わらしべハウス⑩
壮弥:(女装が趣味だということを悟られないためには可愛らしい名前にしたら駄目・・・。 男らしい名前、男らしい名前・・・!)
知識を総動員し考えに考えて出した名前がこれだった。
「シェアマッスル・・・」
その提案にこの場にいる者はキョトンとしていた。 それを代表するかのように鋲斗が聞く。
「シェアマッスルですか。 ちなみにどういう意図で?」
壮弥:(えぇ、意図なんて考えていないって・・・! とりあえず筋肉は男のイメージだったからっていうだけで・・・!)
「まぁ、いいんじゃないですか? オーナーさん」
困っている壮弥に助け船を出したのは瑠璃子だった。
「案外こういうのってインスピレーションが大事だと思うんです。 とりあえず父神家よりはいいし」
「どうして俺の提案は即却下なんだよッ!?」
突っ込む紺之介に鋲斗は頷く。
「分かりました。 それでは瑠璃子さんは何か提案ありますか?」
「えぇと・・・。 閃きで“わらしべハウス”はどうかしら?」
「わらしべハウス、ですか」
「プレゼント交換、結構面白そうだし定期的にやっていく感じだと分かりやすいと思います」
「なるほど」
「というか他に選択肢はなくないですか?」
「だからちちが・・・」
「それは論外だからッ!」
紺之介が割って入ろうとしたところを瑠璃子はピシャリと止めた。 それにこの場はシンと静まる。
紺之介:(瑠璃子ちゃんってもしかして母性というタイプじゃないのか・・・!? でも流石に父が神はマズかったか。 そんな名前、冗談でも付けたらママに怒られちゃう)
壮弥:(瑠璃子さんは結構気が強そうな印象だ・・・。 第一印象はそうは思わなかったのになぁ・・・)
そして壮弥もその名前に賛成したようだ。 シェアマッスルについて鋲斗が聞くと、改めて自分が何を口にしたのか理解したのか恥ずかしそうにしていた。
紺之介も父神家はないと納得し、瑠璃子の意見が採用されることとなった。
「じゃあ、それで決まりですね・・・」
「ちなみにオーナーさんはどんな名前を考えていたんですか?」
瑠璃子が尋ねてきた。 鋲斗としては名前くらい好きに付けたいと思っていたが、皆の意見を聞きマズいと理解していた。
―――“エターナルブラックフレイムサンダーフリーズハウス”よ、また来世で会おう。
「責任者である僕が付けるのもあれなので、みんなに決めてもらおうと思いあまり考えていませんでした。 それでは新生わらしべハウスのわらしべ交換再開としますか」
「分かりました・・・。 では、何かいいものがないか探しに行ってきます・・・」
「はい。 お願いします」
次の順番である壮弥は部屋へプレゼントを探しにいった。 しかしいつまで経っても戻ってこない。
「オーナーさん、壮弥さん遅くありませんか?」
「そうですね・・・」
「何かあったのかもしれません。 少し様子を見てきてもらえませんか?」
「分かりました。 行ってきます」
瑠璃子の言葉で壮弥の部屋へと向かった。 元々単なる一軒家だったこともあり、部屋には簡易な鍵を取り付けただけで普通の扉である。 ただ表札だけはきっちりかけてある。
新たな入居者が来た時にそうでないと困ると思ったのだ。
―コンコン。
ノックをしても返事がない。
―――まさか組織に暗殺でもされているんじゃないだろうな。
「壮弥さん? 入りますよ?」
心配になり扉を少し開けて飛び込んできたのは予想外の光景だった。
―――・・・誰だッ!?
現在契約者は紺之介と瑠璃子と壮弥の三人であるということはオーナーである鋲斗が一番よく知っている。 にもかかわらず、壮弥の部屋には知らない可愛らしい女の子がいたのだ。
もちろん部屋の契約者は個人のみで二人以上の入居は認めていない。 それでも見てはいけないようなものを見た気がして慌てて扉を閉めていた。
―――入居は一人用ということになっているし、壮弥にも確認済みだ。
―――でも、天使のように可愛かったな・・・。
部屋の外で困惑しているうちに壮弥の部屋のドアが開いた。
「あれ、オーナーさん・・・。 どうしました・・・?」
「いや、どうって・・・」
出てきたのは普通に壮弥だった。 部屋は全体を見通せる12畳程の広さに収納があるのみで、隠れるような場所はない。
収納に隠れるという可能性はあるが、そうすると先程壮弥の姿が見えなかったことがおかしくなる。
―――まさか、あの女性は・・・!?
壮弥:(オーナーさんの様子がおかしいけど、どうしたんだろう・・・? 何か考え事をする時は女装して気持ちを落ち着かせないとできないんだよね・・・)
「オーナーさん、これ次のプレゼントです・・・」
「あ、はい・・・」
「手帳よりいいものを探すのに凄く悩んでしまいました・・・」
渡されたのは時計だった。 金ではないと思うが、金色で細かな装飾が施されている小さな時計だ。 次が瑠璃子であることを考えれば間違いないプレゼントとなるだろう。
そのようなことを考えていたのだが、次の壮弥の言葉を聞いて仰天することになる。
「あと一つ質問なんですが“闇炎禁封縛”って何ですか・・・?」
「・・・ッ!?」
いきなりそう言って先程渡した手帳を見せてきた。 その手帳の側面には黒字だが確かにそう書かれていた。 書かれたインクは手帳よりも黒の度合いが弱いためか、傾けると光の加減で見えてしまったのだ。
「うぉぉぉぉッ!?!?」
「え・・・?」
―――まだ使っていないと思っていたのに、既にそんなところに細工済みだったのか・・・ッ!!
―――マズい、闇の封印が解かれる・・・!!
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