【三期生コラボ】第一回三妖大戦~逆梨鉄編~【罰ゲームあり】その3

収益額  一年 

一位 浮世社長 6億7000千万円    

二位 つぐみん鉄人-4億5600千万円    

三位 七尾社長 -9億7600千万円  


 一年経過した現在のゲーム内での順位はこんな感じだ。

 儂らがいまやっている逆梨鉄だとそれが反転するので、今回の配信でのルールだと儂が最下位……何をやっても増える所持金、それについて考えると頭が痛くなってしまうが、まだ一年目が終わっただけであと二年残っている。

 双六というモノは元来最後まで何が起こるか分からないし、そしてランダム要素を加えただろうこのゲームの事ならそれは尚更。あと三年の間に逆転のチャンスはまだまだある――そして何より……。


「よし、僕のターンですね……ふふふ、やっと手に入れたこれを僕は使わせていただきます! お願いします!」


 使われるのは貧乏神を奪うための光になるかもしれない屯田兵カード。

 効果を見る限りこのカードは誰か一人を選択して北海道に飛ばし、そのまま一ターンを奪う最強カードの一つ。


「まあいいわ、今更奪われても問題ないもの……でも狐の恨みは恐ろしいのよ、覚えておきなさい」

「それ僕に言います? 七つの尾の妖狐程度が、鵺を祟れるとか思って欲しくないですね!」


 そんな言い合いの後に画面が進み、海外旅行を楽しんでいた七尾はそのカードによって飛ばされて、北海道の江差に辿り着いた。この攻撃を行う為に五巡もしてしまったし、七尾の借金が十億に達しそうになっているが、これでやっと喉元に噛みつくことが出来る。

 

[やっぱり熱いぞ、この配信]

[平安時代を代表する鵺と、式神の狐……この戦いどうなるんだ?]

[普通ならぶっちぎりで一位の筈なのに蚊帳の外の鴉様]

[もう、僕は鴉様がいじめられるの見たくないよw]

[「わぁー、十二月になったし赤マスの量が増えるのじゃ! ……なんじゃサンタかこやつ……え、儂に三億? この爺さん気前いい――――滅べ聖人! 二度と儂の前に姿を表すな阿呆!」]

[あれはもう……バグ]

[かつてあれほど妖怪を煽るサンタがいただろうか?]

[ぼん鴉、金を減らして、ドヤ顔だ]

[そしたらすぐに、お金がふえて、表情曇らせ、泣き顔だ]

[俳句と都都逸が混ざった!?]


 このカードが使われるまで、コメント欄に目を通す機械と化していた儂。偶然見てしまったコメントで12月に現れた髭の悪魔の事を思い出してしまい、さらに精神にダメージが与えられる。

 だけどやっと繋いでくれた鶫のバトン、それを儂が落とすわけにはいかないので、奪うために5の目が出るのを祈ってボタンを押す。


「1じゃな……まだ無理か」


[そしてここで参戦する鴉]

[浮世鴉参戦!]

[そろそろ貧乏神に戻る気がする……」


「出目は二……また赤マスね、それにこれは奪われるわ」

「よし! これなら奪えます! 僕は観光してるので、盟友任せましたよ!」


 カードを手に入れるまでに順調に借金を重ねていた鶫。そんな彼は駅に止まる度に、その駅がある県の特産品等を語るという事をさっきからしていた。

 盟友の借金が増えるのを見ながら、謎の知識が増えていくという状況にはツッコみたかったが、我慢した儂を誰か褒めて欲しい……あ、鶫が上野に止まった。


「あ、上野ですね――またこれ食べ物の話になってしまうのですが、ここらへんにとても美味しいとんかつ屋があるそうなんですよね! ちょっと気になって調べたのですが、写真だけで美味しそうだったんですよ」

「そうなのか? ……そうじゃ、今から儂が貧乏王を奪うから、成功したらそのとんかつ屋で宴でも開くのはどうじゃ?」

「いいですね! 勿論奪われた方が奢るという事で、七尾さんは首でも洗っててください!」

「それ私にメリットあるのかしら、流石に不公平よ」

「あ、そうですね。ならママが奪えなかったら二万円分はうまい棒でちゃんと返します」


[そんなにうまい棒はいらない]

[いやいいことだろそれは]

[いや待って欲しい、この鵺サラッと二万円分奢られようとしてないか?]

