鴉様のホラゲー配信編
【配信準備】とある水曜日の子鴉様
前回の黒歴史梨鉄から約三日後の水曜日。
その黒歴史梨鉄のせいで罰ゲームを受けることになった儂は、気が進まなかったが盟友から三つほどのホラーゲームを勧めて貰った。
――だが……いざプレイするとなると、タイトル画面やそこで流れる曲だけでやる気が失せてしまうという事件が発生してしまったのだ。このままでは罰ゲームを完遂できない、流石にやるって言っておいてやらないのは大妖怪浮世鴉的にNO。
ならアンケートでもしてマヨイビト達に、三つの中で怖くないゲームを選んで貰おう! きっと、優しい視聴者達なら怖くないゲームを選んでくれる筈だから……と、そんな天才的な考えでツイッターの方でアンケートを実施したのだが――――。
浮世鴉【妖ぷろ所属】@ukiyo_youpuro
罰ゲーム用のホラーゲーム募集じゃ!
この三つから選ぶがよい、ちなみに配信は水曜日にやるぞい。
幽魂の夜想曲:65%
鬼女の家:12%
夢想世界の絵巻物:21%
アンケートの結果……選ばれたのは鶫曰くこの中で一番怖い作品だった。
僅差でそうなったんだろうなと、少し現実逃避をしてしまったのだが……現実は非情であり、優しい方は結構少なかった――というか、儂の事を叫ばせたいマヨイビト多過ぎじゃね?
リプ欄とかかるい地獄のようになってたんじゃが……というかママ化楽しみですって呟き多過ぎじゃ。
エゴサしたら、いっぱい出てきたし、なんか六百件はあったぞ? それにママ化という言葉めっちゃパワー感じるし、まじで分からん。
【妖ぷろ三期生RINE】
鵺:ママ、ホラゲー決まりましたね 11:19
狐:結構怖い感じらしいけど大丈夫かしら? 11:23
既読2:……やるけど多分、俺終わる頃には白くなってると思う 11:32
既読2:というかあれだな、今ツイッターで見たけどやばいタグあったわ。#認知しろ鴉 11:34
狐:……それ流行らせたの鶫さんよ 11:36
鵺:え、七尾さんですよ? 11:37
既読2:今見たら同じタイミングで呟いてたよな? 戦争するか? 11:39
びびった事をすぐ誤魔化すように会話のネタを探してみれば、見つけたのはやばいタグ。
それをちょっと話題に出してみれば、意外なところで見つかった犯人達――二人の発想力とバズらせ能力の高さにビビりながら、発端となった呟きを見ることにしたのだが、それを見た瞬間に笑ってしまった。
源鶫【妖ぷろ三期】@tugumin_youpuro
あの急に思いついたのですが、ママに認知して欲しいのでこのタグを流行らせたいです!
#認知して鴉
【七尾玲那(PP信者)@youkopp_youpuro】
返信先:@tugumin_youpuroさん
悪乗りが過ぎるわよ
#認知して鴉
【奴良瓢鮎@グッズ発売中@taisyou_youpuro】
返信先:@youkopp_youpuroさん@tugumin_youpuroさん
オレも流行らせたい
#認知しろ鴉
何気にこの遊びに参加してる推しの姿に尊死しかけるもなんとか理性を俺は保ちながら、今日20:30分からの配信の準備の為に、ゲームをダウンロードしておくことにした。
初見でやりたいから動作確認は出来ないが、そこは帰ってきた雫にでも頼めばなんとかなるだろう。
ダウンロードが終わったから、その後はサムネ作り。今回やるのは音楽要素が結構入るらしいので、ちょっと凝ってみたい、だから妥協せずに時間をかけて作ろうとこれからの予定を決めて作業を始める。
それで暫く作っていると、急にメッセージアプリに通知が来た。
こんな平日の昼間になんだろうと思っていれば、相手は絵師であり母上でもある雪椿先生。
#雪椿
雪椿 今日 14:32
ちょっと今日のサムネ用の絵を作ったよ、いる?
浮世鴉 今日 14:34
タイミング最高じゃな、やっぱり母上は神じゃのう
雪椿 今日 14:36
もっと褒めていいよ、お礼はメイド服のコスプレ写真で
浮世鴉 今日 14:38
いまうまい棒余ってるし、それでよいか?
