後先
「とにかく動いた方がいいと思うんだ。多分、兄貴はここをすぐに嗅ぎつける」
「でも……どこに……」
海未が両手を忙しなく胸の前で指を回している。
「僕の考えでは、兄貴の本拠地に乗り込んで兄貴を叩こうと思っている」
「わざわざ飛び込んでいくのか?何のために?場所も分からないのにか?」
「うん、場所は検討をどうにかつける。あいつはあれでも警官だからな。探知されないよう細心の注意を払っているだろう。だがおそらく自分のテリトリーの中に隠れ家を持っているはずだ。これは根拠がないが、僕だから分かる。ずーっと兄貴を見てきたから」
「戦う理由は」
「元を叩かなきゃこっちがやられる。容赦しないやつだから、兄貴は」
「そうか」
陸恩は黙り込んだ。
腕を組んでソファに座る。ハナは私の足から離れて陸恩に駆け寄る。
「でも……!それでも危険なのは変わりないよ!せめて優ちゃんは巻き込まないで……」
「今更何言ってんだ。今置いていけば優は殺されるか、兵器として研究対象になるに決まっている。だから、無理だ。もう優は闘うしかないんだ」
「でも……」
「私は覚悟できてます」
皆がこちらを向く。
「まぁ、優は多分大丈夫。強いから」
「強い……?」
「うん、強いから兄貴も欲しがっている。そもそも魔法は想像力が大切だって言う話は聞いたね?想像力は魔力を出したい形に放出するのに大切なことなんだ。その中で、この世に存在しないものは凄まじい魔力と想像力が必要になる。新しいものを作り出すからね。けれど優は違う。別の世界にしかないものを知っている。聞いた限りある程度の原理は同じような世界の。と言うことは、優の作り出す力は、この世に容易に存在することができる方法を持ち合わせていて、かつ、この世の誰も知らない力だ。多分強い。魔石をちゃんと使いこなさないとだけどね」
「そんな力が……?」
「ある。僕の考えだと、電気が一番良いんじゃないかなと思うんだよね。ほら、ちょっとやってみて。手を前に出して想像してご覧」
私は手を出して手から雷が落ちるのをイメージした。
バチン!という大きな音と閃光と共に、床に穴が開いていた。
海未は両手を口に当てたまま動かない。陸恩は口をあんぐり開けている。
「ほらね?強いでしょ」
「一発目からこれなんて……この力を世界征服に利用されたらたまったもんじゃないわ」
「これ……強いの……?」
「すごくな、しかも初めて使ったんだろう?手の痺れは?身体の痛みは?」
「大丈夫です……」
「これは狙われるはずだな。そもそもこうやって戦いに転用する魔法を使える奴も少ないしな。それにあれは何だ……?雷……?」
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