30年目に知った美談の真相

絶坊主

第1話

仕事で関西に数日間出張に行った時の事。



その内の1日の夜、急に大阪にいる友人に会いたくなった。



私は、高校の時、京都の高校に通っていた。



まぁ、ただ単に、暇で暇で仕方なかっただけなのだが。



「おう、K!久しぶりやの~!お前、どこ住んでるんやったっけ?」



K・・・私の仲良しグループ(4人)の一人



「はぁ~?今から来るんけ?お前、いつも急やねん!」



そらそうだ、夜6時半。



前もって電話してたらいざ知らず、突然の℡。



家族持ちなら夕食の準備をしている時間。



相手の奥さんに嫌われる友人代表みたいな立ち振舞いというのは重々承知の上。



早速、聞いた住所をナビに打ち込んだ。



仕事で寝泊まりしている場所は兵庫県。



そこからの距離58キロ・・・なかなかやな。



まぁ、どうせ暇やしエエか。



自分を納得させ、出発。



高校の時から、いまでも交流が続いている友人たち。



私のプロボクサーとしての最後の試合。



勿論、負けるつもりでリングに上がるボクサーはいないけど、あまりにも負ける材料が多かった試合。



「俺の最後の散り際、見に来てくれ!」



わざわざ関西から、香川県に足を運んでくれた3人。



「お~、お前、死なんで良かったな~!」



控え室に来た3人と笑い合った。



リアルアンパンマン並みに打たれながらも、最後までリングに寝るのを拒んだ。



試合に負けて笑っていたのは、あの試合が初めてだった。



それだけ自分の全てを出しつくした試合でもあった。



だから、悔いなんて一滴も残らず出し尽くし、笑い合えたんだと思う。



残りの2人にも集合をかける。



F工業の御曹司F。



こいつは独身やから、断る理由がない。



「Kの所に集合な!」



マウント気味に言う私。



「お前、いつも急やねん!」



そう言いながらも、声色は喜んでいる。



残りはO。



こいつは前科持ちの頭いっちまってる奴。



「お~コブシ、お前生きとったんか~!今から?俺、アカンわ!明日、クレーンで伏見稲荷の鳥居持ち上げるから朝めっちゃ早いねん!」



「へ~前科持ちが神社の鳥居持ち上げてエエくらい更正したんやの~!」



なんか安心した。



結局、2人と落ち合う事に。



“しばらく会わなくても、再会したときには昨日の続きのように話ができる相手”



確か、江原啓之さんが親友の定義でこんな事を言っていた。



ホント、そう思う。



Kの近所のファミレスに行った。



私には一つ確かめたい事があった。



高校生の頃。



全校生徒20人弱の島の中学校から、京都の1クラス40人くらいのマンモス校へと行った私。



ナメられないよう体だけは鍛えたおしていた。



ある日、クラスの中で腕相撲誰が一番強いか?選手権大会が始まった。



男子校だったので、男ばかり。



そして、休み時間に腕相撲が始まった。



鍛えていた成果が出たのか、私と、柔道をやっていたIという奴二人が最終的に残った。



Iはタッパもあり、体付きも、いかにも柔道やってます!みたいな奴だった。



そして、腕相撲クラスナンバー1を決める対戦の結果は・・・



どっちの手か忘れたけど、片方では勝って、もう片方は負けるという五分という結果。



私は、それが悔しくて、心を入れ換え夜遊びを卒業した高校2年の半ばから、学校の近所にあるフルコンタクト空手の道場に週2、ボディービルジムでウェイトトレーニングを週2というハードトレーニングを1年間続けた。



そして、高校3年のある日。



五分の相手Iと決着を着けるべく、久しぶりの対戦を申し込んだ。



親友のKだけを立会人にして、3人だけという場所で。



というのも、勝つ自信が相当あったので、皆の前でやってIに恥をかかせては可哀想という武士道的な考えがあったから。



まぁ、完全な自己満だけれども。



果たして勝負の行方は・・・



見事、Iに勝利し、クラスナンバー1となった。



ただし、それを知っているのは3人だけ。



・・・という思い出があった。



でも、何となく、そんな男前な事、現実にするかな~?



ホンマは、自分の中で美化して、想像と現実がごちゃ混ぜなってんちゃうかな?っていう疑問を30年間持っていた。



「・・・っていう記憶があるんやけど、そんなんあった?」



Kに聞いてみた。



「お~あったあった!そんな事あったな~!」



あっさりKが言った。



あ~、よかった-!想像じゃなかったんや~。



私が、ほっと安堵の胸を撫で下ろしていた時。



「実はな、その話には続きがあんねん。」



「えっ、続き?どういう事?」



私は、恐る恐る聞いた。









「実はな、腕相撲終わって、帰り道、Iが言ってん。「コブシ、必死やったから、わざと負けてん。」って。」








えっ、わざと?ウソやろ?








私は耳を疑った。







「お前、めっちゃ必死やったやろ?Iが情けかけたんやろ。」



「いやいやいや、男と男の勝負やで!八百屋入れたらアカンやろ!」



私は、納得がいかなかった。



と同時に、この上なく切なさが込み上げてきた。



まさに一人相撲だったという事か・・・うまい事言うてる場合か!(笑)







・・・ちょっと待てよ。







もしかして、最初の対戦の時も・・・おい!石田!それはアカンやろ!







あ、名前出してもーた。(笑)



なんか複雑な夜だった。


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30年目に知った美談の真相 絶坊主 @zetubouzu

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