雪椿 今日 14:40
……麩菓子がいい、あとアイス
浮世鴉 今日 14:45
うまい棒が……負けた? まあ麩菓子も沢山余ってるから、今度送らせて貰うのじゃ
そういえば今回のサムネ用の儂どうしようか?
和風のゲームらしいから偶には別の衣装の儂を見せたいんだがと、そう思ったタイミングで彼女から送られた来たのは笛を吹いている姿の儂。
普段より大きくなった羽で体を隠すようにしていて、その羽の中で不敵に笑い演奏しているそのイラスト、それはいつもの彼女の絵で感じさせてくる生きているような錯覚をこちらに与えてくる。
「マジで完璧だな、先生は……これでもかって程に最高のタイミングで俺の欲しいイラストをくれる」
送って貰ったイラストをサムネイルに貼り付けて今日の配信の予約を俺は終わらせて一息つく。
ホラーゲームはまだ怖いが、母上にここまでやって貰ったし、マヨイビト達に望まれている以上本気でやらなければ俺ではない。
「よし、今日も全力で頑張るぞ」
【ホラーゲーム】ほらーげーむはいしん……【ビビリ鴉】
「マヨイビトの皆様方、こんにちわじゃ………………妖ぷろ三期生所属の浮世鴉じゃよ――――はぁ帰りたい」
配信を始めたのはいいが、配信前にプレイした雫の「このゲーム鴉様苦手な部類のやつですね」という一言のせいで、儂のテンションは過去一で下がっていた。
一番最初の画面を見た限り絵が凄い好みだし、流れるBGMもピアノ風の音楽で凄い聞き惚れてしまう。このゲームがホラーじゃなかったら今頃、すごくテンションが高くなってただろうが、やっぱり事前情報のせいでまだあまり儂は乗れていなかった。
[テンションひっくいな]
[開幕ハイライト消えてるのは草]
[こんばんはー! 公式コラボからの初見です]
[多分家で配信してるし、もう帰ってるだろ]
[やさぐれ鴉]
[またFA増えるじゃん]
「ということであれじゃな、今日は『幽魂の夜想曲』というアドベンチャー系のホラーゲームを実況していくぞい……クリアまでやるつもりじゃから、結構長時間の配信になってしまうが何卒よろしく頼むのじゃ」
[長時間配信助かる]
[今日は何回落ちるんだろう?]
[まじで声が死んでて草なんだ]
[また切り抜き増えるじゃん!]
[しかも長時間だから、きっと沢山切り抜きどころあるだろうからなぁ]
[取れだ鴉だからね、きっと今回も笑わせてくれる]
そんなことを言ったあと、この配信の軽い注意事項を二・三個程伝えて儂はゲームをスタートすることにした。
今日のコメント欄も盛り上がっていて、マヨイビトの好意的な反応に勇気づけられていく……が、やっぱり俺の怖がる姿を望むコメントが多い、それにちょっとネタバレっぽい危ういコメントもチラホラと――――。
「あ、そうじゃそうじゃ。今日の配信ではネタバレになるようなコメントはしないで欲しいのじゃ、せっかくやる初めてのフリーホラーゲームじゃから、苦手とはいえ楽しみたいからのう」
そうやって一度釘を刺しておく。
やっぱりこの配信を機に今からやる『幽魂の夜想曲』を知るマヨイビト達もいるだろうから、極力そういうのは避けて欲しいからだ。
堪えられない方もいるかもしれんが、謎解きのヒントでも貰うなどして、そういう場面で発散させるようにすればなんとかなると……信じておく事にして、ゲームスタート。
[おっショタじゃーん]
[久しぶりのショタ兄貴]
[始まったばかりだけど雰囲気あるじゃん]
[この時間に子供が一人って事は家出かな?]
真っ暗な夜道の中に黒髪の少年が立っていた。
街灯は見えるが壊れているのかそれは灯っておらず、普段あまり人が通らない場所なのだろなとそんな事を思わせるような不気味な小道。
とりあえず儂は主人公の顔を確認する為にメニューを開けば、そこには高級そうな服を着ている淡い水色の瞳を持つ少年が。ステータス曰く今十二歳。
常識的に考えてこんな時間に外にいるという事は、ちょっとした好奇心による夜遊び……もしくはコメント欄で言われている通りに家出だろう。
画面メニューにはアイテム・装備・ゲーム終了の三つのコマンドが用意されていて、試しに装備を開いてみればそこには五つの項目があった。
右手左手、頭に体あと一つはアクセサリー。
「……今の装備品は優の服のみ――あれ? なんか外れたのじゃ」
[この鴉ショタの服を脱がしたぞ!?]
