10日目 障害受容
白石さんは大泣きした後、少しバツが悪そうに謝った。
「先生、ごめんなさい。私、動揺しちゃってひどいこと言っちゃいました・・・」
「謝る必要はありませんよ、誰にも言えないのは辛いでしょうから、私には何でも言ってください、今日みたいに感情に任せてもいいです。腹が立ったなら腹が立ったと言ってもいいんです。中にはお前の話し方が気に入らんと怒られる人もいます、一番は感情を抑え込まないでくださいね、いつでも話を聞きます。」
白石さんの目をみて決して逸らさずに伝えた。
こんなくさいセリフでもシチュエーション次第では言えるもんなんだよな
「また私、ひどいこと言うかもしれないけどそれでもいいの?」
「ええ、構いませんよ。こんな言い方は変ですけど慣れてますので、それに一番つらいのは白石さんなのは分かっていますから」
病気を受け止めるまでには時間がかかる。白石さんはいきなり感情が爆発したが、医療業界には障害受容という考え方がある。
病気になったときにその病気に対しての向き合い方のプロセスが障害受容だ。
①ショック期:何が起きたか全く分からない状況だ
②否認期:病気から目を背ける
③混乱期:病気を理解しているが受け入れられない
④努力期:問題解決に向かって努力する
⑤受容期:病気を受け入れ前向きに捉えられる時期
すべてこの通りの確実に動くというわけではないし、必ず順番通りとも人間だから行かないことがあるが障害を受け入れるにあたってはこれらの状態になることは考えられる。考えれたら何がいいのか、簡単だ。セラピスト側の準備ができる、変に傷つくこともないし心の余裕ができる、余裕ができれば患者さんに何を言えばいいのか考えられる。
最終的には患者さんにとって一番いい行動がとれるわけだ。
「慣れてるって、いつも言われるんですか?」
本当に驚いた顔の白石さん。
「それは白石さん次第ですよ」
一瞬何を言ったか分からないような、ぼーっとして
「フフフ、先生って面白いですね」
面白い?そうだろうそうだろう、年下の女の子に言われて嬉しくないわけがないが、そんなのはおくびにも出さず
「ははは、ありがとうございます」
「先生、顔緩んでますよ?」
おっと、これは気を引き締めないとな!いや、仕方ないだろ!若い患者さんなんて滅多に担当しないんだからな
「さて、白石さん今日はどうしますか?気持ちの整理ができていないのであれば今日はリハビリやめてもいいですよ?」
「いえ、誰かといる方が気が楽ですし、一人で考える時間はたくさんありますから」
それもそうだ。病院は良くも悪くも自分と向き合う時間が長い。娯楽も少なく一人静かな時間が多く、病院にいるってことは体に自由が利かないところがあるから当然無茶もできない。そんな状況だと必然的に自分と向き合うのだ
「では今日も腕の調子を見させてもらって、気晴らしに少し歩きますか?ずっと部屋の中だと気が滅入りますからね」
「外歩くのいいんですか?私、病気でこけやすくなってるのに」
「最初に言いましたよね、僕と一緒だと大丈夫ですよ」
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