わらしべハウス③
瑠璃子視点
―――何、この初心そうな可愛い子!!
―――超タイプなんですけど!?
心が躍るも表情には出さず必死に隠しておく。
「初めまして。 一応大家で共同生活者の宙仁鋲斗です」
「はい。 よろしくお願いします」
―――って、この子がオーナーなの!?
―――お金も持っているとか最高じゃない!?
「部屋へ案内する前に少しだけ確認したいことがあるのですが」
「確認したいこと、ですか・・・?」
そう言われ家全体の簡単な案内を受けながら部屋へと通された。
―――管理人じゃなくて本当にこの人がオーナーなのよね?
―――高校生とは聞いていたけど、てっきり真面目で固い人だと思ってた。
―――アタシ好みとか超ラッキーじゃん!!
「電気代水道代ガス代。 全て込みで月7万円になります」
説明を聞きながら事前の話を思い出していた。
―――思えばこの家に住むのって、今のところ女子はアタシだけよね?
―――凄い逆ハーレム状態・・・!
―――でも決めたわ。
―――アタシはこのオーナーを絶対にゲットしてみせるんだから!!
―――ギャルはギャル男と付き合えばいい?
―――ギャルっていうのはね、ギャル男にはあまり惹かれないの。
―――惹かれるのは初心で純粋な男!
―――だって色々とからかうことができるし楽しそうじゃない。
―――他にアタシを狙う男がいたら先に謝っておくわ。
―――ごめんなさいね?
部屋も広くて申し分なし。 他に色々と賃貸物件を探していた瑠璃子であるが、同じくらいの部屋の広さで駅に近い物件となると、光熱費が別でも7万円ではとても見つからなかった。
「瑠璃子さんは16歳ですよね。 休日の日とかは何をなさっているんですか?」
「休日ですか? 休日はもちろん路上でダチとダべ・・・」
「ダべ?」
―――しまった・・・ッ!
―――つい、いつもの癖が・・・!
「と、というのは冗談なんだべ。 私は家事全般が得意なんだべ」
「あ、方言が出ちゃった感じですか?」
「そ、そうなんです! でも方言は止めたいと思っていて・・・。 だから秘密にしてもらえませんか?」
「もちろんいいですよ。 家事全般が得意だなんて家庭的で素晴らしいですね」
「できることならオーナーさんの役に立ちたいです。 洗濯や料理、掃除など私に任せてもらえませんか?」
「いいんですか? 助かります。 でも一人だと大変だと思うので僕も手伝いますね」
「ありがとうございます。 お優しいんですね」
―――危なッ!!
―――苦しかったけど、これでアタシの好感度は上がったわね。
―――さっきは間違えてギャルっぽさを出しちゃったけど、これでチャラになったはず!
―――アタシは純粋な男をゲットしたいからここへ来たの。
―――だからこの本性を晒すわけにはいかないわ。
―――逃げられるに決まっているからね。
ホッと一息ついているところに鋲斗はエコバッグを渡してきた。 これで買い物して来いということなのかな、と思ったがどうもそうではないらしい。
「ちょっとした試みで、入居者・・・。 僕も含めてなんですが、プレゼント交換をしようと思っているんです」
「なるほど、親睦を深めるためにっていうことですね。 で、これはオーナーさんから・・・?」
「いえ、僕は既に渡していまして、これは新しい入居者さんからのものになります」
更に聞くとわらしべ長者方式を取っているらしく、これより少しだけいいものを次の相手に渡していくのだと説明された。
もちろんわらしべシステムは再度自分のところへも来るため、出し損になるわけではないという話だ。
―――ちょっと面白そうね。
―――だけどこの花柄のバッグ、女の子は私だけって聞いていたんだけど・・・?
部屋へと通されエコバッグの代わりとなるものがないかを探す。
―――次の人がどんな人か知らないからなー。
―――って、アタシの持ち物はほとんどが派手でヒョウ柄のものしかないんだけど!
―――こんなものを渡したら清楚なアタシのイメージがヤベーって感じ。
―――何かマシなものあったかなぁ・・・?
探してもよさそうなものが見つからないため諦めて部屋を出た。
「買ってきて渡すっていうのでもいいですか?」
「うーん、そのために負担させるのも悪いですからね。 本当に何でもいいんですよ。 こう言ったらなんですけど、わらしべしていなくても構いません。
もし何か買ってこないと渡せるものがないのなら、後で言ってくれれば僕がお金を出しますけど」
「それはオーナーさんに悪いですよ! ちょっと待っていてください」
そこまで言われると買ってくるという選択を取りにくい。 多少のリスクはあるが、私物を出すことにした。
「これくらいしかないんですが・・・」
「素敵なスマホケースですね」
「ちょっと派手なんですけど、前友達にどうしてもって勧められて飾り付けをしたんです」
「自分でされたなんてセンスがいいと思います。 まぁ、瑠璃子さんにヒョウ柄っていうイメージはありませんでしたけど」
―――やっぱりそこを突いてくるのね・・・ッ!
「ざ、雑貨の福袋を買ったら付いてきたものなんです。 私は絶対に使わないからあげてもいいなと思いまして」
「福袋ですか。 確かにそれだと好みでないものが入っていてもおかしくはありませんね」
「で、ですよねぇ」
「温和そうで超可愛い子見っけ!! そろそろ俺も話に入ってもいいよな!?」
話していると紺之介が話に割って入ってきた。
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