
「ヒョーヒョーという鳴き声からこんばんはマヨイビトの皆様、今宵ママに呼ばれて参上した第一子、源鶫でございます。この場に来てくれた皆々様には、この配信の締めとして、少しの夜会に参加して貰いましょう」
エスパーかと思うほどに、今儂が言って欲しかった言葉を視聴者に告げた鶫。
それに改めて儂の仲間は強いという事を理解し、彼に一言だけ言葉を伝える。
「さぁ、鶫……俺が合わせてやるから、全力でピアノ弾きやがれ!」
ここから先は俺の時間。
全身全霊全力全開の魂を演奏をマヨイビト達に届けよう。
今からやることは儂では力不足、だからこそ……この状況に合うだろう、俺に戻り……優と黒歌曲を捧げる。
「行きますよ盟友、少しでもずれたら怒りますからね?」
「はっ、そっちこそ俺に喰われるなよ? 大妖怪!」
[まじで何が始まるんだ?]
[イケボ鴉降臨]
[ショタボがガチ過ぎるイケボになった!?]
[画面に映るのは可愛いショタなのに、めっちゃイケメンな鴉の幻覚見えるんだけど]
[草……とか言ってる場合じゃねぇ!]
「弾く曲は一つ」
「ですね、それしかない」
鶫のことだ。好きなゲームの曲は完璧に弾くことが出来るだろう。
だってこいつ、何気にピアノ天才らしいからな……ならば心配なのは俺だが、一度聞いた曲ならば儂は間違える事はない。それに儂は優君の過去を見たことで、完璧のあの少年の演奏技術を模倣することが出来る。
「じゃあいくぞ……」
「任せて下さい盟友」
『――幽魂の夜想曲』
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