第0話 トラベラー

 ダンジョン。

 突如34年前に世界に出現し、現代までで1万以上の存在が確認されている。

 そこから得られる素材や魔石は現代のエネルギー産業や加工産業に大きな衝撃を与えた。


 現代兵器はダンジョンの比較的低層までしか通用せず、それ以上はダンジョンに適応して進化したダンジョントラベラーが自身の才能(タレント)を持って攻略を進めていた。


 タレントとは独自の戦闘スキルであり、唯一無二。


 例えば、魔法が使えるようになったり、空間に収納できるアイテムボックスだったり、剣や防具の性能を一段階上昇させるものだったり、パーティメンバーの能力を上昇させたり。

 

 彼らは2から6人のパーティを組んでダンジョンに挑み、そこから得られる財宝で富を作る。


 しかし、トラベラーは狭き門であり、どれだけ身体能力が優れていても結局は才能がなければ長く続かない。

 

 ダンジョンが出現して半年で、全世界確認できるだけで1億人が死んだ。


 それに早期に対策したのが日本であり、ダンジョン協会の設立をし、才能を一極集中管理を行った。

 ダンジョンに入るのもそこから得られる資産も政府主導のもとで「決まり」が作られた。


 30年前、日本は全国各地のダンジョントラベラー強化育成のため、専門学校を組織する。

 <育成高等学校>

 高等学校と名がつくが入学の年齢制限はない。


 この機関の導入からダンジョン攻略は瞬く間に進んでいき、内で死亡する件数は年で3桁に昇らなくなった。


 しかし、卒業できる人間は毎年、入学時の6割を割る。

 

 

 ダンジョンには一攫千金を夢見てたくさんの人間が挑戦し、夢破れていく。

 火を吹く魔剣に、攻撃を無効にするマントに、両手に収まらないほど大きなダイヤモンド。

 前例があるからこそ、誰もがその夢を追う。

 そんな中に、どんな怪我でも病気でも治してしまう秘薬があると囁かれるようになった。


 人間は夢を追う。


 誰しもが、自分の命と天秤にかけて。

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