19日目 不吉な一言
ん?なにか喋ったか?聞き逃すなんて、俺が臨床に集中できてない・・・だと?
いや、最近、白石さん関連で考え込んだりしてるからそうでもないか。なんかルーキーに戻ったような・・・はぁ、もう変にベテランぶるのはやめよう、重要なのはスマートさではなく患者さんにとって一番を提供することだ
とりあえず聞き返すか
「白石さんなにか言いました?」
「何も言ってないよ?それより、先生また考え事してたけど本当に大丈夫?疲れてるんじゃないの?」
「本当に大丈夫ですよ、私もプロですからね仕事には影響ないですからいつでもベストパフォーマンスだせます」
やけに食いつくと思ったら、もしかして治療をないがしろににされると思ったんだな。
それもそうか、患者さんは当たり前だけど病気を治療しに来ているわけで、実際治療をするのは俺なわけだから、その治療者が上の空だったら何やってんの?って思うわな
「そういうわけじゃないんだけど」
「もう問題ありません、集中しますから!
では、今日も続きからやりましょうか」
立場の違いで勘違いは進みむ。人間は自分が信じたいもの信じたいように解釈して理解する。きっとそれは言葉をつくしても生じることで今回の場合は白石楓は西城に彼女がいないと明言していないが、いないものだと信じ込み、西城は白石楓が話に食いつく理由を治療に専念していないことに対する不信感だと思い込んだ。
きっと第三者として聞いて居る人はこの勘違いを理解することができた。そう、例えば同じリハビリ室で別の患者さんを治療しているセラピストとか・・・その中でも特に西城と白石楓の関係が気になっている存在。
白石さんの治療が終わりリハビリの控室で一息ついていると
「先輩、転移ってご存知ですか?」
「どうしたんだ急に、そのぐらい知ってるぞ」
転移・逆転移というのは心理学の言葉でリハビリに限らず医療現場では患者と治療者の関係で使用されることがある。
転移とは患者が治療者に対して思う感情で、依存や愛着または敵意や攻撃行動などがある。例を出せば患者が治療者に恋することや依存的になってしまうことだ。
逆転移はその反対で、治療者が患者に依存的や愛着を持つことだ。転移の場合はその感情を利用して治療することもあるが、逆転移の場合、つまり治療者が患者に必要以上の感情を持った場合は距離を取ったり担当を変えたりすることがある。
なぜか、簡単だ。ほかの患者よりも優先したり必要以上の行為に走るからだ、例えば自分の連絡先を教えたり行き過ぎれば法に触れる場合もある。
転移が治療に利用できるのは好意的であればリハビリはスムーズいくことが多い、先生が言うならと積極的に治療が進む、しかしそこから適切な距離を保とうとしない場合、転移は逆転移を引き起こす。
「いえ、ご存知であればいいのです。」
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