【三期生コラボ】第一回三妖大戦~逆梨鉄編~【罰ゲームあり】その1
つぐみん鉄人
七尾社長
浮世社長
[え、鉄人?]
[草]
[見間違いかと思ったら違うわ]
[こわ]
[一人だけ圧が違う]
配信画面に映る儂らの名前とその役職。
始めたばかりである儂と七尾の役職は勿論社長、鶫の事だから少しプレイして役職は別のやつになっている事は予想はしていた。
だけど……ツッコませて欲しいのじゃ。
「なあ鶫よ……事前にこのゲームについてちょいとだけ調べたのだ……その役職、かなりやばいやつだった気がするのじゃ……気のせいか?」
このゲームが発売されたのは今から丁度十日前。儂ら三期生は配信の準備があったしそのあたりは忙しく、この役職を取る時間などはないはずじゃ。
それにそもそも鶫が買って、届いたと連絡されたのは五日前だったと覚えておるし……どれだけやったんじゃ、こやつ。
「あ、これですか? それなら、皆で遊ぶ前に久しぶりに練習しようかなーと思ってやったら思いの他ハマってしまいまして、気付いたら配信以外はずっとこれをプレイする生活になってたんですよね」
「そういえば、主のディスコでの返信やけに早いと思ってたのじゃが、もしやずっと起きてたというわけはないだろうな?」
「あーッと……そうですねー、いくら僕でもそんなに命賭けませんよ、ちゃんと九時間ぐらい寝ました!」
画面に表示される鶫のアバター。それは糀の表情と喋るのに合わせて、左右に視線を彷徨わせている。
これはどう考えても、ここ数日間の睡眠時間の合計とかいうオチじゃろうな……それなのに朝からああやって自分を維持できるのか――若いってすごいなぁ。
[それ合計九時間ぐらいってオチじゃない?]
[あ、それを察してか鴉様の目が死んでる]
[やっぱり妖ぷろ]
[そういえばこの妖怪昨日も別ゲー耐久してなかった?]
[朝の五時までやってたよね]
[人間じゃな……妖怪だったわ]
そういえば今日の五時頃に儂はRINEを送ったが、それの返信もはやかった気がするな。
早起きだなと思っていたがただ耐久していただけだと……なんじゃろうな、最近の人間の耐久力ってあがってるんじゃな――勉強になるのう。
「ねえ二人とも枠は二時間半あるけど、どのぐらいかかるのか分からないのだから速く設定終わらせるわよ」
「そうじゃな七尾。このままだと頭痛くなってくる気がするから、速く進めるとするか。それで一回確認させて欲しいのじゃが、今回のルールは総資産が一番少ない奴が勝者ということでいいのか?」
「そうですね。それでちょっとした縛りとして貧乏神が憑いている方はカードの使用を禁止するって感じですかね」
……貧乏神?
そのような者がこのゲームにはおるのか、名前からして敵な気がするが……今回は貧しければ勝ちというルールのはずじゃし、つまりそのキャラはお助けキャラに変わるということじゃな。
それでルール的に、その貧乏神を取り合う事になる感じなるのかのう?
[面白そう]
[その縛り賢い]
[自分も今度やってみようかな]
[なんで使用禁止なの?]
