第11話 夜柑視点
「姫様、姫様!大丈夫でございますか!あぁどういたしましょう……」
今、ボクの背の上では、姫様が意識を失って倒れている。
倒れる姫様を見て咄嗟に下敷きになったは良いものの、そうなるとボクにはどうすることも出来ないことに気がついた。
抜け出せば姫様の顔が地についてしまうし、かと言ってこうして下敷きになり続けているのもボクの体がもたない。
誰かが来るのを待つとしても、遥か先まで人の気配のないこの道では、助けが来る可能性は絶望的だろう。
無情にも夕日は少しずつ消えていき、夜闇が辺りを包み始めている。
消えていた街灯がゆっくりと灯りを取り戻し、弱々しくアスファルトを照らす。
「ひ、姫様ぁ!お気づきになられてください!このままでは共倒れしてしまいますよぅ!」
呼びかけても、微かに唸るか少し震えるかのどちらかである。
「姫様ぁ〜!ボク、そろそろ体が限界です!」
「こ……」
頭上からの呟きに、ピクリと耳が反応する。
「姫様、なんとおっしゃいましたか?」
「こ……かぜ……」
「こかぜ?」
寝言のように、うわ言のように漏らしたその言葉を捉えた瞬間――体が、急激に熱を帯び始めた。
その熱は温度を上げ、骨の中からじくじくと体内を侵食してくる。
やがて体表にまで至ったそれは、炎へと姿を変え、ぱちぱちと爆ぜながらボクの体を包み込んで燃え盛った。
視界に炎の揺らめきが映る。
熱い、熱い……熱い!!!助けて姫様!!!
それに耐えきれるはずもなく、目の前の意識を落とした姫様に救いを求めて手を伸ばす。
手を――――伸ばす?
その違和感に思い至り、ハッとして自分の手を見る。
そこにあったのは、見慣れたもふもふの小さな脚などではなく、れっきとした人の手の平だった。
どういう、ことでしょう……まさか、まさか、まさか……
「ぼ、ボク、人になったんですか!!!!?????」
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