第41話 帰りの出来事


 宮城県から飛び立ったプライベートジェットに乗った俺たちは、福岡県に帰ることになった。

 

 カイリちゃんは諦めて俺にひっ付いて黙り込んだ。


 俺はカイリちゃんと長禅儀の関係はよく理解できないが。

 あまり近づけけるわけにはいけないのかなと、思った。


「あんまり納得行かないな」


「どうしたのぉ? そんな顔をしてぇ」


 佐々木さんがジェットの向かい側に座ってから声をかけてくる。


「俺が色々考えてて、思った通りの話ができなかったから後悔してるっていうか。

 そう。

 俺は宇宙に行きたいから、そのために投資したかったんだけど」


「そうじゃないのぉ?」


「結局、よくわからない研究室に投資したっていうか。

 学校が勝手に決めたまであるよね」


「そうなのぉ? 私はぁ、よくわからないけれどぉ」


「大丈夫。私がちゃんと選別したから」


 ユウナギがコーヒーを持ってきて


「宇宙に行くためのエンジンとか、壁? その素材とかを研究しているところを中心にピックアップさせたから」


「まぁ、それならいいけどね。

 ちゃんと俺も関わりたかったっていうか」


「旦那様は少し休んだほうがいい。

 悲しい出来事は、だいたいおっぱいを揉めば治る」


「揉まれた側は不幸になるんですがそれは」


 あかねちゃんが俺と佐々木さんの席の真ん中にあるテーブルの下に体育座りで小さくなって収まっていて


「あの男は、いつか殺すから。

 あかねちゃん。元気を出して。

 旦那様が変わりに揉むから上書き?」


「揉めるほどあるの?」


 俺の正直な感想。


「あ、あるわい!!」



 涙声で。

 両膝に顔をうずめてから動かなくなった。


「旦那様ってサイテー」


「カイリのほうが小さいんだから」


 小声でつぶやくあかね。


 俺の上にひっ付いているカイリちゃんが少しだけ抱きつく力を強めたが、それに反論はしなくて


「おうおう。

 オレの噂でもしてるのか?」


「クソ野郎」


「お口が悪いぜお嬢ちゃん」


「そんな歳じゃない」


「まだ18,19くらいじゃないのか?」


「…………」


 長禅儀が片手にコップを持ちながら歩いてくる。

 

 それに続くのが、アトリアナで。


「嫌われてるの。

 アタシも嫌いなの。この人」


「おいおい。あんまり嫌うと力ずくだぞ?」


「勝手にどうぞなの」



『しょ、衝撃に! 備えてください!!』



 突然の船内放送。



『未確認飛行物体が近づいてきます!』



「なんだぁ?」


 長禅儀が首をかしげて


 佐々木さんが飛行機の窓から外を見る


「あれはなにぃ?」


 俺もそれをみて


「ロケット?」


 それは円柱の形をしていて、その後ろから火を吹きながらこっちに進んでいる。


「いや。ミサイルだ」


「な、なんでなの??」


 アトリアナが驚愕に目を見開いて


「直撃か!?」


 叫び声。


 ドゴォォォぉぉん!!!


 そして、炎上。


 はるか上空で、プライベートジェットは巨大な穴を穿ち

 

 真っ二つに折れ曲がり爆発。


 



 俺たちはカイリちゃんのとっさの魔法で防御。


 無傷のままではあるが、空を飛ぶ才能なんて持っていない。


 そのまま、俺たちは海上へ真っ逆さまに落ちていく!


「爆発オチなんてサイテー!!」


 その叫びはどこまでも遠くまで届いていた。



(第一部 完)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る