[神経が図太すぎる……]


「あ……奪えなかったのじゃ。一足りないのう。すまぬ鶫、あと儂にもうまい棒くれると助かる」

「……出目的に同じマスね。盗られたわ……勝手に決められた事だけど、今度そのお店には行きましょう? あと鶫さん、私に送るうまい棒の中に一本でも納豆味が入ってたら祟るわよ」

「アッハイ、二人に送らせていただきます。調子乗ってすいません!」


 儂が提案した事だが乗った鶫が悪いし、儂に矛先が向くのは面倒くさい。だから擁護せず今回は七尾側に回り、うまい棒を沢山手に入れることにした。

 それと七尾が同じマスに来たことにより、儂に今度は貧乏王が取り憑いてくれたようだ。


「いいこと尽くめじゃな!」


[提案した本人に一切罰がないのは笑う]

[十分罰されたからじゃない?]

[多分な、今までのが酷すぎた分きっと二人は優しくなってるんだろう]


 だけど奪った直後に貧乏王は、元の憎たらしい貧乏神へと戻ってしまう。

 それがちょっと残念だったが。ここから逃げ切れば勝てるかもしれない。そんな希望を持ちながら儂は、少しでもターンを回して借金を増やしていく作戦でこれから頑張ることにした。


「そういえば主ら、すごい今更じゃがタイトルの罰ゲームとは何じゃ? 梨鉄に関係あるような事なのか?」

「あ、それなら最下位の方にホラゲーをやってもらう感じになりますね。安直ですが、それが無難ですしね」

「ほらー? ……げーむ?」

「発音が完全にいまお爺ちゃんだったわね」

「あれもしかして、ママはホラゲ駄目な感じですか?」

「いや、ホラゲ……ゾンビが出たり殺人鬼に追いかけられるのは大丈夫じゃ……ただのう、幽霊が――苦手、なのじゃ」



 演技でもなんでもなく儂は幽霊が苦手だ。

 理由としては触れないし、急に出てくるし、何より祓う力とかないので凄い悪戯されるからだ。むかし恐山に遊びに行った時とか、本当に怖くて大妖怪の威厳とか全部吹っ飛ぶほどに騒いでしまった思い出もある。


[NEW:幽霊苦手]

[そしてまた属性が追加されたのであった]

[ちゃんちゃん」

[絶対勝ってくれつぐみん! 俺は鴉様のホラゲ実況が見たいんだ!]

[泣き顔鴉様が見たい!]

[負けたら絶対に許さない]

[つぐみん? 分かってるよね?]


 やばい、儂の負けが凄い望まれている。

 というか現在進行形で、儂が最下位じゃし本当になんとかせんと死ぬ。逃げなければ、そしてすぐに貧乏王になって貰ってグアムに飛んで、そこでデビルカードを沢山貰うんじゃ。


「あれ、僕に対する圧が酷い気がするのですが……まあ僕が負けるわけないので、応援しててくださいね、もし負けたらマリアナ海溝に沈めて貰っても構いませんよ!」

「ふふ、その借金で私に勝てると思ってるの? 5億も差があるうえにデビル達が私の背後にいるのよ? ほら、また1億失ったわ」


 適当にマスを進む七尾は、少しマスを進むごとに1億近くの借金を手に入れる。

 その効果は強すぎるがまだまだ希望はあるので、つぎの鶫のターンを見て見よう。


「秋葉原ですか……それならケバブですね! そうだ終わったら皆で食べましょう? 凄い美味しいケバブ屋知ってます! まあ僕ケバブ食べたことないんですが……」

「じゃあなんで知ってるのよ……まあいいわよ、行きましょう」

「おーけーじゃ、儂もケバブ食べたことないので楽しみじゃな」

「ですよね! 食べたことない食べ物って食べたくなりますよね! あ、そろそろゲーム内の僕もケバブ食べたっぽいですし、次はママのターンです」


[これが陽キャか……]

[仲いいなこの三人]

[大丈夫? ゲームの中のつぐみん無銭飲食してない?]

