【三期生コラボ】第一回三妖大戦~逆梨鉄編~【罰ゲームあり】その2
目的地に辿り着いて仲間も増えた儂は絶好調。
宣戦布告も済ませたし、これからが儂のターン。貧乏神がいるかぎり儂の勝利は揺るがないし、取られても取り返せるように、コメントでおすすめされた急行系のカードは沢山買ってある。
所持金が増えて絶望ばかりしていたが、そのおかげでカードも揃えられたししばらくは安心していいだろう。
一位:七尾……-2億6000万
二位: 鶫……-1億2000万
三位: 儂…… 3億2000万
現在は三億円の所持金のせいで圧倒的に最下位、だけどここからはもう何も怖くない。貧乏神と名乗るくらいだし、きっと事ある事に所持金を減らしてくれて現在一位の七尾に追いつく筈だ。
「待っておるのじゃ二人とも、すぐに儂は借金まみれになってやるのでな!」
「望むところですよ! 僕だって十億ぐらい借金してやります!」
「この言葉……リアルの方で言ってたらヤバいわよね――三マス、また赤マスだわ」
[燃える男と冷徹狐]
[この狐赤マスにしかいけないな]
[今の所見所沢山だね]
そして次の鶫は貧乏神を盗むためか儂の元に手に入れていた急行系のカードで近づいてきた。あと十数マスで追い抜かされて奪われるらしいが、連続で六等を出せば追いつかれることはない筈だ。
貧乏神が憑いている時はカードが使えないので、運頼みしか出来ないがなんとかなると信じてサイコロを回していこう。
「あ、また二マスか……なんか儂偶数しか出ておらぬな」
二マスで止まれるマスは青マスのみでまた金が増えるが、貧乏神がいるので怖くない。
だから儂はどれだけ所持金が増えようと構わないので、適当にボタンを押して甘んじて4000万円を受け取ったのだがそこで異変が――。
「おや? なんか 変だぞ??????」
[え、まじ?]
[流石に早くない?]
[運バグってるだろこの鴉!?]
[いや、変わらないやろ]
唐突に始まる見知らぬイベント。
無駄にいい声つきで再生され、それを見てか加速し沸き立つコメント。
あまりにも早く流れるコメント欄を見てみると、かなり騒いでいる視聴者達の姿が見えた。分からないまま進行していくそのイベントの情報はこの様子だとそこを見ても手に入りそうにはない。
まぁ、とりあえず鶫に聞いてみれば分かるだろう。
「なぁ鶫、このイベントはなん――――」
「ま……、まさか! 貧乏神が伝説の貧乏王に変身しようとしているのでは!?」
なんじゃとそう言おうとした時に間違えてボタンを押してしまい、イベントが進み台詞が流れて儂の言葉が遮られる。
「え、いや本当に早くないですか?」
「この妖怪……吉か凶しか引けないのかしら」
「あのー主ら? 儂に分かるように説明してほしいのじゃが……なんかこれはいいイベントなのか? 進化イベントみたいじゃが」
「これ終わったら説明しますよママ、今はともかく最高神の誕生を見ましょうか」
スリー、トゥー、ワンと、盛大に祝われながら変わっていく貧乏神の顔。
憎たらしい煽り顔から、赤ん坊の顔、そして頭に「び」という文字が書かれた天冠を装備している化粧する範囲を間違えただろう紫髪の何かに変わっていき――GO! という声が流れたと思えば画面いっぱいに最後の奴の顔が出てきた。
「王の爆誕である!」
そいつは大声でそんな事を喋ったかと思えば、「なに、来月まで待ちきれない? いいだろう、嬉しいことを言ってくれるではないか、貴様の望みを叶えてやろう!」と、ナレーションと同じかの英語三文字の吸血鬼と同じ声で言い放つ。
「しかも即発動!? ママ、大丈夫ですか? 明日死にますよこれ!」
[この鴉麻雀強そうだね]
[役満耐久配信でもしたらすぐ終わりそう]
[バグりすぎだろ……]
[まだイベントは決まってないし、それ次第……]
当事者の儂が一番ついて行けてない状況で、画面には竜巻が起こり始めて何やらまた貧乏王という奴が喋り初めて、なんか儂のカードが全部消し飛ばされた――――え?
「え? 儂の……カード? なんで? え?」
貧乏王は、浮世社長のすべてのカードを捨ててしまったw。
実際は草など生えてないが、その文字を幻視してしまうような出来事。あまりの事に思考が停止してしまい、数秒間の間頭の中にハテナマークだけが浮かび続ける。
「え、儂が貯めたカード……なくなったの?」
[目が死んだ]
[この鴉麻雀強そうだね(笑)]
[役満耐久配信でもしたら永遠に終わらなそう]
[今来たけどなんで鴉様絶望してるの?]
[それはね、鴉様はお金が増え続ける中で健気に急行系カードを集めていたからだよ]
[なんで集めてたの?]
