12日目 思わぬ攻撃
さて、白石さんの病気がMSA-Cだったが、リハビリとして根本的に治療できるわけじゃない。たまに勘違いされることがあるのだがリハビリは魔法じゃない。リハビリをすれば確実に改善して体が元通りになる、そんなことはあり得ない
だが、しばしばそんなことを言う人が見られる。
なぜか、それはもちろん患者さんや家族からの希望的な意見と、リハビリをする側の無知によるものだ。
「っと、これ以上愚痴ってもしょうがないか」
西城は現状の理学療法士をはじめとするリハビリのセラピストの在り方について批判的な考えを持っている、それはひとえに誰のための医療を提供しているのか、という疑問からだ。
自分が勉強してきた中で、セラピストのセラピストによるセラピストための医療を提供している人が多かったからだ。だから時折、思考の中で批判的な考えになる。本人は全く生産性の無いことだとは思っても考えずにはいられないのだ。
「先輩」
思考の海から出た西城は後輩の京極に声を掛けられる。タイミングから見て俺の考え事が終わったのを見計らったのだろう。
自分じゃ分からないんだが、京極いわく俺が考え事をしているときは真顔の無表情になるらしいのだ。感情という感情が一気に抜け落ちるというか、顔見ただけで分かるらしい
どんな表情だよ!と思ったが京極から写真を見せられて、最初自分だと認識できなかったぐらいには豹変してたな
「ん?どうした」
京極は少しうつむいて
「昨日は配慮が足りないことを言ってしまいすみませんでした!」
ガバッと頭を下げる。
「ちょ、おい、京極!分かった、分かったから大きな声出すな!」
京極は控室の端まで聞こえるような大きな声で、それと今にも泣きそうな声で謝ってきた。
おいおい、朝からどうしてこんなにヘビーなんだよ、って、おい、もしかして泣いてるのか!?
なんで!?あ、昨日のことか!
俺は急いで京極をなだめだが、周りから見たら完全に俺が行き過ぎた指導をしているに用に見えたらしく、めでたく上司に呼び出されましたとさ。
別にいいんだよ?上司に誤解されるだけなら、誤解解けばいいし。だけど他の先生方に噂されるのはちょっと心に来る・・・でもそんな姿、京極に見せるとまた泣きそうだし
はぁ、切り替えて臨床するか!
そう思っていたら
「西城君~パワハラで後輩泣かせたらだめだよ~?」
だれがパワハラだ!!くそ、なんであの先生まで知ってるんだよ、てかそんな風に広まってるのか!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます