【ホラーゲーム】ほらーげーむはいしん……【ビビリ鴉】中
優君の眼球消失事件でメンタルをやられ、コメント欄が盛り上がってから数分後。
現在の優君は、黒歌に助けられたのか二階の部屋で目を覚ましたようだ。殺してしまったかと思ったが、生きていた彼に安堵してなんとか儂は戻ってくる事が出来た。
「ふぅ……よし、優君は無事じゃな――まったく目が欲しいなら百々目鬼でも屋敷に招けばいいものを」
あの事件のせいでなんか色々言ってしまったが、もう思い出したくない。だって、あれを思い出したら自分でも大妖怪って言えないようになるからだ。
[これは四期生に百々目鬼来るな]
[種族だけで濃い]
[あれでしょ? 動くと全部の目が動くんでしょ?]
[怖い]
[招けばいいというものを(震え声)]
[取り乱しまくってたなぁ(小並感)]
[流石ビビり鴉]
[騒いでて可愛かった]
[この配信であと何回ロリ鴉になりますか!?]
[「待って儂やった? ゲームオーバー? ごめん優君、儂を許して」]
[これをロリ声でやってたのすこなんだ]
[ふむ、取り乱すとママやロリになるのね……閃いた]
「閃かないで? 儂は今男、ロリならない」
片言になりながら黒歌と会話をして精神を安定させる。
そのまま連続で話しかけてみれば歌う黒歌が見ることが出来て、リアルの儂の方の精神も回復される感じがし――――。
黒歌の目を取りますか?
・ とる
とらない?
「優君!? その選択肢はやばいのじゃ落ち着けぇ!?」
[鴉様が落ち着いて]
[バイオレンス優君]
[この主人公取って取られて忙しそうだな]
[試そう]
[これハートの数で選択肢変わったりしたりするのかと思ったけど、全回してるし関係ないか]
[歌ってる幼女の瞳を狙うショタ]
[↑(物理)]
黒歌が歌っている姿を見て和んでいたときに突如現れたその選択肢。
あまりの衝撃に変な風に叫んでしまい、コメント欄には草が溢れた。一応これが見間違えじゃないか確認する為に、もう一度画面をみるが、その選択肢は変わらずそこにあり……幻覚と言うことは一切なかった。
「まあここは取らない一択じゃな、儂は子供を傷つける趣味はない」
子供って大事だからね、大人より感情豊かだから演じてて楽しいから本当に見ててこっちも楽しい。
今の黒歌のように楽しそうに歌うのを見るのも好きだし、演じた後に興奮してこっちに駆け寄ってくる姿も愛らしい。
そういえば昔の雫はそんな感じだったなと、そんな事を思い出し軽い現実逃避をしながら儂はとりあえず触れたくなかったもう一つの下手にある人形の元に行くことにした。
同じ人形なら、代わりの目の場所ぐらい知ってそうだし……そうであって欲しいと儂が願っているからだ。
「よし部屋に戻ってきたが、変わっているところあるな……これは、花束か?」
このドット絵ではちゃんとした花の種類は分からないが、赤いし薔薇の花束だった場合その意味は真実の愛を誓うみたいなものがあったはずだ。
「そういえば昔外国に行ったことがあるんじゃがな? そこで知り合った者に黒い薔薇を貰ったのじゃ、珍しかったから今も飾っておいてるのだが、不思議なことに三年ぐらい枯れないのじゃよ、凄くないかのう?」
そうやって話題を広げながら前この部屋に来たときに取り忘れていた棚のアイテムを手に入れてコメント欄に目を通す。
[へぇ、どういう経緯で貰ったんだろ]
[薔薇貰えるほどに関係深められるのか]
[コミュ力やばいもんね、鴉様]
[あれ? 黒い薔薇の花言葉ってなんか怖くなかったっけ?]
[不吉なだけだったと思うけど]
[今調べてみたけど、怖く――――]
[あれコメント途切れてない?]
なんかコメント欄が騒がしかったが、それは今は無視。ちょっと不思議だったが、今はゲームを進みたいし横にある人形を調べてみよう。
何か聞けると思って調べてみたら、流れたテキストは人形が置かれてあるとだけ……間違っている? それなら別の部屋で代わりの目でも見つけた方がいいのか?
人形の目を取りますか?
・ とる
とらない?
読み進めて出てきたのは、さっき黒歌の時に出たのと似たようなメッセージ。
「この少年、判断能力凄くないかのう……儂、この人形の目を取る発想なかった」
[やっぱりバイオレンス優君]
[戸惑うぐらいするかと思ったけど、凄い判断速いよね]
[優よ、別の部屋の人形が目を欲してる時お前はどうする?]
[もう一つの部屋の人形の目を奪います!]
[判断が速い!?]
[コメント欄治ったね]
「これ、目を取って大丈夫か? ……呪われないか? この屋敷既に呪われてるけど、優に対する呪い余計に強くなったりしないか? というか、儂に呪い来ないよね? あれだよ、夜中に西洋人形出てきたら儂泣くよ?」
[これ日本人形見せた時の反応も知りたいな]
[これはマジでクソザコ鴉]
[早口で怖がるの可愛い]
[泣き顔鴉様……既にいっぱいあるけどまた増えるね]
[雪椿:この続きを見ないと私の絵完成しないと思う]
[言われてるぞ、進め鴉様]
[最近威厳ないなー(棒)]
[でも可愛いからいいよね]
[分かる]
……確かにこれ儂の勘的に取らないと進まないってのは分かるけど、儂の理性がこれやめた方がいいって言ってるんじゃよな……でも、取らなければ進まなそうなの事実だし――――。
「えぇい! こうなったらやってやるぞ! すまぬ人形、恨むなら儂の母上とマヨイビトを恨んでくれると助かるのじゃ、これ儂の意志じゃないから……だからどうか、怖いのやめて夢に出るから…………あれー? この人形紅かったっけ? 儂の目がおかしいのカ? さっきまでピンクじゃったぞ?」
おかしいな、幻覚だな。
その後の恨めしそうに泣いてるなんて文も見えないし、これはきっと儂の西洋人形が怖いという思いから生まれてしまった幻覚で、啜り泣く声なんて聞こえない。
「よし、逃げるか――偉い人間も三十六計逃げるに如かずとかいう言葉残していたし、色々考えて怖がるよりも逃げるのが一番じゃ!」
[浮世鴉、人形が目を取られて泣いてる時お前はどうする?]
[逃げる!]
[はい雑魚鴉]
[ざーこっざーこっ]
[ナンだぁ? てめぇ……]
[この流れ草]
[ドヤ顔で敗走を選ぶクソザコ鴉]
[イキリ鴉全集みたいなのあったけど、今回の配信でまた増えそうだね]
[まだ六回目の配信なのに、切り抜き動画の数が多いの草なんだ]
「キャヒッ――!? よし逃げる儂逃げる! というか、やだ絶対これ何か起きるやつじゃ」
コメント欄もなんかおかしくて怖いが、それよりも今はこの人形から儂は離れたかったので、すぐに優君をこの場から離れさせたのだが、その瞬間人形の首がその手に落ちてきた。
瞬時に出口へと逃走。
何よりも速く、全盛期に逃げたときよりも俊敏に指を動かして部屋から逃げてみせる――――。
西洋人形:
かえして…………
わたしの……目……返して……
人形が恨めしげに啜り泣く部屋を出ようとした時、おどろおどろしいような……泣き声が混じったような、そんな聞くのも重い言葉が優の頭には流れてきた。
聞いてはいけないと耳を塞ごうにも、金縛りにでもあっているのか……思うように体が動かなくて、何より息が詰まってきてしまう。
「逃げる……つもりなの?」
地獄の底から捻りだしたような、そんな低くて低くて――這い寄ってくるかのような小さなそんな声。
振り返ってはいけない。それは駄目だと思うのに、徐々に徐々に這い上がってくる虫のような感覚が、気持ち悪いほどに襲ってきて――――。
目を返せ!
