第45話 あぶく銭

「ところで。

 MKsって、良く聞くけれど、なに?」


「そうですね。

 三宅さんが4年前に、研究施設にたくさん投資したのは覚えていますか?」


「って言っても、昨日のことだしな」


「彼らは、東北を中心に研究を行っていましたが、

 戦争の予兆を予期してか、田川の<セント・ヴィレリア学園>の近くに研究所を移設しました。

 その際には、ノア中心のアドミラル・インダストリーの助力もあってスムーズに移動しまして。

 ほんの2年前に、新エネルギーの発見と、新素材の発見しました」


「新エネルギーって?

 最近は魔石だったか? 石油に代わって20と何年かって話だったな?」


「そうなんですが、驚いたことに。

 ダンジョンないに大量発生し始めていた、【異星人】の解析が進んだんです」


「【異星人】??」


「そうです。

 あれは、地球上の生物ではありませんでした。

 生命体を覆っていた、あの特殊な膜の解析から、地球より遥かに文明の進んだ人工技術。ということがわかりました」


「人工……技術」


「そうです」


 と、会計マンはお茶を一口


「お、美味しいなこれは」


「俺は、良くわからん」


「だんなーはびんぼーじただから、50円くらいのおちゃでじゅーぶん」


「それもそうかもしれない」


「はい。

 話に戻りますが。

 来た時に見たとは思いますが、今のこの都市はその副産物です」


「別の時代かと思ったな」


「そのくらいの新発見という事ですよ」


「これで、宇宙進出か?」


「それも一興ですが」


「何か含みのある言い方だが?」


「新ソ連と言いますか、邪魔者と言いますか」


「いろいろあるんだな。

 まぁ、専門的な話を聞いても俺には全くわからんから。

 とりあえず、MKs?? そっちにいってみようかな」


「そうですね。後ほど挨拶に行きましょうか」


 と、会計マンはノアが持ってきた焼き菓子に口をつける。


「これ、美味しいね」


「そうか。俺にはわからん」



「そうです。お話は変わるんですが」


「なに?」


「三宅さんが帰ってきたので、いろいろ渡したいものがありまして」


「ほうほう」


「ノア、あれ持ってきて」


「あれ、とは??」


 首を傾げながら、会計マンの机の中から端末を持ってきて


「これです」


「これは?」


 カイリちゃんと、佐々木さんが前のめりに


「これは、三宅さんがもらうはずの配当金です」


「配当金? それは?」


「あぁ。

 トモちゃんがぁ、株式が当たらぁ、言ってたわねぇ」


 佐々木さんがいって


「お金かー」


「そうです。

 まぁ、株式配当と言いますか、MKsの実質的な管理者の給金と言いますか。 

 それに、【女神の薬】の買取金と言いますか」


 カイリちゃんが、勿体ぶる会計マンの手からその端末をひったくって


「これ」


 と、画面が開かれると


「すうじがいっぱーい!」


 1、10、100、1000、10000。と

 数えていきながら、


「兆??」


「はい。

 驚きました。自分も。

 ミヤケさん。ああ、トモさんですね。

 の研究協力費もありますね」


「………」


「おかしく無いか?」


「そうねぇ、でもぉ。

 あの薬ぃ、法外な値段で取引されてるからぁ。

 原液の方ねぇ」


「そ、それも。そうだが」


「はい。

 おおよそ、国家予算並みにグループ全体の売り上げがありまして。

 そのうちのわずかですが」


「そ、それでも。

 ねぇ」

 

