あなたとの出会いに感謝と喜びを

山田カドラ

1日目 出会い

絵にかいたようなワンシーン。


病室に開いた窓、吹き込む風に揺れるカーテン、整えられたベッドの上に座る女性の姿があった。


「初めまして、西城さいじょう レイです。」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


「西城君、今日からこの患者さん担当してね」

「新患ですか、どんな人ですか?」

「上腕骨骨折、最近難しい方ばっかり担当してもらってたからたまには見やすい患者さんもいいだろ」


病院勤務を始めて3年が過ぎ上司からも頼られることが増えてきた、そのおかげか弊害か難しい症例を担当することが増えてきた。個人的には難しい症例を担当することは苦じゃない、むしろ任せてもらえたことで自信になるし勉強しようという意欲にも繋がる。

自分が勉強しなければ患者さんの人生に影響がでると考えたら当然と言ったら当然なんだがな


だから久しぶりの見やすい症例、上腕骨骨折というか骨折の症例というのは比較的に見やすい。見やすいというのは病気の症状自体が、言ってしまえば簡単なのだ。だからと言って患者さんにとっては大きな問題になる、要するに格別に何か勉強しないといけないというわけでなく今までの知識で対応できるというわけだ。


あとは患者さんのキャラクターに合わせてリハビリのプログラムを作り、骨折後は当然痛みが出るから注意しながら介入すればいい。


「えーと、新しい患者さんの名前は・・・白石さんか――――って21歳の女性!?」


入院患者で若い人は珍しい、今のご時世何なら50代の患者さんでもかなり若者扱いだ、70~90歳代が年齢層としては多い。高齢者の方相手だと息をするようにコミュニケーションを取れるし対応の仕方というのはプロであれば誰しも心得ている、多少の暴言や不穏行動なんかも経験してきているしうまくコミュニケーションも取れる。逆に言えばそれができないとリハビリできないなんてこともあるから必須のスキルだ。

だからなのか、逆に若い人、今回でいえば21歳だがそっちの年齢の人の方が対応が難しい。それに相手は女性だ、こっちはプロとして対応するが一歩間違えれば訴えられかねんからな、それこそ昨今、医者なんかはその立場を利用して性的なことをしたりして捕まってるしな。


「性格がヒステリックじゃなかったらいいけど・・・」


よくないとは分かっていても会う前から悪い想像をしてしまう、実際はあってしまえばそんな懸念は時間の無駄だと感じるのが大半だ、だが西城の性格上常に最悪を想定するためこんな思考回路になっている。


部屋に入る前に表札を確認し、深呼吸をして、ノックする。


中から少し高めの声が聞こえて「どうぞ」と入室の許可が下りた。


「失礼します、始めて西城レイといいます。本日からリハビリを担当することになりました。」

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