第9話神戸への道のり2



静まり返った夜に、家の明かりは消えているが街灯だけがともっている。

そんな風景を俺は、窓のカーテンのスキから注意して外を見ていた。

21時過ぎ頃だろうか、外に出しているシアンから警戒の思念が送られてきた。


「魔物がやって来た!数が多いので俺が打って出るから、佐藤さん後は任せた」


佐藤さんは俺の単独行動を危ぶんだのか「私も行こう」と言ってくれたが、俺はこの申し出を即座に切り捨てた。


「申し訳ないが邪魔です。守って戦う程、余裕はありません」


それを聞いていた人達は、真剣な表情になった。

俺はバリケードを崩して外に出た。

数は多く、80体以上いる事は分かっていた。

俺1人で戦いに勝てるのか不安でもあったが駆け出した。


何としても阻止しなければいけない。

トップスピードでブラッドの集団にぶつかる前に風魔法の【風斬】を発動。

1発で5体程、斬り裂いている。

そのまま刀で斬りつける。刀には【強化】を掛けて強くしている。

やはり住宅街では、俺の植物魔法と土魔法は分が悪い。

使えそうな植物も少なく、下はアスファルトで固められている。

使えるのは風魔法の風牙・風斬だけ。

【竜巻】が使えれば集団戦には便利なんだが、アイツラは魔法を使わせないよう攻撃をゆるめない。


「舐めるなよ俺をー」


高校時代に剣道をやっていた事に感謝だ。

気配探知で後からの攻撃も見えていた。

振り向きざまに斬り上げて切断。そのまま横からの攻撃を足さばきでかわす。

そして上段から斬り下げた。

遊びで覚えたフェンシングの突きが炸裂。

怒涛の突きが、面白いほど決まり数を減らす。


次第に攻撃が激しくなり。1時間の死闘の結果倒しきった。

ここからが又大変で腹を裂き魔石を取り出す作業が待っていた。死体は土のある家まで引きずり魔法で土に埋める。

入った家からバッグを探しだし、魔石を詰め込むとスマホで時間を確認。

23時過ぎと表示。そろそろ皆が居る家に戻らないと心配しているだろう。


ドアを叩き。


「大丈夫です。片付けました」


ガタゴトと音がしてドアが開いた。

そこからミサキが飛び出し、俺に抱き付いてきた。

そしてミサキはしがみついたまま泣いているが、俺はドキドキと胸が高鳴り足がガタガタと震えていた。

刺された記憶がよみがえり、俺は今にも倒れそうになっていた。

高木さんがミサキをあやしながら、奥へと連れて行った事で何とか持ちこたえた。


佐藤さんが目の前へ来て。


「顔が真っ青だな、シャワーを浴びろ。血だらけになってるぞ」


俺は自分の全身が赤くなっている事にようやく気付いた。

渡されたバスタオルでまず体をぬぐう。

風呂のシャワーで全身に浴びていた血を洗い落とし、赤かった床がすべて流されていったのを見て、ようやく安堵した。

出ると服が用意され、それに着替えた。


そして佐藤さんがやってくるなり引張られ、部屋に案内された。


「ご苦労だった。ゆっくり寝てくれ」


そう言うと出て行った。


布団が敷かれていたので、寝転ぶとすぐに睡魔に襲われ、眠り込んでしまった。



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