2日目 信頼関係を大切に
「あ、えっと、よろしくお願いします。」
少し戸惑ったように、返事を返してくれた。
「確認のためにお名前伺ってもいいですか?」
一応初めてリハビリをするときはコミュニケーションが取れる場合は必ず本人確認をするようにしてる、まあ人によってはそんなのしないって人もいるかもしれないけど
「はい、
「白石さんですね、では今日からよろしくお願いします、白石さんは右腕を骨折されたと聞いたのですが今は痛みはどうですか?」
白石さんの右腕は包帯で巻かれて固定されていた。
「はい、今は看護師さんから痛み止めを貰ったので痛くないです」
骨折の基本的なリハビリの方針は骨折部の固定の期間は怪我した場所以外の機能を維持する、固定が外れれば徐々に動かしていき必要であれば筋力増強ををしながら元の状態まで戻す。これがざっくりとした流れだ。
「ということは今は薬がないと痛いということですね、白石さんたぶん看護師さんにも言われたと思いますが痛かったらすぐに看護師さんに言ってくださいね。
そういえばほかに痛いところとか怪我したところとかないですか?」
カルテにはこけて骨折したと書いてあったが、それが高齢者なら納得できるのだが20代でただ転んだだけで骨折するのはどうも考えにくい。だからと言って直接聞くのも怪我の重傷直後は話したくない人も中にはいるのでやんわり遠回しに情報収集をする。
セラピストの考え方にもよるが初日は基本的にコミュニケーションをとることに時間を使うようにしている、それは患者さんとの信頼関係、ラポールともいうがそれを築くことがのちのリハビリに大きく影響してくる。
例えば信頼関係をうまく築けれなかった場合、患者さんにもよるがリハビリを拒否することがある、逆に信頼関係を築ければハードルの高いことや新しいことをやるときに進めやすくなるというメリットがあるからだ。それによくも分からないうちに体を触られて何なら怪我した後に痛みが出るかもしれないのだ、関係性を築くもの大切だ、まあここら辺は考え方一つだからな、賛否両論分かれそうだが・・・
「実は転んで塀のブロックあるじゃないですか、あれに腕が当たってそのまま倒れちゃったって。なんか私ドジでよくコケるんですよね」
塀のブロックって・・・それにあたるって盛大にこけたんだな。
「そうですか。」
ハハハと笑う白石さんを見るとどうやら最初に懸念したような患者さんではなさそうだ、それにしてもそんなこけてドジで済ませるのか
「ほかに怪我したところはないんですけど、やっぱり腕が痛いのと動かせないのが困りますね」
お、ほら、この感じだよな。訪室してすぐは痛くないって言ってたけど今はやっぱり腕が痛いと自分から言ってくれた。この何気ない感じが少しずつ信頼関係を築く第一歩ってことだな、まだまだこれからだけどつかみは悪くないかな
「腕は動かせない意外には困ってることありませんか?多分、腕が痛いのと固定されて服が着づらいのと聞き手が右だと食事しずらいというのはあるとは思うんですけど」
「先生、見てもないのによくわかりますね!そうなんですよ、あ、あと普段こんなのしないから歩きずらいですね」
ん?歩きずらい?腕の骨折なのに?
もしかして足でも捻ったのかな?
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