第74話荒れ狂う風よ、切裂けー
ホワイトハウスの一室で、主要なスタッフが集まっている。
「諸君らに集まってもらったのには訳がある」
「そんなに大事な用件でしょうか?べトナム訪問が明日に控えてます」
「君には悪いが大事な用件だ。異世界の事は知っていると思うが、その異世界へ簡単に行く方法が提供された」
「それは本当ですか」
「例の男から日本政府に打診があった。それに伴ない我がアメリカへ魔王討伐に向けての相談があった」
「だから国連への決議失敗に、怒りをあらわにしたのですね」
「しかし、軍を派遣する前に、調査グループを送りたい、その為選抜メンバーを独自に決めている。説明を頼む」
「お手元の資料に、選抜メンバーの詳しい資料が書かれています。私が直接会って合意を得たメンバーです」
主要なスタッフの中には、秘密裏に進められた事案に不満を見せる者もいる。
「このメンバーを中国へ派遣して、言語スキルを取得させる段取りに成っています。どうか協力をお願いしたい。国家の安全の為にも・・・」
「このメンバー表には、先のゲートの戦いで活躍したメンバーの半数が入ってますが、また魔物が現れた時はどうするお積りですか?」
「残った者で頑張るしかないだろう。しかも、正確な情報が必要だと皆も分かるね」
「期間はどれ程ですか?」
「それは私から報告します。1ヶ月を予定しています」
「長くはないか?」
「今、手に入っている異世界の情報を考慮しての判断です」
・ ・ ・ ・ ・ ・
滑走路に降り立ちながら、中国のよどんだ空が私達の困難な任務を暗示している。
私達、調査メンバーで若い私が、副隊長を担っているが、実質的には私に全責任が負ぶさっている。
ギルド内で唯一、光魔法持ちで回復魔法が使える。
メンバーの命は私に掛かっている。
あの人は、こんな思いで同行していたのだろうか、なんだか懐かしく思い出した。
「ミサキ、何をボーとしている。副隊長なんだから頑張ってくれよ」
「分かってます」
教授が震える手で、斬りつけている。
腰が入っていないので傷が浅く、魔物はギーギーと鳴き叫ぶ。
「教授、腰が逃げてますよ。手でしっかりと握り、腰を落として突きましょう」
突くだけなら、どうにか突き刺し仕留めた。
魔物を押さえていたローレンは、腕に浅い切り傷を負ってしまっていた。
私は手をかざし、回復を施した。
出血が止まり徐々に傷が塞がり、嘘の様に腕が回復をとげている。
教授は驚き、その腕を触りながら確認している。
「これは素晴らしい。わたしも出来るかね」
「教授、ステータスが出てますか?出ていたら魔法かスキルを取得しましょう。言語スキルがありましたか?」
「成る程、有った。これがそうなのか・・・?」
「どうですか?」
「風魔法と言語スキルを取得したぞ」
「それでは、次の魔物を風魔法で討伐して下さい」
「ちょっと待ってくれ、試しに使って見るから」
両手を空にかざして、「荒れ狂う風よ、切裂けー」
目の前の巨木が、2つに切裂けている。
「教授、何ですか先程の呪文は、呪文を唱えなくても発動しますよ」
「君は分かってないな、魔法と言えば呪文だよ、それはロマンなんだよ」
・ ・ ・ ・ ・ ・
我が家では、中国の遠征へ行けなかった従魔らが、俺を取囲む形で抗議してきている。
反省の意味を込めて、念話で魔石を配ることでチャラにしてもらう。
1体に2個の魔石を配り、受取った瞬間にも食べ出している。
何体かは、光り出し進化した様であった。
ようやく配り終えたので、中国で見た日本政府からのメッセージを改めて検討。
調査チームを先行して、状況を確認したいと言われると断り切れそうにない。
まだ日にちは決まっていないが、それなりの準備が必要だと思う。
どうしたものか・・・
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