第75話迎える準備




ダークレイ城塞都市の大通りで、マーレさんの後に付いて行く。

右の道に入り更に左の道に入って、しばらくすると古びた宿屋へ到着。


「ここが格安の宿屋ですか?」


「手入れが必要ですが、それに見合った値段ですよ」


「部屋数は幾つですか?」


「大きな部屋が5部屋と一人部屋が15部屋あります」


ドアを開けるさいに、立て付けが悪くなったのか、ギシギシと開ける羽目になった。

入って直にカウンターがあり、右側が食堂で奥にキッチンが有った。

魔法コンロは壊れて使い物にならないし、食器類も破壊されている。

何か戦った跡の様に思えた。


「何があったのですか?」


「宿に泊まった客が盗賊だったらしく、ここの家族が殺されました。その騒動を聞きつけた見回り隊によって、ここで戦った結果です」


「成る程、訳有り物件ですね」


「2年前の事ですよ。結構有名な話で買い手が付かなかっただけです」


「ギルドに預けた金で支払います」


「お買いになりますか?」


「はい、買います」


一人部屋を2段ベットにすれば、30人が泊まれるだろう。

大部屋なら2段ベット6台を詰め込めそうで一部屋12人。

合計90人が泊まれる部屋を確保したことになる。

もしも、90人以上が来る場合は、その時に考えよう。


「今から、改築してもいいですか?」


「はい、いいですよ。手続きはしておきます。後で来て下さいね」


「わかりました」


マーレさんが帰ったので、早速作業を始めよう。

ドアをよく見ると蹴られた跡が付いていて、ドアが歪んでいる。

そのせいで立て付けが悪かったのか、【操作】で元に戻し【強化】を施す。

スムーズに開け閉めが出来るようになった。


キッチンに行き、魔法コンロを鑑定してどうすれば直せるか検討。

凸凹を【操作】で元に戻し、切れた配線を繋げる。

銅版に刻まれた文字を復元。所定の位置に魔石を載せ、スイッチを押すと徐々に熱くなりだした。

構造的には簡単な作りの魔法コンロ。

多分、俺らの世界では使えないかも知れない。


壊れた食器を、【操作】で合わせながら復元するが、パズル合わせの様に時間が掛かってしまう。

壊れたテーブルもどうにか元に戻せた。



その後、ソーラーパネルの設置や冷蔵庫も置き、キッチンはOK。

食堂のテーブルや椅子は、濡れタオルで拭くだけで使えるだろう。


2階へ上がり、ベットを収納。

我が家に戻って、簡単で丈夫な2段ベットを作れば、後は調査メンバーに任せればいいだろう。



商業ギルドに寄り、書類にサインをすると購入手続きは完了。


「マーレさん、ありがとう御座います」


「ハジメさん、宿屋を始めるのですか?」


「いえ違います。故郷の人間が近々やってくるので、その準備です」


「そうでしたか、本格的に商売を始めるのですね」


「そんなことは無いですよワハハハ」


・  ・  ・  ・  ・  ・


ホワイトハウス内の一室で、首席補佐官はPCを睨みつけている。


「首席補佐官も大変ですね」


「そうだな、取り合えず調査メンバーのスキル取得は完了した。後は例の男からの返事待ちだからな」


「その男は何者なんでしょうね」


「まあ、もうじき会えるだろう」



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