粉塵

砂埃と共に、大量の石が飛んできた。

眼前に石が迫る。

白い光がそれを弾いた。


「もうバレてんのか」


メキメキと、床から音がする。


「な、なにこれ」

「大丈夫。陸恩のだから」


床板を割って太い幹が飛び出してきた。

私と翔を抱えあげる。


「とりあえず最優先で守るのは優だろ? これで大丈夫だ」

「まぁ、危ないのは危ないけどな、石はここまで飛んでくるようだし。とりあえず陸恩に任せようかな」

「そうだね〜」


隣にも同じように大木に抱えあげられた海未がのんびり座っている。


「まぁ、大丈夫でしょ。ほら、終わったよ」

「え?」


見ると陸恩の周りの木の根が見たことも無い男二人を拘束している。


「このまま外出るぞ」


木が穴から外に出る。うねる道路に出た。


「さっきもこのスピードで倒せたんじゃ……」

「いや、あそこは地上から離れているからこんなに早く木の根を出せない。ここは地面に接しているから直ぐに木の根で対処できるんだ」

「そうなんだ……」


魔法にも条件があるらしい。私の力も条件があるのかしら。

木の根が私たちをそっと地面に置く。地面はふわふわしていて変な感じだった。


「とりあえず車乗ろうか、私の車呼ぶからちょっと待ってて」


海未がすかさず手を上げる。何か電波のようなものを出しているのだろうか。


「いや、ここに呼ぶな、このままここにいたら他の奴らに見つかる。あんな二人だけで来てると思うか?もっと敵はいる」


その刹那、石が頬を切る。刺すような痛みによろめいた。


「優! 怯むな!!」


すかさず翔は白い光を辺りに放つ。


「海未! この先600m先に駐車場がある! そこに車を呼べ!」

「うん」

「よし、走るぞ!陸恩!」

「ああ」


私は陸恩に抱えあげられて運ばれる。後ろを見ると、十数人が私たちを追いかけてきているようだ。

石が大量に飛んでくる。翔はそれを一つ一つ弾いていく。

私も、私も戦わなければ。

死んでしまう。

目をつぶり、空中に手をかざした。雷を思い浮かべる。石ひとつひとつが電気を帯びて、塊になって、もうこちらまで飛んでこないように。


「あっ……! 馬鹿!」


ガツン!と大きな音がして、目を開ける。

目の前は大きな岩が転がっていた。


「な……なにこれ」


海未が絶句している。


「あ……磁力か……」


無意識のうちに磁力を放っていたらしい。それが石に含まれる鉱物をひとまとまりにしたのだろう。


「なんでもいい!とりあえず走るぞ」


陸恩がスピードをあげる。

二人もそれについて行くように走った。

翔がはぁ、とため息をついたのが見えた。

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