第50話 お金の使い道

「コンペを開こう」


「は?」


 カイリちゃんが俺の頭をポンポンと叩きながら


「なにいってんのー?」


「お金はいっぱいある。

 しかし、使い道がないのだ!!」


「確かにねぇ」


「どんなコンペ?」


 興味を持ってくれたみんなの目線が俺に集まるが


「考えているわけないだろう?」


「それじゃぁ集まらないわよぉ」


 と、佐々木さんがため息をついて


「とりあえず、先端技術を研究している何かだな」


「そんなときの、会計マン」


 俺とカイリちゃんが通じ合った瞬間。


 そうして、電話をとって会計マンのボタンを押すと

 すぐに返事が返って来た


『今会議中なんですが』


「そしたら、なんで出るんだよ。

 出たなら都合がいいけど。

 とりあえず、最新技術を研究している投資して欲しい機関とか?

 何かやりたいけど、お金がない! とか困っている人たちを集めて、

 コンペティションを開いて、興味がもてたやつに投資しようと思って」


『は? なにをいってるんですか?』


 と、聞き返して来たので


「だから、面白そうな案件を募集しようって話」


『そんなに都合よく………

 あ、1つ面白い話がありますよ。

 【復活の薬】の複製案件がーー』


「それはどうでもいいから」


『一番儲かるんですがね』


「儲けを考えてないからな」


 と、会計マンに頼んでおけば、あとはどうとでもなるから。



 一週間後。

 福岡までの移動費は会場で申請すれば、帰りの分も支払う。

 なんて募集して、会場にはたくさんの人が集まっていた。


 西日本総合会議場の一室を借り切って行われる、【投資して欲しい人集まれコンペ】には、延100人。70ものグループが集まった。


「驚いた。

 日本が半分になったのに、こんなに人がいるのか」


「逆に、土地が半分になったのに、東北以北にいる人たちの半分以上が南下して来たから、増えたわよ」


「半分ってことは、残りの人は新ソ連に?」


「そうね」


「人の意思はぁ、自由だけれどぉ。

 少し不快だわぁ」


「それは俺もおもうけど」


「だんなー。

 はじめよー」


 と、カイリちゃんが一番ノリノリだった。



「ーーーーーのように、海にはたくさんの資源が」


「で? 楽しいの? それ」


「え? たの、しくはないでしょうね。

 しかし、研究のしがいがあります」


「やりがいがあるのは、どれも一緒だし」


「つぎーー」


 カイリちゃんが言って、

 スタッフとして雇ったトラベラーが海の調査をしたい男を連れて行って


 それから、次の新しい人を連れて来た。


「始めまして。

 自分は、■研究所のーーーー」


「自己紹介なんてどうでもいいから。

 なにがしたいの?」


「今は、メタバースの研究をしています」


「メタ? なにそれ?」


 と、食いついたのはカイリちゃんで


「はい!」


 とパァッと表情が明るくなってから


「オンラインでたくさんの人と交流ができるようになるんです!

 今は、国境付近がかなり不安定で、

 それでも、このオンラインの世界には国境もなく、

 向こう側の友人とも共同で研究しているんです」


「へーぇ。

 それでぇ? 交流だけだったらぁ、電話で十分だわぁ」


「今は、ドローンを使って、

 人間の代わりを演じてもらう研究をしています」


「人間の代わり?」


「そうです。

 人が歩くじゃないですか? その速度を受け取ったドローンがカメラ映像をリアルタイムで移動させます。

 そうして、ゴーグルをつけて自宅で歩いている人が、まるで外にいるかのように体験できるんです。

 それだけではないんです。

 ドローンで撮影した世界は、3Dモデルとして、凹凸を再現でき、

 次からは、ドローンがなくともそこに行くことができます。

 それを繰り返して、世界中をドローンカメラでスキャンして、

 コンピュータの中に、もう1つの世界を作りたいんです」


「すごいな。

 それは」


 素直に感心するが


「まぁ、部分部分しか完成していないので、

 もしも建物に入っても、自動ドアは開きませんし、階段も登れませんし、

 ものを動かすこともできませんが」


「それも一興。

 幾らくらい必要なんだろうか?」


「え? もしかして」


「面白そうだ。

 お金を出そう」


 2グループ目の合格者だった。


「話は後から詳しくね。

 時間はある?

 明日の空きはある? 今日は他の残りグループの話も聞かないと」


「大丈夫です。

 仕事は、これでやってますから」


 と、鞄からノートパソコンを取り出してから


「そう。一旦帰る? 多分時間かかるけど。

 外で、連絡先とか泊まってるホテルとか教えてくれたら、

 終わった時に連絡を入れるけど?」


「あ、ありがとうございます。

 では、それでお願いします。

 福岡県に来たのは初めてなんで」


 実は、小倉駅の目の前にある会議場ではあるが、

 実際、小倉にはなにもないので、観光目的としては物足りないかもしれない。


 まぁ、ショッピング目的なら十分かもしれないが。


「じゃあ、つぎー」


 やっぱりカイリちゃんが仕切っていた。




「三宅さん。

 ペットを飼いたいと思ったことはありますか?」


「まぁ、ないと言ったらあるけれども」


「ペットは、餌や糞尿の処理など。

 あとは、毛がついたり、色々と大変です」


「そうだね。

 それで?」


「実は、そんなことをしなくてもいいペットを開発しました」


「はぁ」


「名付けて、AIペット」


「それが?」


「タブレットをご覧ください。

 この猫ちゃん。

 実は生きています」


 ニャンニャンしている白猫。

 俺の方に歩いて来て、

 タッチすると、「にゃーん」と言ってごろごろして、頭を擦り付けてくる。


「こちらから」


 男が右下をタップして

 

「チュールです」


 と、人差し指で触ったそこから、チューブ状の猫が好きな餌が出て来ているようで

 ニャンニャン言いながらそれを舐める猫。


「こうやって、交流を深めます」


「たま●っちだな。

 ニンテン●ックスって知ってる?」


「存じています」


「それでよくない?」


「違います! これはまだ試作段階。

 このAIペットは最終目的が違います!

 最後に、3Dになって動きます。ロボットに憑依させて、動きます!

 この現実世界で!」


「ほぉ」


「そのためには、お金が必要です。

 どうか、投資を」


「面白そうだな。

 とりあえず、後で詳しい話を聞こう」


「ありがとうございます。

 お礼にこの犬の卵をあげます」


 と、タブレットを差し出して来て


 カイリちゃんが奪い取った


「ちょーだいする。じゃ、ばいばい」


 と手を振って


 部屋を後にする。猫男。



 今日で200億円の支出をした。


 特に、佐々木さんと俺が興味を示したドローンウーマンに100億円与え、

 猫男に50億円の投資を行った。


 他にも、空飛ぶ車や、時を超える車。合体する巨大ロボなど。

 面白そうなものはあって、それに10億円ずつ。


 合計7つのグループに投資を行った


 もし、これから成果を上げるようなら

 また追加で投資する。


 なんて書面をかわしてから


「いぬー」


 と、カイリちゃんは猫男からもらったタブレットの中にいる犬と戯れていた。


「かぁいいねー」


 画面をツンツンして、

 ギャハハと笑って。


「寂しそうねぇ」


「カイリちゃんが構ってくれないんだ」


「大丈夫、旦那様。

 私が構ってあげる」


 と、トモが差し出して来たのは


「インコ」


「画面をスリープにしたら、静かになるらしいけど、

 いつの間にか死んでる不良鳥らしい」


 と、AIペットが人気だった。


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