第57話 キャプテン


「MKsの守護兵器は、攻撃兵器にも使われているらしい。

 知ってたか?」


「そりゃそー。どーせにんげんはごみ」


 端末を触りながら、カイリちゃんは言って


「MKsは兵器産業から手を引くべきだと思うんだ。

 その技術を宇宙開発に向けよう」


「知ってるぅ? 会長様ぁ。

 その宇宙開発技術のぉ、漏れ出た一ミリがぁ、この兵器らしいわぁ」


「そう。旦那様。

 MKsの全リソースは旦那様の言う通りに宇宙開発に向けられている」


「え? そうなの?」


「だんなー」


 端末を放り出して、佐々木さんがキャッチ。

 そうして立ち上がったカイリちゃんが俺の目の前に来て

 目線を合わそうとするが、全然身長が足りないので

 俺が腰を落として視線を合わせる


「ちからこそせーぎ。

 よわさはあく。

 ぜったいてきなちからがせかいをひとつにする」


「そ、そうなのかー」


「こらぁ、カイリ。なんの漫画に影響されたのぉ?

 ミヤケさんはぁ、カイリの言うことなんでも信じちゃうからぁ

 嘘ばかり言ってはダメよぉ」


「いや、俺そんなにカイリちゃんの適当発言を信じてないけど」


「嘘ばっかりぃ」


「だんなーは私をおおかみしょーじょにする?」


「いや、しない」


「でも、真実ね」



「すごい。これが鉄人か」


 須藤は【チンリクス】の首魁と言われる「マン●チン」と画面越しに話している。

 その手元には、マン●の部下であるらしいミヤケを拉致した男が控えていた。


「ペラッペラに見えますが、

 身に着けると銃弾すら跳ね返す」


 同時に、ミヤケが洞窟から脱出した時の動画を見せる。

 そうして、装備を解除してその場に捨てられる「鉄人」の鎧。


「これを複製して皆が装備すれば」


 ニヤリと笑う須藤。

 取引成立だと満足げな声音でマン●は通話を切った。



 中津ではMKsの空中庭園で一般人にも開放されている大規模なパーティが開催された。

 ここで、MKsの表はトップであるミヤケからの重大な発表があるらしく、一般人に紛れてたくさんの報道陣が全国から詰めかけていた。

 

