第53話気になっていた事




俺は岡山の高校に来ていた。

あの魔王の記憶を頼りに、駅を出て歩いていた。


この道を右に曲がって、歩いていると見えてきた。

ここが通っていた高校なのか?

校庭も黒く染まった部分が多く見られた。


見上げると、窓ガラスが無残割れていて、割れなかった窓だけがキラキラと輝いていた。


学校内に入った瞬間に、なんとも言えない悪臭が臭ってきた。

ハンカチで鼻と口を押さえながら、更に入ってゆく。

多分、この学校だろう。


3階へ上がる途中でも、黒い染みが見られた。


この教室が奴が通っていた教室らしい。

そして、奴の彼女も通っていたのか?


急に怨念のような意識とリンクしてしまう。


・  ・  ・  ・  ・  ・


「おはよう」


「おはよう、彼とはどうだった」


「内緒よ」


あれ、彼は休みなのかな・・・

何故、でないの・・・ラインの返事も全然ない。


昼前の校庭から悲鳴が聞こえてきた。

わたしは立ち上がり、窓から見ていた。

大きな犬が生徒を襲っている。


うそ、嘘、そんな筈は・・・


「先生!犬が人を食ってます」


彼の親友が言った言葉で、わたしは、悲鳴を上げてしまった。

一生分の悲鳴を叫んでいた。


先生は、それを見て。

教室から飛び出していた。


わたしは、恐ろしかったが皆につられて、窓から見ていた。


バットを持った教師が、犬にバットを振り下ろしたが、かわされていた。

そして犬は、教師に首に噛み付き、引き千切った。

そして、その頭部を「ガブッガブッ」と2噛みで喰らっている。


わたし以外の女子が悲鳴を上げている。


「逃げよう、ここにいては喰われるぞ」


全員が動き出した。


「ダメだ、すでに廊下は占領されている」


「逃げ場がないぞ」


「石原、何をしている」


「窓から逃げるんだ」


そう言って、飛び降りていた。

やはり足が動かせない。2体の犬が叫ぶ石原の腹を食っている。

惨い叫び声がが、続いている。


「バリケードを作れ!お前、机を持って来い」


ドアや窓をバリケードで塞ぎ、開かないように押さえつけていた。

廊下の窓に血しぶきが、赤く染めて滴り落ちている。

ドアが吹飛び。

バリケードも一緒に吹飛んでいた。

1人が襲われ、また襲われていた。


ついにわたしの番だった。

どうして助けに来ないの、どうして・・・



・  ・  ・  ・  ・  ・  


悪夢から覚めた思いだ。

あれは何だ、夢なのか?

違うだろう。最後の意識の怨念が見せた。

普通なら見る事も無かっただろう。

しかし、俺も何度も意識に触れることで、その意識レベルで繋がるようになったのか?


俺の何が見させたのだ。

 

あ!彼女が見えた。

今までは、彼女目線だったが、本人の姿だと・・・

ものか悲しそうに、話しているが何故か聞こえない。


「何が言いたいんだ」


彼女の顔に、涙がぽつりと落ちた。

そして、彼女に姿は見え無くなった。


あんな悲しい顔は、見たこともなかった。

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