突如目を覆われた優に対して、頭を割らんばかりの声量のそんな言葉が、血の通ってない冷たい掌と一緒に少年を襲った。
そんな上のような文章が浮かんでしまった儂――――詳細に、何よりも自分がその状況を実際に体験したような錯覚さえ覚えてしまった儂は、もうなんか言葉に出来ないほどに怖くなって…………。
「キャァァァァァ!?」
あまりにも綺麗で透き通るような少女の声でそんな事を叫んでしまった。
もうなにこれ? 怖い。やばい怖くて、かなり怖い。すっごい怖くて、意味が分からない。語彙力を無くすほどに怖いとしか思えないこの状況。部屋から出れたが、儂と優に対する精神的なダメージが半端ない。
[これは良い悲鳴、100点]
[超聞きやすくて、お手本のような悲鳴]
[これは幼女]
[これは紛れもなくロリ]
[とてもいい悲鳴だね、感動的だ]
[演出怖い]
[怖さと突然の悲鳴に椅子から転げ落ちたわ]
[雪椿:ありがとう、人形ちゃん。ちゃんと怖く描くからね――だからまた私の子供を怖がらせて、期待してる]
[漫画でも描いてるのか母上は……]
[雪椿:そうだね、いま六ページ目]
「もうやだぁ、儂おうち帰るぅ……人形嫌いぃ……」
あまりの恐怖に大妖怪状態から、童女になった儂は全力で玄関の扉を選択するが、開いてくれる気配はない。
ガチャガチャガチャ……と無駄に音だけが鳴り響き、無理だと気付くのに約二分。
その後はあんまり記憶にないが、儂はなんとかもう一体の人形に目を渡し楽譜を貰う事が出来たらしい。
手に入れた楽譜は「喜春楽」、今の儂が心を保てている理由でもあるこれを手に入れた事で、すぐにセーブしてこれを黒歌に渡しに行く事にしたのだが……。
「あれ……黒歌? なんで、琴弾いてないの?」
[まじで幼女化してて草]
[めっちゃ声可愛い]
[紛れもない幼女……]
[下手な幼女より可愛いの意味分からない]
[口調もロリ化]
[まじで性別不詳系鴉]
[今できるのが、ロリ、ママ、ショタ、イケボ?]
[同期曰く、あとはイケオジとメイドだね……多分執事も行ける]
[ソースは?]
[願望]
[なら信じるわ]
「儂ロリじゃないよー?」
とりあえずこの娘に話を聞いてみれば、琴を弾くのが疲れたみたいで、子供らしくきっぱりと弾くのを止めたようなのだ。そんな黒歌は気分のままに「らららー」と歌を歌い出し、儂の傷つきまくった心を癒やしてくれる。
とにかくもっと癒やされるために、月光が聞きたかった儂は優に楽譜を装備させて、琴をこの子に弾いて貰う事にした。
始まった演奏は普通に上手いといった印象を感じるものだった。
子供が琴を弾いている微笑ましい光景に心を安らぎながら、ゲームを進めていれば急に黒歌が演奏を止めてきた。
そしてムッとした顔で「……違うよ」と、そんな台詞。
普通に上手かったし、儂は楽しかったからどうして不満なのだろうかとおもってみれば、その疑問に対して黒歌はすぐに答えてくれた。
どうやら、黒歌が優に演奏して欲しかったのは琴ではなく、なにか別の楽器だったらしい。そしてそれに優は心当たりがあるようだが、それは使いたくないのか表情を曇らせたと……。
……でも、黒歌にはやっぱり弱いようで、渋々といった感じだが断る気はないようだ。
「とりあえず、優の演奏で落ち着けたな……さぁ別の楽器を探すとするかのう!」
[チッ]
[戻ったか]
[バイバイロリ鴉、そしてお帰りショタ鴉]
[どっちも好き]
[定期的にロリ配信しないかな?]
[ほんと?]
[本当だよ、だって鴉様だぜ?]
