第28話 二日酔いに効くもの?

9月10日・田川 <筑豊ダンジョン>



 なんのために筑豊ダンジョンに来たのかわからなくなっていた頃に、会計マンが俺の部屋を訪ねてきた。

 と言っても、1ヶ月以上占領しているホテルの部屋の一室なのだが。


「よろしいでしょうか?」


「よろしくなーい」


 俺が返事をする前にカイリちゃんが出て行ってしまって


「あ、カイリさん。おはようございます」


「まだあさ。ひじょーしき!!」


 ビシッと、指摘するが

 残念ながら、11時50分なのだ。


「はぁ。申し訳ないです。

 それは、置いておきまして。

 今日は、学校建設の件でお話をと、お伺いをしましたが」


「あー。

 まだ生きてたんだ」


「はい喜ばしいことですね。

 自分も、こんなに早く話が進むなんて思ってもいませんでした。

 やはり、Sランカーというグループは、とてつもない影響力を今も残しているのだと実感しましたよ」


「私はー。なんにもしてないけど」


「佐々木さんと、あの狂墨についてきていた、男の方」


「あー。あー。あぁー。ぁー。

 ーん? んん?」


「どうしたの?」


「名前を思い出せない」


「わかるわかる。

 前所属していたグループとか学校とか、友達の名前なんてあんまり喋らない相手だったら全く覚えないよね」


「カイリさんたちは、たったの6人でしたけどね」


「えー??

 いたっけ? あんなの」


「はい。いましたよ」


 と、会計マンの方が答える。


 俺は、Sランカーは知っているけれど、実際はカイリちゃん目当てで。

 そこに麗しの狂墨と、佐々木さんがいて。

 3美姫パーティとして持ち上げられていたし。


「うーん。

 やっぱりーおもいだせー、ないかなー」


「そうですか。

 でも、ここで立ち話もなんですから、この間の会議室を借りましたので、この後すぐに集合できますか?」


「どうしようかな」


「むーりー」


「カイリちゃんは寝てて良いよ。

 ユウナギはまだ寝てるし」


「え? もう正午ですけど」


「あかねとオンラインゲームしながらお酒飲んでたら、めっちゃ楽しくなっちゃって。

 実際、今とても頭がいたしし、回ってない気がする」


「大丈夫ですか?」


「実は、7時くらいまでやってた気がする。

 いつの間にか気を失っていた」


「そ、そうですか。

 この話は少し小難しいので、明日にしておきますか?」


「えー? じゃー、私がきく」


「カイリちゃん、わかるの?」


「しょーにんのはんこ持ってく〜」


「わからないみたい。

 ごめん、やっぱり俺も少し寝たいから。今日の夕方くらいにもう一回お願いします」


「わかりました。

 では、のちほど」


 会計マンはそのまま帰って。


 俺はふらつく足でなんとかベッドの方まで歩いて


 バタッと倒れる


「うぐっ」


 その布団の中には人が潜り込んでいたようで、俺も勢いよく倒れたので骨が痛かった。

 中にはユウナギが寝ており、布団をめくると、俺が倒れてきたことなんてお構いなしに眠り続けていることがわかる。


 ユウナギが刺さった腹をさすりながら、ゴロンと横に回転しながらずれて


 仰向けになった瞬間に


「だんなー」


「ふごっ!?」


 そこに飛び込んできたカイリちゃん。

 なんだ猫かよ。


 最近、カイリちゃんの狂った行動も受け入れ始めて怖い。






 

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