第21話 グッピーの実験

 ミサキと会話した。授業でグループを作り、女子二人と会話した(そのうちの女子一人は来なくなった)。


 なんとか二人の女子と交流した。本命はミサキなのだが、高嶺の花過ぎて手出しができない。ハカドルにミサキを落とすほどの覚悟も自己肯定感も経験値も持っていなかった。相手は年収700万で資産1億越えの化け物である。今のハカドルでは、釣り合わない。


 まず童貞を卒業したい。そして、ミサキの攻略に移りたい。


 25歳と18歳。7歳差だ。世間でいうとちょっときつい。ハカドルが高校生の時、ミサキは小学生だったのだ。逮捕、たい~ほ、である。


 ロリコンとなじられようが、本命のミサキを落とすため、覚悟を決めて恋愛工学にすがった。女子とある程度、話せるようになると、今度はデートである。プロセスを踏んで、段階ごとにどんどんステップアップしていく。


 女子三人目にマッチングアプリでアプローチをかける。


 と、と、と。ここで、読者の方から疑問が出るかもしれない。なぜこれほどまでにアプローチをかける人数を増やすのか? ミサキ、授業で同じグループの女子、の二人だけで十分ではないか? と。


 全然違う。恋愛工学では、モテるやつほどモテるようにできている。


 ここでグッピーの話をしたい。


 水槽にAというグッピーとBというグッピーを入れる。Aはイケメンのグッピー。Bはブサイクのグッピー。グッピーという魚の世界にも、イケメンとブサイクは存在する。ここにCを入れる。Cはメスのグッピーだ。すると、どうなるか? 答えは当然Aのグッピーが勝つ。AのイケメンとCのメスは交尾し始める。


 次に面白いことをする。


 A、C、Bと水槽に透明のしきりをする。相手の姿は見えるのだが、しきりで移動できないようにする。左にイケメンのA、真ん中にメスのC、そして、右にブサイクのBを配置。しきりを外せば、Cのメスは当然Aのグッピーに行く。それでは面白くない。なので、しきりを外す前に、水槽に違うメスを投入する。Bのブサイクだけにメスを与える。Bのブサイクと違うメスは交尾し始める。その様子をCのメスにずっと見てもらう。


 ここで実験。Bのブサイクのグッピーに、十分、まじわってもらった後、しきりを外すとどうなるか? なんと、CのメスはAのイケメンよりもBのブサイクを選び、交尾し始めるのだ。


 この実験でわかることは、『メスはイケメンだから好きになるのではなく、まわりからモテているオスの姿を見て好きになる』ということ。


 グッピー理論を活用すれば、ブサイクなハカドルでもイケメンに勝つことができる。つまり、複数の愛人を囲い、ミサキに求愛すれば成功率があがるのだ。


 本にはこう書かれていた。実際にモテなくても、モテる雰囲気を醸し出せばいいんです。そして女友達をたくさん作りましょう、と。


 非モテコミットを解消し、グッピー理論で、女友達をたくさん作る。モテスパイラルはさらに加速し、ブサイクでもモテスパイラルを形成することができる。恋愛工学の神髄だった。


 最初の目標は童貞を捨てること。加えて、三人から五人ほどセックスの経験を積んだ方がよい。そして、ラスボスであるミサキに挑む。


 ミサキはハカドルの上位互換だ。ミサキは師匠、ハカドルは弟子なのだから当然かもしれない。今までのハカドルだったら、ミサキとデートになると、緊張でパチンコに逃げてしまった。しかし、本を読み、行動に移し、童貞を捨てたハカドルならば、どうだろうか? ワンチャンあるかもしれない。もしミサキがダメでも非モテコミットにならず次の女を狙えばいい。ミサキを攻略するためにした努力は決して無駄にはならない。


 恋愛の本を読んで、こんな意見もあった。


『決して告白をしてはならない』


 告白はギャンブルと同じだ。また、告白はアジア圏の文化であって、アメリカなどでは告白せずに肉体関係を持つ。告白は言ってしまえば、非モテのやることだった。もし告白をするのならば、99%勝てると自信を踏んで、告白しなければならない。童貞のハカドルは、過去、失敗率100%の告白を三回して全部振られたことがある。


 告白は二度とやらない。好きとか嫌いとか恋人になる前に、ベッドインする。そう誓った。


 非モテ童貞の取れる戦略といえば、こんなところだろうか。もちろんお金を使って風俗に行くという手段もある。しかし、それは最終手段だ。7万円も払えば、高級娼婦を買えるだろう。グラドルなみのボンッキュッボンとやれるかもしれない。だけれども、夜のお店は最後の切り札だ。童貞を守ってきたハカドルは、謎のプライドを持っていた。30歳までに童貞を守れば魔法使いになれると信じていた。だから童貞と馬鹿にされてきたのだけれど、夜のお店に行かないだけで、かなりのお金が貯まる。


 風俗は最後。まずは素人狩りで力をつけたかった。


 女の嫌うランキングのトップ3は、風俗、エロゲ、ギャンブルである。ハカドルはエロゲとギャンブルをしている。残りの風俗は、30歳までの楽しみに取っておきたかった。だって、魔法使いなのだから。風俗、エロゲ、ギャンブルのコンプリートは、30歳までの楽しみ。もし30になれたなら、存分に風俗を堪能してやろうと思った。


 ハカドルは三人目の女性にアプローチをかけるためマッチングアプリに登録した。彼女を作るという裏目標を達成するため、※正確にはミサキと付き合うため 行動力の鬼と化した。

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