第51話 生活圏拡張

「姫路城って知ってる?」


「なにそれ」


「日本のすごい城らしい」


「へー、きょうみな」


「もっと文化に興味を持ってほしい」


「れきじょーがすきなら、私じゃやくぶそくー」


 カイリちゃんはぱたぱたとリビングから走り去っていき、

 代わりに残ったのは、トモと佐々木さん。


「カイリ、勉強とか苦手だからぁ」


「魔法少女は、頭も魔法少女」


「それはどういう」


「日本史にはわたしは少し覚えがある」


「最近歴史の中心人物になったから?」


「む」


「ミヤケさぁん。それは少しぃ」


「あ、ごめん。

 それで、姫路城なんだけど」


「そう。姫路城は世界遺産。別名白鷺城。

 織田信長とかの、時代よりはるか昔に建造された城。

 現代に残るものではかなり当時の作りが残っている希少なもの」


「ん。俺もあまり興味はないんだけど」


「は?」


「少し、そっちに用事ができたから。

 ついでに観光? みたいな」


「姫路城をついで?

 あれはメインで行ける」


「落ち着いて、トモ」


 鼻息を荒くして俺にムンムンと近づいてくるトモをなだめてから


「それはぁ、何かしらぁ?

 この間の、コンペ? ってやつに関係があるのかしらぁ??」


「そうだね。

 少し関係がある」


「少しぃ? それ以外はぁ?」


「なに? 女? 魔法少女と、わたし以外に?

 そうなのね」


「いや、じゃないじゃない。

 全然、関係ないけど」


「すべてぇ、聞かせてもらうわよぉ。

 カイリとトモちゃんの危機だものぉ」


「どうして!?」



「と、言うわけで、

 姫路に巨大な埋立地を作り、そこで宇宙開発をすることになった」


「は?」


「どうして姫路なの?」


「どうしても、こうしてもな。

 俺もよくわからん。

 中津のほうが先進技術や諸々場所が整っているはずなんだが」


「つまりぃ、押し切られたのねぇ?」


「そ、そういうことに、しといて」


「変態だわ」


「!?」



 計画は、こうだった。


 四国と本州の間の瀬戸内海上に、ギガフロート計画が持ち上がった。

 埋め立てをすると、生態系に影響を与えるという観点から、

 中津に本社を置くMKsと、姫路に拠点をおいている、今回の提案側との共同で


 海上に巨大な島(フロート)を作り、一つにしようという計画だった。


 そうして、その間にはリニアモーターカーを中心に走らせるという計画。

 つまり、九州と関西を結ぶ計画の一旦だった。


「まぁ、面白そうではぁ、あるわねぇ」


「その? 下見? みたいな」


「それと宇宙が同関係あるの?」


「MKsの協力で、ロケット推進を使わない宇宙船を開発したみたいだけど、

 量産とか、その他? やっぱり、九州よりも東京に近いほうがいいかな? ってね

 でも、今は、東京が国境付近だし、色々関西に首都関係が集まってるし、

 ちょうどいいかなってね」


「ふん。

 わたしは、地下鉄を作って欲しい」


「どうして?」


「リニアモーターカーは目立つし、爆撃の的になりそう」


「戦争前提なの?」


「そうでしょ。

 新ソ連がいつ全面攻勢に出てくるかわからないわ。

 だったら、地下だわ!」


「でもぉ、地下も安全じゃないんじゃないかしらぁ。

 最近も地震があったでしょう?

 人工地震を引き起こせるからぁ、地下だと2倍だわぁ」


「それどこの対戦ゲームだよ」


「大丈夫。 

 核シェルターと同じ強度にしてもらうの」


「まって、

 福岡から姫路って、500km以上あるからね!!

 シェルターと同じ強度って、無理があるよ!」


「MKsの力の見せ所ってね」


「上からも下からも侵食するとして

 時間が足りないでしょ」


「それもそうね」


「どこかにぃ、生産効率を上げる才能を持った人がぁ転がってないかしらぁ」


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