[それはね、貧乏神がまだいない時にいつ現れても仲間にするからって意気込んでたからだよ]
[鴉様、ゲームに愛されすぎだろ]
どういう事なのだろう?
儂って、一応千年ぐらい生きる中で沢山おみくじ引いて、生涯大吉しか引けてない超運がいい妖怪の筈なのに、なんだこの仕打ちは? これ攻め込めばいいのか、儂の確率バグってるから治してって運営に問い合わせした方がいいのか?
「あーママ、生きてます?」
「……ダメね、帰ってこれないわこれ」
「あはは、儂は……まだいけるぞ? だって、カードなくなっただけだし取られなければいいだけ……」
諦めない。儂は諦めない、ここで諦めたらもう立ち直れない。
もうこれは一対一対一対一の、儂以外の者は全部敵のデスゲーム。鶫も七尾も貧乏神も、全部利用して勝てばいい。
「よし次は七尾の番じゃな! そのマスなら儂の仲間は取れないじゃろう! 精々チマチマとこっちに来てみるが良いぞ!」
「そうなの? じゃあ遠慮なくいくわ」
「え? いや、儂から31マス離れとるし、無理じゃないか? えっと無謀じゃぞ流石に」
確か七尾は絶好調状態というやつで、現在三個サイコロを振れるがそれでは最高18マスしか進まないので、ここに辿り着くのは不可能だ。
「忘れてないかしら? 私はちょっと前にスーパーカード駅であるものを手に入れたのよ」
「スーパーカード駅? 確かになにか貰ってたのう……確かリニアカードだったか?」
「そう私が手に入れたのはリニアカード――そしてその効果は八個のサイコロを同時に振れるというもの」
[カードバトルアニメみたいな展開で草]
[いやでも流石にきついだろ]
[行けるんじゃない?]
[この配信で一回も4以上を出せない七尾様だぞ]
[無理だろ]
確かにそれなら可能性があるだろうが、コメント欄を見ての通り七尾はさっきからずっと4以上の目を出してないのだ。そんな状態でこのマス差を埋めることなど出来る筈がない。
「私はね、持っている妖怪なの……覚悟はいいかしら? これが私の実力よ」
その言葉が吐き捨てられ、画面に八個のサイコロの目が表示される。
1・4の目が一つ、3・5・6の目が全て二つずつ――その合計は33、ギリギリで俺を抜かした七尾は、貧乏神を奪ってそのまま赤マスに辿り着いた。
俺の後ろから貧乏王が離れた直後、画面には津波のような演出。
「あ、運がいいわね……二人とも、旅行に行ってくるわ」
「沖縄方面に行きましょ? そっちの方がいいですよね、ママ頼むから祈ってください、じゃなきゃ僕ら負けてしまいます!」
「え、このイベントどっかに飛ばされる系なのか?」
「そうです! それで沖縄方面かハワイ方面に飛ばされるのですが、今ハワイに行かれると、絶対に追いつけないので阻止しないとやばいんです!」
「まじなのかそれは!? つまり沖縄方面ならまだ取り返せる? ――王よ、沖縄に! 沖縄に狐を!」
[どっちだこれ!?]
[沖縄方面だったら那覇で、ハワイならグアム]
[めっちゃ気になるぞこれ]
[勝負が決まると言っても過言ではない]
運命の分かれ道。
七尾がボタンを押していき、テキストが進んでいく。
そしてその結果は那覇で、なんとかグアムは免れた。
「しゃぁぁぁ! 儂らの勝ちー!」
「やりましたね、ママ……まだ僕らに希望はありますよ!」
横にいる鶫とハイタッチ。
そのままアイコンタクトで何をしてでも七尾を蹴落とすという事を決めたので、一先ずここからは共闘だ。
[宣戦布告を忘れるチョロ鴉]
[鵺鴉可愛い]
[はしゃぐ小学生のそれ]
[てぇてぇ]
「盟友、僕が屯田兵カードをカード駅で手に入れます! だから次のターンは北海道に向かってください!」
「了解じゃ盟友、狐を討伐するとするか!」
「貴方たち? これ対戦ゲームよね、なんで共闘しようとしてるのかしら?」
[これは熱いわ]
[激アツ展開]
[まだこれ始まって三十分だぞ?]