[そうだわ]
なんか変な期待を込められながらも、儂は手に入れたばかりの鍵を使って一階の図書室にやってきた。
左側にあったその部屋には沢山の本が保管されていて、一つ読んでみればかなり詳しく雅楽に対する事が記されていた。あとは思い出したくもない誰かを殺した奴の独白。
楽器を探さないといけないが、この部屋にはないし他の部屋も鍵がかかっているし、現時点で行く事は出来ないだろう。一応鍵らしき物がないかこの部屋を全て探索してみたが、手に入ったアイテムは「墨汁と筆」という物のみ。
「ここにあるって事は何かには使うのじゃろうが、使えるような所あったかのう…………また探索じゃな……主らどこに楽器あると思う? あと怪しいところで、儂が見てなさそうな所ってあるかのう?」
[分からん]
[結構調べてたし、見落とし無さそうだよね]
[いまいけそうな部屋だと、あれじゃない? 彫像が守ってるとこ]
[えっと、それってあの泣いてる彫像?]
[そうそう、あれなんか絵を見て泣いているぽいし、何かすればいいんじゃない?]
[とりあえず、やってみる鴉様?]
[絵から調べようよ]
「それしかない感じかのう? ……まぁやってみるか、他は見たしあそこぐらいじゃろうし」
絵となると、階段に飾ってあった一組の男女の絵だ。
男性が花束を渡して、それを女性が受け取っているというのを描いた絵。確かにその下には彫像がいて、それを見て泣いているっぽかったし……。
「とりあず手に入れたばっかりの墨汁と筆でも装備して色々触ってみるとするか」
そして広間にある絵を調べてみたら、花束を受け取っている女性には何も反応しなかったが、男性の方を調べると絵を塗りつぶすという選択肢が出てきたのだ。
「だから優よ判断速いぞ?」
幸せを壊すのは嫌だったが、このゲームの事だからそれしか正解はなさそう……だから儂は、それを選んでみたのだが、どうやら身長が足りなくて塗りつぶす事が出来ないようだ。
「あーこれ正解じゃなぁ……下の方にあった椅子でも使えば良いのか?」
少し悪感情が出てしまったがクリアするためにも、儂は椅子を動かしそれの上に優君を立たせ、はけで絵を塗りつぶさせた。
「……すまぬのう」
瞬間画面が暗転、女性の悲鳴が館に響き渡ったが変化はなかった。
その事実に罪悪感を感じながらも、彫像を調べてみれば晴れやかに微笑んでいるといったテキストが流れてきて、この彫像のさっきまでの顔は嫉妬から来ていたものだったと理解した。
「よし、部屋に入るぞ……守っていたし流石にここにはなにかあるじゃろ」
[ちょっとつらそうだね]
[この鴉優しいからね]
[感情移入でもしてるんじゃない?]
[あって欲しいね、あの男性犠牲にしたんだし]
「――――ッ入って早々、驚かせにくるか……くはは、よっぽどこの部屋に隠したい物があるとみえるな」
部屋に入った瞬間に落ちてきたシャンデリア、画面越しにも異様な雰囲気を漂わせてくるこの場所にはきっと何かがある。それに、机に用意されていた「逃げろ」という文字……絶対に何かがあるのは確定しているだろう。
妙にボロボロなこの部屋、何かが暴れたのか部屋にある壺等も割れていて、箪笥なんかは壊されている。
「きな臭いのう――セーブしておくか」
ちょっとびびってしまい、広間に戻ってセーブしてからこの部屋の奥にあった箱を儂は開けることにした。
異変が起こったのはそれからすぐだった。
箱を開けて手に入れた古ぼけた三味線、それを優が持った時彼の鼓動が速くなったのだ。
操作が不可能になり、勝手に歩き出す優。
そんな彼を見ながらも、儂の頭にはこの状況に合ったような文が生み出されていく。
ギィーと古ぼけた扉が開く音、そしてそこから現れたのは……。
夥しい量の返り血を浴びて、そのきっかけであろう血塗れのナイフを持った――黒歌に、とてもよく似た少女が立っていた。
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