わらしべハウス④
鋲斗視点
―――紺之介は人見知りしさなそうだな?
―――よく言えばフレンドリー、悪く言えば馴れ馴れしい、か。
瑠璃子:(うわぁ、何か来たよ面倒そうな人。 しかもチャラッ!)
「あら、初めまして」
「初めまして! 俺は紺之介。 今日から共同生活よろしくなッ!」
「えぇ・・・」
紺之介の迫力に瑠璃子は気圧される。 確かに共同生活ではあるが、そういうノリは求めていないのだ。
瑠璃子:(何この男!? いくら何でも馴れ馴れし過ぎない!? ギャル男とまではいかないけど本当に超チャラい。 確かに外見はイケメンだけどアタシの好みではないのよね。
そう、アタシの好みは・・・)
チラリと鋲斗を見る。 すると目が合い鋲斗は首を傾げていた。
瑠璃子:(やっぱりこの可愛いオーナーっきゃない!!)
―――さっきから瑠璃子の視線が刺さるな?
―――まさか前世で死に分かれた天使ちゃん・・・。
―――っていうわけじゃなく、紺乃介のノリに困っている感じか?
―――確かに瑠璃子みたいなのはあまり紺之介のようなタイプとは関わらないか・・・。
止めようか迷うも二人の会話はどんどん進んでいく。
「瑠璃子ちゃんの趣味って何?」
「趣味という程でもないですけど、家事は好きですよ」
「マジで!? 凄く家庭的じゃん!!」
「よく言われます」
瑠璃子:(正直コイツの好感度を上げてもアタシは何の得もないんだけど!? 寧ろアタシとオーナーの間に割って入られるのは邪魔ね・・・)
紺之介:(瑠璃子ちゃん超可愛いじゃん! しかも家庭的とかマジ!? 俺のタイプドンピシャ・・・。 まぁ、ママには勝てないけどな? これはもう瑠璃子ちゃんを落とすしかないでしょ。
この家には瑠璃子ちゃん一人だけが女子なんだ。 まぁ、今後新しい女子は増えるだろうけど。 だけど今は三対一。 早い者勝ちだ! 勝つのはこの俺!!)
紺之介はライバルになる可能性のある鋲斗をチラリと見た。 目が合い鋲斗はまたしても首を傾げた。
紺之介:(オーナーが一番の強敵だな。 こんな立派な家を持っているんだから・・・。 ぶっちゃけママの話だと土地だけで一億は軽いと言っていたし、高校生にして既に資産家っていうことじゃん。
ママは素敵で素晴らしい人だけど、シングルマザーで俺のことを一生懸命に育ててくれた苦労人だからな。 折角東京まで出稼ぎに来たんだから、頑張って金を稼いで仕送りもしたいよな・・・)
紺之介は実家で一人暮らしている母のことを思い、少し感傷に浸ってしまった。
―――紺乃介がこちらを見ている・・・?
―――まさか俺の秘密に勘付いたんじゃないだろうな!?
―――今会話が途切れたし、まさか実はかなり無理しているだけで人見知りだから助けてほしいとか?
―――助けてほしいなら俺に懇願すれば手くらい貸してやるけど。
各々が思考を巡らせているとインターホンが鳴った。
「誰だろう?」
「きっと最後の一人でしょう。 僕が対応します」
「ここに居間とかってあるんですか?」
玄関へ向かおうとすると紺之介に尋ねられた。
「ありますよ。 家の中の説明や役割は全員が集まった時にしたいと思っています」
「まぁ、その方が案内の手間が省けますからね」
「はい。 そのため今から三人目の方とお話する間はまだ自室から出ないでほしいのですが・・・」
「自室から・・・? オーナーがそう言うのなら分かりました」
「ありがとうございます」
―――紺之介は従順そうなタイプで助かったところだな。
―――もし言うこと聞けないっていうなら、鎖十字で張り付けないといけなくなる・・・。
―――もし俺の部屋に入ろうものなら、地獄の業火に焼かれるだろう。
「あと僕はずっと敬語ですが、紺之介さんと瑠璃子さんは喋り方を崩しても構いませんよ」
そう言って玄関へ向かい扉を開けた。 鋲斗は知る由もないことだが、廊下の奥にいる二人は新しい住民を観察しているようだ。 鋲斗がドアを開けると小動物のような青年が立っていた。
紺之介:(ほう・・・。 これは俺の完全勝利だな。 ライバルにもならないわ)
瑠璃子:(何かひ弱そうな子ね。 ギャル男ではないけどこれはこれでアウトオブ眼中ね。 初心過ぎて反応が面白くなさそうだもの)
「は、初めまして・・・。 如壮弥(ジョソウヤ)って言います・・・。 よろしくお願いします・・・」
どこか自信なさ気で物静かそうな男性だった。
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