 と、カイリちゃんに同意を求めるが


 少しだけ厳しそうな顔をして


「ともーを苛めたくにも、

 買ってるの?」


「それは。

 売り先は、限定しているので、グループが直接売った事は無いですが。

 それでも。

 無いとは言い切れませんね」


「じゃあ、いらない」


 と、突き返すように


「だめ。受け取ってください」


 と、ノアさんがカイリちゃんにいうが


「いらないし」


「ほらぁ、カイリ。

 私もぉ、あまり心地は良く無いけれどぉ、

 この額があればぁ、他にもできることがあると思うのぉ」


「きたないおかね」


「そ、そうですね。

 こちらも、少し対策を考えるべきでしたね」


「そう。はんせーして」


「あらぁ? 三宅さぁん?」


「……

 ああ。ごめん。驚いてた。

 1日で、何倍になるんだよって。思考停止してた」


「こちらは、4年経ってるんですけどね」


 と、会計マン。



 それから、会計マンとノアさんの馴れ初めや

 4年間の出来事などをいくつか聴きながら。


 テレビ電話でMKsのリーダーをしている、元学長と話してから。

 

 会計マンの時間が押しているということで解散の流れになる。

 

「いやぁ、すごかったね」


「だんなーきらい」


「え?」


 と、汚いお金をもらってしまったが故にカイリちゃんに嫌われてしまった。


「今からぁ、なにするのぉ?」


 と、部屋に残された俺と、カイリちゃん、狂墨と、畳の隅で丸まって寝ているアトリアナを見て


「とりあえず、帰る?」


「それはそうねぇ」


「この額のお金は、どうにもならんね。

 なにもしてないのに、増えてしまった。

 どうする?」


「って言われてもねぇ」


「らーめんたべてかえる」


 ノアさんのお菓子めっちゃ食ってたやん。


「今考えても、仕方がないよね。

 そうだよね」


「トモちゃんもぉ、起きてるんじゃ無いかしらぁ?」


「そっか。

 4年も待ってたんだもんな。

 ゆっくり、話、しようかな」


「それがいー」


 

 俺たちは、外に出ようと扉を探して。

 

 エレベータが上昇してからアトリアナと狂墨を置いてきたことを思い出した。


「起したんじゃなかったの?」


「いわれてない」


 カイリちゃんがぷいっと



「あーあ。

 戻るか」


「実はぁ、何階かぁ。覚えてないのぉ」


「そうだな。俺もだ」


「みーとぅー」




「田淵さん、ノアさん。

 Sランカーや長禅儀が帰ってきたというのは、本当ですか?」


「ええ、まぁ。

 本人でしたね」


「そうですか。

 あの天使だけでも厄介だったのにですね」


「警戒心がかなりでしたね。

 自分もこの1年は近づくこともできませんでした」


「まさか、バレれては無いですよねぇ?」


 と、画面の向こうの男が言った。

 人間というには、かなり肌が緑色で、目がギョロリと大きかった。


「それこそ、まさか。ですよ。

 田淵という男の記憶では、かなり馬鹿であると記憶していますから」


「そうですか。

 しかし、動きづらくなりましたね。

 新ソ連の対応もしないといけないのに」


「そちらは、放っておけば、三宅さんが解決しますよ。

 本命は、こちらでしょう?」


 と、【女神の薬】を取り出して


「原液も、限りがありますね。

 天使のおかげでもう手に入らない。

 殺せそうですか?」


「いやぁ、自分には無理でしょうね」


「そうですか。

 計画はどのくらい進んでいますか?」


「いえ。まだ全く。

 田淵という男はかなり優秀すぎて」


 と、田淵とノアだった人間の姿がバリバリと揺らいで


 画面の中の男と同じ、緑色の人型の生物に変わる。


「あら。

 こちらは弱ってるみたいですね。

 後で餌をあげにいきましょう」


 と、ノアだった緑色の生物が両手を見て言った。


 生きている人間を投影して纏うことのできるこの生物は

 纏った相手の記憶すら共有できる。


 その能力も、「生きている」ことが条件で

 つまり、どこかに生きているノアが瀕死の状態になっていることがわかっていた。




 その、人間では無い生物たちの会話を遠くの影から見ていた

 狂墨とアトリアナは抱き合って


「「あわわわわ」」


 と、震えていた。




「果たして。ここはどこなのか」


 その頃、俺とカイリちゃんは、佐々木さんとも逸れて


 ダンジョンで見た人型の生物が沢山液体に浸かっている部屋を発見して


「ここにはいないとおもう」



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