第5話 大学のスローライフなんて優しい世界は大学五年生の留年には存在しない

 ギャンブル依存症の相談をしてミサキは帰っていった。これから毎日くるらしい。時刻は午後五時をまわっていた。明日は、基礎情報の授業がある。ハカドルは、夕食の準備をしようと東金沢の駅の近くにあるスーパーに向かった。手元には、数百円と現金のみ。金は全部、ミサキに取られた。


 これが新手の詐欺なら話は面白い。しかし、引きこもり救出作戦は、政府公認の大きな仕事で、ニュースで何度も放送されている。現在のニートや無職に大きな影響を与えている。何せ、普段喋らないような若い女子と会話できるのだ。こんな夢のようなことはない。しかし、本当に効果があるのか。精神科医も手を焼いた患者を、この世界の女子高生は知識無双で救っていくのだ。


「本当に……効果があるのだろうか……」


 話を元に戻す。ハカドルは、スーパーで買い物をして好みの明太子を買った。家族連れやカップルを見るたびに懐かしい気持ちになる。一年生の時は、女友達と一緒に買い物をした。もちろん友達以上の進展はなかったけれども。でもすべてが夢心地だった。最悪の今だが、大学四年間はそれなりに楽しかった。パチンコにも毎日のように言ったし、エロゲも楽しんだし、小説を読んだり書いたり、楽園だった。


 今は、どうだろうか? もう大学に知り合いはいない。准教授、教授からは腫物を触るような扱いをされている。最悪だ。


 大学生活は楽しいと思うかもしれない。しかし、それは順風満帆なやつに限る。いわゆる陽キャでリア充のやつには最高かもしれない。大学にいれば彼女は自然とつくれる。サークルや部活に入り、ウッフキャフフな毎日を過ごせる。


 勉学が優秀。友達と旅行。彼女とお泊りデート。私大文系は、陽キャでリア充の集まりだった。一方、ハカドルはどうだろうか。典型的なキモイオタクで、非リアだ。彼女はいない。大学生補正で女友達を作ったことはあったが、今となっては過去の遺物。いないも同然。さっき、ミサキと話して、約3年ぶりに女子と会話した。


 みじめな人生。スーパーから帰り、一人暮らしのアパートに戻る。アパートの家賃は親に出してもらっている。ハカドルは屑だ。まさしくドラ息子。最悪だ。ストレスで胃と心臓が痛くなる。


 大学四年間は楽しかった。留年して五年目は最低だ。


 一人で鬱屈としながら寝て、目覚ましで起こされ、教室に早めに行くのは気が引けたので、図書館で時間を潰し、大好きな小説を読み、誰とも話すことなく授業を受け、午前中で帰ってくる。この後の日課は、パチンコに行く事だったが、ミサキにお金を取られているので、行くに行けなかった。だからYouTubeを見た。


 生産性のない毎日。就職は絶望的。もう死にたかった。いや、死にたくはないけれども死ぬほど絶望していた。未来に希望を見いだせなかった。


 友達は誰もいない。故郷の友達は働きながらリア充な生活を送っている。いや、それはもう、友達とは呼べないのかもしれない。小学校の友達も中学校の友達も高校の友達も大学の友達も、もうないに等しい。結局、親友など存在しないのだ。


 ハカドルはYouTubeを見るのをやめて横になった。希死念慮が襲ってくる。


 午後。


 ピンポーンとミサキがやってくる。

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