[食い逃げダイナミック]


 

「はい、ですから速く次の番が回ってこないと無銭飲食で捕まるのでお願いします二人とも!」

「それ進めない方が世のためじゃない?」

「大人しく捕まるのじゃ鶫」

「……あれ?」



収益額  三年

一位 浮世社長   14億3500千万円    

二位 つぐみん鉄人 -12億6300千万円   

三位 七尾社長   -64億8400千万円  

  

 三年目の総資産の発表。

 そこに映っているあまりにも堂々とした14億の文字。

 二年目は色々あったな……所持金を減らすために視聴者達に教えられた「隠れ金山」を購入したらイベントが起こって、6億3千万円を貰ったり……せっかく貧乏王に貰ったデビルカードをアオベゴンとかいう化物に捨てられたり、貧乏神がヒヨコになったり、そのヒヨコが赤マスを青マスに変え続けたり……。


「……なぁ、主ら? 儂ってなんじゃ? 儂だけ普通の梨鉄やっておるのか?」

「………………私達の仲間よ」

「そして僕のママですね!」

「主ら……こんな儂でも仲間だと思ってくれるのか?」

「ええ! 僕達はずっと仲間ですよ!」

「そうね、私も仲間よ……だから強く生きなさい」


 慰めてくれる仲間達の言葉、それは今の儂にはとても刺さって、自然と涙ぐんでしまった。ふっ、儂はいい仲間を持ったのじゃな。


[三期生てぇてぇ]

[皮肉かな?]

[いい話だなー]

[頑張れ鴉様]


「そうか……ならその借金を儂に与えてくれぬか? 仲間じゃろ?」

「それは無理ね」

「これ、真剣勝負ですよ?」

「絶対に蹴落としてやるから覚えとれ」

「望むところね」

「負けませんよ?」


 よし決別じゃ、ねじ伏せる。

 覚悟しろ阿呆共。


[流石に草]

[裏切りの先発組]

[知ってた]

[ギャグかな?]


 そうしてそのまま勝負は続いていき、儂に取り憑いた状態での貧乏神による変身。また王になってくれればいいが、それは運なのでどうしようもないだろう。ただ今はそれを信じて画面を見守るだけ。

 二年目の間に貧乏神は、儂に憑いてたときにピヨピー、鶫に憑いた時にはガンマン貧乏へと変身していて、今からの変身が最初と合わせて4度目となる。

 頼むから貧乏王へと変わってくれ!

 


「しっ! よし、これでいけるのう。あとはさっき願った理想を実現するだけで最下位は免れる! そしてそのまま勝利へと向かうのじゃ!」

「ちなみに盟友……その理想とはなんですかね?」

「え、かなり慎ましやかな理想じゃよ? ただ……グアムに飛んで、そこでデビルカードを沢山貰ってコメントで見かけた貧乏天原に向かうというとても慎ましやかで矮小なそんな望みじゃ……そのぐらい願わせてはくれないか?」

「強欲の化身ね、そんな事起こったら死ぬわよ?」

「まぁまぁ、今までのを考えるとあるかもしれませんね諦めないでください!」



[強欲の化身すぎてやばい]

[ドン引きされてて草]

[つぐみんそれフォローなってないよ]

[すぐに王を盗られそう(小並感)]


 壱兆円


「なんじゃ?」

「は?」

「まじ……ですか?」


 上から降ってくるその文字。

 初めて見る演出に驚いていると、過去類を見ないほどにコメント欄が加速して、大変な事になっているのが見えた。


[やりやがったこの鴉]

[望んだ以上のモノ手に入れてて草]

[初めて見た]

[草]

[笑]

[やってるわまじでw]


「浮世社長? 一兆円という言葉は美しいと思わないかね? 長き年月を積み上げて手に入れるそんな至高の大金――命を賭して、何代という年月を使い、手に入れる事が出来るかもしれない莫大な富……だが私は思うのだそれを失った時の輝きは手に入れた時よりも強いモノだと!」

