第9話 使い道
「とんでもねぇ額だ」
宵越しの金を持ち歩かない主義の俺にとっては死刑宣告を受けたような衝撃を受けた。
こんな金額を、1日で使えるわけがない。
ピキんと閃いてしまった。
そう、一人で1日では使いきれないのであれば、みんなで使えばいいのだ。
「依頼を出そう」
「なんの?」
カイリちゃんはそう聞き返してくる。
とりあえず、何らかのイベントでも突発的に初めて、その代金を俺が全て支払えば10億円ぐらい使い切れるだろと、軽い気持ちで考えていた。
「 カイリちゃん復活祭じゃーーーーーい!!!! 」
祭りと聞いて笑笑と集まってく人だかり。
そうして、俺たちはギルド会館に一団となって入っていく。
「依頼をお願いしたいのですが」
受付カウンターは会館に入ってまっすぐ歩いいて突き当たりにある。
一番使用頻度の高いそのカウンターには今は3パーティほどの人だかりがある。
この際の1パーティの所属数は六人であり、この場にはおおよそ15人がいた。
「はい、こちらでお聞かせ願いますか?」
裏から一人出てきて俺を見て、その後に俺たちに付いてきた何十人もの人だかりを見て唖然とする。
それでも、案内は支障がないあたり、これ以上の衝撃を味わったことがあるのか、それとも優秀なのか。
「祭りを開催したいんですよね」
「祭り? ですか?」
首をひねる受付嬢。
しばらく唸ってーー数秒だがーーいくつかの結論に至ったようで
「屋台や何か出店の企画などはありますか?」
と、こちらの意図を察したような話を始める。
正直、全くのど素人で単純にお金を使い切りたい一存なので、何も考えていない。
「いや、とりあえず費用は全部俺が出すので、大規模で大きいなやつがやりたいです。
すぐに屋台とか出せる企業に連絡して、なんかできませんかね?
そう言った業者を紹介してくれるところでもいいです」
「えっと? 会場はどこで行う予定なのでしょうか?」
「あ、このギルド前広場とか、行けますか?」
「えっと、確認して見ますね? でもかなり高額になるかもしれませんが」
「あ、とりあえず、10億円でどうにかなりませんかね」
目を見開いて驚いて見せた。
こんな冴えない男にそんな財がどこにあるのか。という感じに全身を舐め回すように見られて、それから、ポケットから取り出した携帯端末で何処かにメッセージを送ったようだ。
「一旦奥の会議室にいきましょう。ここでは目立ちますからね」
と、席を立って手で指し示しながら歩き始める。
「佐々木さん」
「どうしたのぉ?」
「これでそこらへんの人に祭り開催を周知してほしい。
どこかの広場に面している居酒屋とかで目立つように飲み食いしてて欲しい」
「ええ、任せて頂戴。
思いっきり目立ってあげるわぁ」
すごく頼りになる発言だった。
俺の端末から魔女佐々木に1億円ほど振り込んだのちに、ああそう言えばと、自分のギルドにある口座に1億円を振り込んでおいた。
これは、緊急時以外俺でも触れないように設定している口座で、いつもクエスト成功時の支払金や、買取金の1割をこちらに入金されるように設定してある。
今回のあぶく銭には適応されていないようで、こちらは今手動で入金したのだった。
自分で宵越しの金を持たない主義だとか言ってるが、こんな秘密口座を持っている時点で、そんな主義でも何でもないよなぁ。なんて思っていたりも最近はする。
だが、こんなことでもしない限り、安心できないのも事実。
あまり考えないようにしよう。
俺についてくる気なのか、カイリちゃんは先行する受付嬢を追いかけるようにして進むが、その手には俺の服を掴んでいる。
カイリちゃんの嫁発言はどこまで本当なのかわからないので、一旦は保留にしてから後から考えよう。そうしよう。
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