[切り抜き所多すぎて迷うな]
「あぁ! 三マス越えた! でも、これなら戻れます! 盟友は僕を信じて前へ!」
「その意志受け取ったのじゃ! ここは急行系のカードで一気に! ……そういえば儂、カードないのじゃ」
ちょっと悲しい現実を思い出しながら、無難に5マス進んで青マスに止まり所持金を増やしながら北海道に近づいていく。
「共闘して私を倒す感じなのね、分かったその勝負受けて立つわ――だけど、私の勝ちは揺るがないの。ほら、仲間が増えたでしょ?」
七尾が儂らの挑戦を受けた直後、悪魔が現れた演出が始まり、リトルデビルというのが三匹、デビルが九匹悪魔王が二匹……合計14匹の小さい奴らが七尾の画面に現れて彼女の画面を埋め尽くした。
そしてその悪魔達の効果なのか、彼女の借金が一瞬で膨らんで借金の額が六億に到達した。
「ッ――まだ希望はあります。たいらのまさカードさえ手に入れれば全員の所持金を無くす事が出来るんです! そしたら仕切り直し、まだ一年目も終わってませんしあの借金魔王は討伐できる!」
「鶫さん? 今すっごい不名誉な渾名を付けられた気がするのだけど……気のせいかしら?」
「すぅー……気のせいですね。あ……そうだ良い感じに盛り上がってるところで、今日僕達に届いていたマカロンでも食べましょう?」
「鶫よいくらなんでもその話題の変え方は無理があるぞ」
「そうね、もっと精進しなさい」
[鴉様に裏切られる息子]
[そして手を取る魔王]
[鴉様の手の平回りすぎ問題]
[私のマカロン読まれるかな]
「ほら、マカロン読み希望してる方いますよ!? 早速食べましょう!」
「まあ別にいいぞ、交流は大事じゃしな」
三妖の皆様こんにちわ
前に僕達のつぐみんが三期生の間で打ち合わせがあったと言っていたのですが
その時のお互いに対する第一印象とかありませんか?
出来る範囲でいいので、どうか教えてください!
「こういう感じでやるのね……それにしても第一印象? そんなのアレしかないわ」
「ですよね! 僕もこのマカロン見たときに、もうこれは食べるしかないって思ったんですよ!」
画面の端にマカロンを写すようにして、三人でそのマカロンについて触れる事にした。
最初に二人が触れてくれてその話題に付いていこうとしたのだが、妙に答えが一致してそうな二人に首を傾げてしまった。
「主ら、なんで儂を見ながら笑っておるのじゃ? ――あぁ、儂のことを話す感じという事か?」
「ですね、それで打ち合わせの時は凄かったなぁって事を思い出した感じですよ」
「そうね、貴方に会ったときは衝撃を受けたもの」
[分かってない鴉様と優しい声の妖狐と鵺]
[なにかやばい格好でもしてたのかな?]
[気になる気になる]
「コメント欄にも気になってる方もいますし、ここで第一印象を言うのですが! なんで妖ぷろにメイドがいるんだ!? って感じでした!」
「まっ、鶫ィ!? なぜその話をここで出すのじゃ!?」
ちょっと溜めて視聴者へと告げられたその言葉。
あまりの不意打ちに片手で強めに机を叩いてしまって、バンッといういい音がゲーム部屋に響いていく。
[いい台パンだね! 95点]
[え?]
[流石に草]
[嘘じゃないそれ]
[でも反応がマジだぞ」
[その打ち合わせって仮装パーティー?]
[今度はメイド属性]
[雪椿:!?!?!?!?]
[母上大混乱]
「あの打ち合わせの後で聞いたのだけど、浮世社長は運営の方達にメイド服を指定されたようよ。私も正気なの? と思ったけど、とても似合ってたし目の保養にもなったわ。多分少し視力回復したと思うの」
「もしかして今度は儂が裏切られた? それにその秘密墓まで持って行くつもりだったんじゃが、なんでここで暴露されるのじゃ? ……え?」
「次は鴉さんからの私達への印象ね、どうだったかしら?」
「おーけー、無視されるんじゃなこれ……もうなんでも来て良いぞ? 儂の最大の秘密が暴露された以上、恐れるモノなどないからのう――で、儂からの印象としては。鶫に対しては話すまでは陽キャで、その後は盟友。七尾は格好いい感じの女性じゃな」
もうなんか吹っ切れた。
これ以上属性は増えないだろうし、何が来てもいい。
コメント欄には「ご主人様」とそう呼んで欲しい視聴者様も現れているし、もう何も失う事のない。
そして儂はこれからの配信でメイド口調も使おうかなと現実を逃避し、乾いた笑いを漏らしながら、二人との初対面の話をした。
[話題が妖ぷろすぎるわ]
[運営もやばいけどそれを着ていく鴉様もやばい]
[だけどグッジョブ]
[二人に対しては解釈一致]
[鴉様の話題、ビックバン級の衝撃なんだけど……」
[これからメイド服のFA増えそうだな]
[即堕ち系有能ポンコツ儂ショタママメイド]
[雪椿:描かなきゃ、私の命に代えてもこの子を後世に残さなきゃ]
[キメラ大好き:手伝おうじゃないか!]
[つぐみんのママじゃん!]
[そしてここに、子鴉様同人誌化計画が始まったのであった]
[参加するわ]
ある一通のマカロンから広がった混沌。
それはこの配信をより一層盛り上げて、それを機にしてさらに逆梨鉄は進む。そして一年が経過したことにより一度画面が切り替わった。
収益額 一年
一位 浮世社長 6億7000千万円
二位 つぐみん鉄人 -4億5600千万円
三位 七尾社長 -9億7600千万円
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