「え、つまり!? マジか、マジなのか!?」

「兆と書いて兆しと読む――さぁ貴様へと破滅の兆しを見せてやろうではないか! 私が捨ててやろう、貴様の一兆円をなぁ!」


 浮世社長は一兆円を奪われた。

 少し短いそのテキスト、それを見た瞬間今までの苦労が報われるような気がして……自然と儂はこの最高神に感謝を捧げていた。


「感謝なのじゃ、主を認めよう……貧乏神の王よ」

「僕、今日歴史的瞬間をみたかもしれません。ママ貴方がナンバーワンです」

「これは、もう負けねせめてホラゲーをやらない為にこのまま頑張りましょう……でもおめでとう、この負けに悔いはないわ」


[完全に決まったな]

[これは伝説の回]

[絶対に視聴者増えるだろうなこれ」

[おめでとう]

[おめでとう]

[どこぞのロボットアニメかな?]


 もうこれからは消化試合、最高の仲間と共に儂はこれから借金まみれで観光しよう。

 そうだこの貧乏王というかけがえのない友と一緒に、食い逃げして勝利の美酒を楽しもうか……やったぞ雫、ホラゲーから逃れたのじゃ。

 そしてそれからも、儂以外の二人が熱い戦いを繰り広げ最下位争いをするなかで儂は旅立った王を見送り、とても穏やかな観光を最後の時まで堪能しよう。


「あと2ターン、長かった試合も終わるのじゃな。最後まで楽しもうか……あれ、なんじゃ? またイベントじゃ……運命の女神?」


[あっ]

[やめてあげて、本当にやめてあげて!]

[もう駄目だ腹筋がマジで死ぬ」

[おめでとうw]

[もう、休め……十分やっただろ鴉様は]

[黙祷]


「なんじゃ視聴者様よ? なぜ、そんな反応を? 運命というからには悪いこともあるんじゃろう? なぜ、そんなお通夜ムードになっとるんだ? いや、あの……主らもなにか喋って、くれぬか? 鶫? 七尾?」


 何故かあれほど勝利を祝ってくれたコメント欄と、白熱した戦いを披露していた儂の仲間達がそんな悲しい反応をしてきた。これはどういう事だろう、ここから先のテキストを読むためにボタンを押さないといけないのに、どうしても指が動かない。

 だけど枠的に進めなきゃいけないので、震えながらボタンを押すことにした。

 どうやら、運命の女神が浮世社長の上に微笑むようだぞ……なんだろう、もう嫌な予感しかしない。


「私は運命の女神! 浮世社長、今までの戦いを見ていましたがお困りのようですね! しかも! いつも持ち金がマイナスで、手の打ちようがないと思っていらっしゃいますね! だからここは私の力を使って、持ち金をゼロ……つまりリセットしてあげましょう!」

 


[あっ……もう、やめてあげて]

[煽っているよこの女神]

[このルールにおける邪神じゃん……クトゥルフに出れるだろうこれ」

[黙祷……よく、やったよ]

[過去一目が死んでるように見える]

[何も言えないな、これ]

 

「………………」

「あの……盟友? 鴉さん? ママ?」

「……………………………………」


 言葉が、出なかった。


「あの鴉さん? 本当に大丈夫? 表情筋が完全に凍ってるわよ?」

「………………のじゃ? あぁ、なんですか私の子供達ではないですか。何かありました? 私に何か用事でも……そうですか……今日は友達とゲームをしてきたんですね」

「あの盟友? 凄くいい穏やかな女性の声で急にそんな事を言われるとかなり怖いのですが、あれ……バグりました?」

「鶫さん……そっとしてあげましょう? もう、彼は戻って来れないの」


 こんな事ってあるんじゃな。

 凄い勉強になったのじゃ、1日の中で何度も大吉と凶を引き続ける事もあるのだなと……あぁ、なんて波乱万丈なゲームなのだろうな、梨鉄は……。

 最後のターン、二人は最後も赤マスに止まり……全てを失った儂は、最後の最後に「たいらのまさカード」を手に入れて、持ち金ゼロで勝負を終えた。


収益額  四年

一位 浮世社長 0円

二位 つぐみん鉄人  -34億8100千万円   

三位 七尾社長    -94億9200千万円  


  

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