4日目 真実を見つけろ
初日のリハビリを無事終えたが俺の中には今日のリハビリがどこか引っかかっていた。
「何かおかしいんだが」
病院では基本的に午前と午後の臨床の終わりにカルテを記載することになっている、カルテには評価の内容やその日行った治療プログラムを書いたり、その結果の考察をしたりする。一般的によく使われているのがSOAP法と呼ばれるものだ。
S(subjective):主観的情報
O(objective): 客観的情報
A(assessment): 評価
P(plan): 計画(治療)
これだけ見ると難しそうに見えるが書くことは基本的に簡単だ、Sは患者さんが何を言ったか、例えば白石さんなら「腕痛い」とかだな、Oは検査の結果だな、今回でいえば痛みの評価をしたからそれを書く、AはSやOの結果からどんなことが考えられるかを書いて、Pでどんな治療するのか、足りない評価は何か書く感じだ。
いつも通り書いているときに違和感の正体に直面した。
「歩行は―――確かふらついていたな。理由は・・・」
ん?待てよ?
本人はギプスしたせいだと言ってたけど高齢者ならまだしも21歳の若者だぞ?仮に俺が今腕を固定したところでふらつきかといわれれば絶対にない、なのに白石さんはふらついて何なら俺の支えが必要だった。
それにリハビリの中で何度かふらつく場面に遭遇したのも普通であれば考えにくい、足が痛くてバランスを崩したなら庇うような動きがあるはずだ、だが白石さんは極めて普通の動きだった。
なにより、怪我が原因なら見抜けないわけがないし本人も痛いと声をあげるはずだ。
そういえば、こけた原因もよく考えたらおかしい。本人の言うようにつまずいてもブロックにぶつかりそうなら避けるなり手で支えるなり回避しそうなはずだが
・・・・おいおい、もしかして何らかの神経障害の可能性も含めてみていく必要があるんじゃないか
背筋がゾッとする感覚に襲われながらもSOAPのPの欄に評価項目を書いていく。
「先輩、大丈夫ですか?」
「ん?どうしたんだ」
この子は後輩の
「い、いえ、その、ずっと独り言を」
言いにくそうに京極が話す
「ああ、悪い。集中しているときの癖みたいなもんだから気にしなくていい、それよりも何か困ったことないか?」
「実は今担当してる患者さんなんですが・・・」
京極の印象は一生懸命だが空回りすることが多い、例えるならレースゲームでまじめにやっているんだが逆走し続ける見ないな感じだ。もちろん、そこに悪意はなくただただ本人にとっては一生懸命なだけなんだがなかなかゴールにたどりつけない
要するに不器用なんだ。
京極と話しているうちに白石さんについてのことは薄れていきその日は帰宅した。
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