コメントを見る限り、このルールはかなり面白くなるらしい。初めての梨鉄だし、楽しみたいので期待が持ててくる。
それに儂も気になっていたカード使用禁止についてを聞くコメントもあったし、鶫の性格なら答えてくれるだろうからちょっと聞き耳を立てるか。
「使用禁止の理由としては、このルールだと必然的に貧乏神を取り合うことになるからですね。貧乏神を持っている時に移動系のカードを使われてしまうと、勝負にならない可能性が出てきてしまうので今日は縛らせて貰った感じです」
そうやって大体のルール説明を終えてゲームスタート。順番はコンピューターによって決められて、儂が一番で三番手に鶫で決まった。
一番というのは気分がいいから、この気分のままどんどん借金しよう。
「じゃあやっていきましょうか。そうだ言い忘れてたのですが、今回は逆梨鉄という事で貧乏神がいないと楽しめないので、最初に目的地の駅に行く方を決めさせて貰います」
「確かにそれは決めないとダメね」
「なんでじゃ? 貧乏神はランダムで来るという感じではないのか?」
「初心者のママや分からない方の為に説明しますが、貧乏神は最初に決められた駅に誰かが辿り着かないと出てこないんですよ。今回のゲーム期間は四年なのですが、それだと結構早く終わってしまうので少しでも速く貧乏神のトリガーを引く方が必要なんです」
そうなのか結構難しいのう、二人の反応……というか表情を見る限り、あまり目的地に行きたくない風に思えるな。
どうしてその表情を浮かべているのか分からなかったから、それを知るために説明書を見ることにした。それで分かったのだが、目的地に最初に辿り着いたプレイヤーはどうやら援助金を貰えるらしい。
確かに今からやるルールだと、かなりのマイナス要素。
どのぐらい貰えるかは分からぬが、喜んで受け取る物ではないな……だけど、
「じゃあその役目儂に任せてくれぬか? 初めてじゃし、ちょっと一番に辿り着いてみたいのじゃ」
調べた限り辿り着けば何かアニメーションが流れるらしいので、それを見たかった儂は率先してその役目を担うことにした。
[子供っぽい所もあるんだ]
[短時間で性癖がまた追加されてる]
[一番に着きたいんだねわかるよ]
[子鴉様可愛い]
「いいんですか?」
「なら決まりね、じゃあやっていきましょう」
「そうじゃな! ――なぜ、初手に一千万も金を渡されるのじゃ? ……金銭感覚、早速壊れそうなんじゃが」
そしてゲームが始まったのだが、最初に流れたオープニングで急に一千万円を手渡され反射的にそう言ってしまった。なんだろう、今まで儂は人生ゲームという物やったことないのじゃが、ここまで金が回るゲームなのか。
「あれママは人生ゲームやった事ない感じですか?」
「そうじゃな。遊ぶ相手もおらぬし、機会もあまりなかったのでやったことがないのじゃ――それと自然にママ呼びするのはやめい」
「いやぁ、こうやってサラッとゴリ押せば許されると思ったんですがダメでしたね!」
「まぁ、もう今更じゃし……別に好きに呼ぶが良い、過去にそのように呼ばれたこともあるし気にしても意味がないからの」
[許された!?]
[じゃあ遠慮なく、ママァ!]
[我が子]
[お爺ちゃん]
[性癖過多ァ!]
「なんか一気に呼び名増えとるし、何より最後のは煽りか!? もうよい、目的地は長野の松本じゃしッ早速向かうのじゃ!」
一気に増えた呼び名達。
それは止まることを知らず、コメント欄が一気に加速する。
人間達の闇を見たような気がして、ちょっと震えながら儂は早速サイコロを回してみた。
「二じゃな……よし、マスに止まったぞ?」
二マス進んで止まったのは青いマス。
確かルールではこのマスに止まればお金を貰えるようだが、このルールだと外れじゃのう。幸先悪いが、大丈夫か?
「ん? なんかイベントが……」
えっとなんじゃ?
「浮世社長、今月の営業成績が倍になったという報告が来ておりますぞ? 何倍になったか確認してみましょう!」イベントで突如として告げられたその文字。
急にルーレットが回り出し、止めてみればそこには四倍の文字が……。
[あっ]
[この鴉……持ってやがる]
[ママァ!?]
[普通だったら、めっちゃ運がいいのに]
[鴉の子可哀想]
最終的に最初当てた820万は、今の阿呆みたいなイベントのせいで四倍に。そして画面に表示されている千万に今の四千万が一気に追加され、一ターンで儂は大金持ちに――――これ、現実だったらなぁ。
「ははっ、酷くないかのう……これ」
「哀れね、じゃあ私の番よ……で、どこに向かうのだったかしら」
「松本ですね」
「長野県にあるのよね……あれ長野ってどこだったかしら……」
「え? 七尾さん?」
「は?」
「………………へー真ん中にあるのね、九州にあると思ってたわ」
え、マジで言ってるのかこやつ……。
というか、主リアルの方で陰陽師じゃろ、あれってかなり頭使うと記憶してたのじゃが……大丈夫なのか? しかしあの結界を張れる時点でかなり実力はある筈なのじゃが……もしや天才肌の人間か?