 だが、その地球とは思えないほど進んだテクノロジーを目の当たりにした報道関係者は、ミヤケからの発表を無視してまでもMKsスタッフを捕まえて質問攻めにしていた。


「ーーーですからして

 今後MKsは兵器産業から手を引きます」


 報道陣の席に座る一人の男が手をあげて


「MKsは宇宙開発ベンチャーだと記憶していますが」


「そうです。元に戻ります」


「兵器ですか? 売ってたんですね」


 たくさんのパーティに詰めかけた一般人たちがインタビューされた記事や、MKsの知られざる空中庭園! などの特集で番組は特番が組まれたようで

 ミヤケの発表は誰の記憶にも残らなかった。


 株価は逆に上がった。



「だんなー。えーがのまねしてもだめだよー。

 しんゆーのぐんじんいないじゃーん」


「くそ。友達がいないばかりに」


 思い出せば、最近カイリちゃん御一行としか絡んでいない。

 そういえば、会計マンを忘れていたし、


 なんなら半年以上会っていない気がする。


「旦那様。これ見て」


 と、端末を渡されると

 そのデバイスの画面には


「ださ」


 鉄の円柱に腕を入れて

 体には鉄の板が巻き付けて背中は紐で縛っている。

 銃弾を意図も容易く弾くその「鉄人」の動画は


「これ俺じゃん。クソダセェ」


 隣にニート男を連れて洞窟から出ていく様子が写ったビデオ。

 おそらく監視カメラか何かで盗撮されていたのだろう。


 そうして、画面が切り替わり。

 鮮明な画質になる。ちゃんとした機材で撮られた動画らしい。


『ハローみなさん。

 今の動画を見たでしょう? 鉄人。あんな人型兵器が

 なんと、これだけ』


 聞いたことがあるような男の声がナレーションして


 画面いっぱいに広がるのは

 姿が清廉されたが、まごう事なき俺が来ていた●イ●ンマンだった。


「すごー。だんなーのつくったやつがこんなにー。

 とっきょりょーちょーしゅーしにいこー」


 覗き込んできたカイリちゃんが


「だが、これちゃんと機能するのか?」


「どうして? 特殊な金属を使っていれば銃弾を跳ね返すことも可能よ」


「だってさ、トモ。

 俺はそこらへんのトタンを盾にしても銃弾程度跳ね返す強度にできる才能があるんだぜ?」


「え?? 旦那様に才能があったなんて」


「えー!! だんなー、かくしてたーー」


「そんなつもりはないけど」


「だったらぁ、このたくさんのぉ鎧戦士たちはぁなんなのかしらぁ」



 南の氷の大地。

 デミオンがディアの言われるがままに掘り出したのは巨大な飛行船。


 完全に凍結してしまっており、

 しかし、その形は地球のものとは思えない。


 ここまで巨大な飛行船が完全に凍り切るなんて、何十年では足りない。

 

 それに、埋まっていた場所がかなり深く、

 100年は有に超えているだろう。


 つまり、これは地球のものではない。


「おい、鹿女」


「デミデミー! これは、この惑星の第二文明が作った戦艦よー!!

 中には、確かアズッゴンバッコンガルドに通じていると言われているわー」


「は? 知らん」


「第二文明が移り住んだ新しい惑星よーー!!

 今は、確か監察軍の支配下にあるマナを司る妖精?? みたいな!?」


「なんだそれ意味がわからん」


「あ、扉開いてる! ラッキー!!」


「おい! 勝手に入るんじゃない!」


 氷漬けの機体の中。

 

 ディアは操縦席に座る一人の氷漬けの男性を発見した。


「キャプテンフェミニスト」


「誰だそのクソミテェな野郎は」


「第二文明の戦争で作り出された超人よ!

 イカれた研究の結果、生体に取り込んで爆発的な成長を促す

 一種の麻薬みたいな!!??

 その一番最初の実験体で唯一の成功例!

 必殺技は、真・男女平等主義パンチ。

 当時は、性差別が多かったのね」


「ほんとクソミテェな野郎だな。砕こうぜ」


「黙れ聞こえている」


「は? クソ鹿女こそ黙れ」


「なに? 私は何も言ってないわ!

 あれ? でもたくさん喋ってた気がするわ!

 もっと聞きたいのね! 他の技もあるのよ!

 女性の社会進出キック! 股間を狙うわ!

 冤罪痴漢撲滅アイ! たくさんものが見えるのね! でも見えるだけで何も行動しないわ!

 それに、FF外から失礼します構文! 何か、説教するわ! でもよくわからないから、みんな愛想笑いするの!!」


「黙れ女」


「は? デミデミ言葉きたなーーーい!」


「黙れと言っている!」


「え?」「は?」


 顔を見合わせるデミオンとディア。


 声の主は、操縦桿を握っている


「「キャプテンフェミニスト!?」」


「驚いたな。

 僕たちの文明は滅びたと思っていたのに、同じ言語を喋り、同じ二足歩行で5本の指を持っている生物がまた生まれるだなんて」


「こ、言葉が通じているのね!

 じゃあ私の話もたくさん聞けるのね!

 デミデミ、最近構ってくれなくてぇ、

 あなた、フェミニストだから、私の話をたくさん聞いてくれるのよねぇ!!」


「自分はわからない」


「えー! 私、ずっと見てたのよーー!!

 見てるだけで、一度話したかった人トップ4539位に入賞しているのよ!!」


「全然嬉しくない」


「デミデミは48692975998191687250907位」


「わからん!!」


「圧倒的じゃないか。

 ふっ」


「くそ。笑われた。

 凍ってる部分砕くぞ」


「もう解けた」


「フェミニストは発言が過激だから凍結してたのね」




 

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