[黒髪のショタと黒髪ショタ爺]
[はい切り抜き]
[配信開始一分で、十二歳の子供を剥ぎ取る妖怪がいるらしい]
[でもショタ同士だから犯罪臭はあんまりしない]
[【速報】浮世鴉黒髪ショタの服を剥ぎ取る]
「マヨイビトよ? 儂が早速ヤバイ奴みたいになってるんじゃが……あれじゃよ? 偶然……偶然触ったら脱げただけで、儂悪くない、浮世鴉悪くない」
なんか誤操作のせいで変態扱いされておるのじゃが……なんでだ?
儂、そんなやばい妖怪じゃなくてもっと格好よくて強い妖怪なのじゃが?
[またまたー]
[素直になれって]
[ほら言ってみ、脱がしたかったんだろ?]
[私も脱がすと思うので、気にしないでください]
[子鴉様のキャストオフ、待ってます]
[【速報】浮世鴉、罪の意識無し――ほら、自分も脱いで誠意見せろって]
「なんじゃこの流れ、地獄か? というか、儂を脱がせたいだけじゃろこの流れ――というか、儂が女の時ならわかるが、今は少年じゃぞ?」
ゲームを進めるために夜道を歩かせながら、そうやって会話を続けていく。
まだ配信始めて一週間ぐらいなのに集まるマヨイビト達は濃いなと思いながら、そう言ってみたのだが、今の言葉のせいでなんか予想もしなかった反応がちらほら見えるようになってきた。
[“今”は?]
[サラッと凄いこと言ってない?]
[ちょっと詳しく]
[雪椿:続けなさい]
[戻れ鴉ッ! それ以上はまた増えるぞ!]
[上のやつ気にしなくていいから続けて続けて?]
「母上もおるしいうが、まえ言ったとおり儂には決まった性別がないのでな、演じれば変わるし語れば騙れる。じゃから、せめてそういう時は、別の性……の時、に――あ、ちょま今の無しじゃ! 忘れろ、今すぐ忘れるのじゃ! ちょっと、あの……え? 儂ロリになりたくない!」
道を進んでいくと画面が暗転して、御者と会話する優少年。
心配する御者の方に金持ちムーブをかます少年を見ながら、儂は自然と会話を続けていく。その中で失言に気付いた時にはもう遅く……なんかやばい速度で、コメントが加速していた。
[よし、やろう]
[堕ちろォ! ロリにィィィ!]
[はい切り抜き]
[雪椿:命令だよ、やって]
[めっちゃ急に視聴者増えたな]
[それだけ望まれてるんだよ――つまり、分かってるよね?]
[ハーリーハーリー! ほら、あくしろよ?]
「…………儂、人間様達怖い」
本当に怖い
あまりの怖さに、自然と少女の声を出してしまい、さっきの倍以上に速度が上がってる。
まだあれじゃぞ? 配信始まって五分も経っておらぬし――このゲームのメインであろう館に着いたみたいなのに、何故誰もそれに触れないのじゃ? というか…………これ気のせいだと思いたいのじゃが、マヨイビト達の方が怖くないかのう――――。
[URYYY!]
[NEW:ロリ属性]
[ロリババアじゃない? 千歳だし]
[雪椿:ロリもいいかもしれないね]
[即堕ち系有能不憫ポンコツホラゲ苦手ヤンデレ儂ショタロリ爺婆ママメイド]
[僕はね、属性過多が見たかったんだ]
[見たかったって、諦めたのかよ!]
[いや、もういいんだよ――――見れたからさ、安心して逝けるんだ]
始まってしまったホラゲー配信。
それは開始数分から不穏な空気を漂わせていて、この先の事を考えると不安になってしまう。あぁ、願わくば……あまり怖くありませんように、でも怖くても構いません――――だって現在進行形で、マヨイビト達の方が怖いから……。
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