「幸先いいわね、早速赤マスよ。400万程度だけど誰かさんよりはいいわね」
[ジャブ入れたぞこの女]
[(横を見ながら)誰かさん]
[あっ(察し)]
[長野県に対するツッコミなくて草]
[え? 長野県は九州地方にあるんだよ知らないの?]
流れていくコメントと進んでいくゲーム画面。
次の番の鶫が止まったのは赤いマス。そこで彼は八百万円を手放して一気に一位に躍り出た。始まったばかりだが、現在は鶫が一位で俺が最下位。
この後にある援助金などの事も考えるとこれから出来るだけ儂は赤マスに止まらなければならないな。
「何故……じゃ? 何故どれだけやろうとも、赤マスに止まれないのじゃ?」
約十分後、九月頃に目的地に着いた儂は楽しみだったムービーを見ながら、生気のない目でそう言った。何故だろうか? 二人が順調に借金を背負う中、儂は今貰った援助金のせいで3億円を持つ大金持ちになっていた。
[悲惨すぎて草]
[流石に草]
[あそこまでプラスイベントを回収するのは才能でしょ」
「……本当に哀れね、でもここからが本番なのだから頑張りなさい?」
「うぅ、ありがとうのう七尾ぉ……」
通常ルールだったら勝っている筈のこの状態、なんで儂は所持金が多いのにこんな惨めな思いをしなければならぬのじゃ?
じゃが、七尾の言ったとおりこれからが本番。目的地が遠ければ貧乏神が仲間になる。
そうだこれで勝負が決まると言ってもいい、さぁ次は何処じゃ?
負けたくないと思う儂の前の画面は進んでいく。目的地を決めるルーレットが遅く感じる程に集中し、そして選ばれたのは鹿児島。
「やった、儂の勝ちじゃ!」
一番遠い事でやってくる最高の神。今まで不運だった事もあってかやっと来てくれた救世主は、尻を振りながら煽るように現れた。普段なら叫んでそうだが、今回ばかりは何よりも代えがたい仲間であり、ずっと一緒に過ごしたとすら思えてくる。
「ふふふ、主は儂を裏切るなよ……これからずっと一緒じゃぁ」
「なんかママが闇堕ちしてませんか?」
「さっきまで酷かったもの、仕方ないわよ」
[また堕ちてるよこの鴉]
[ヤンデレ堕ちした鴉を見守る保護者とその息子]
[雪椿:どうしよう、私の子供のせいでネタに困らない]
[さらに保護者増えてない?]
[先生大丈夫? 薄い本が辞書みたいなってない?]
[今度はヤンデレ物か]
[息を吐くように属性増えるじゃん」
[性癖を司る神かな?]
「あっ母上母上! 儂に仲間が出来たぞ!」
ちらっと目を通したコメント欄には母の姿があり、仲間が出来た喜びから儂は仲間になってくれた貧乏神を紹介する事にした。
[てぇ……てぇ?]
[雪椿:今日も我が子が可愛い]
[めっちゃ笑顔で貧乏神と一緒にやってくる鴉様を幻視した]
[貧乏神いらない]
[急に貧乏神がいなくなって悲しむ鴉様が見たい]
[それで、三期生達に泣きついて欲しい]
[↑同士よ]
[主とはいい酒が飲めそうだ]
それに記憶通りなら今は九月で赤マスでの借金も増えていたはず。
何ターンかかるか分からないが、キングにこの貧乏神が変身してくれたら更に儂の勝利が近づくというものじゃ。ふふ、笑いが漏れてしまうな。
「ふふふ、さぁここから反撃じゃ。妖狐と鵺が鴉に勝てないという事を教えてやるかのう!」
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