第5話 もしかして、増える?
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31年7月8日 07時30分
目を覚ましたので、まず最初に顔を洗う。
背伸びをして窓を開けると、太陽が登っており、いい感じに俺を照らしていた。
「よし。なんか普通だな」
と呟いて、昨日手に入れた女神の意匠が彫られた瓶を売りに行こうと行動を起こす。
昼まで寝ていても、自分の職業はトラベラーであるからして何も問題はないのだが、おそらくこの瓶はかなりの値段がつくと思われるため、宵越しの金を持ちたくない俺としては今日使い切るためには早めに行動しておくべきだと考えたのだった。
昨日机の上に置いたままにしていた女神の瓶を手にとった。
チャプン
「は?」
中に液体が入った手応えだった。間違えて栄養ドリンクの瓶でも手に取ったのかもしれないと確認しようと手を広げる。
確かに、これは女神の瓶だったが。
「飲んだ、はずだが?」
中は液体で満たされていた。
鑑定の結果、昨日と同じく【復活の薬】と出ており間違いはない。
昨日は弁当を食べそのまま寝たはずだ。いたずらにこの中に水を入れた覚えはない。
物は試しだともう一度栓を開けて一気に煽った。
じゅわぁと、体に染み込む感覚。昨日と一緒だ。
また限界レベルが上がったのだろう。別段、不調なことも怪我もないから、それ以外は試しようがないのだが。
だが、昨日とは違った感覚もあった。ストンと体が整理されたような気がした。
これは、レベルアップの現象と似ていた。
「レベルは上がらないのでは?」
そう疑問に思ったが大人しくステータスを開いてみた。
ーーーーーー
Name: 三宅 寿一
Level: 28
ATK: 59
DF: 38
LACK: 42
SKLL: 装備強化Lv.4(↑)
ーーーーーー
才能(タレント)のレベルが上昇していた。
最近めっきりと無くなっていたタレントのレベル上昇にかなり興奮して、部屋に立てかけてある<天神ダンジョン>の40層ボスドロップ品である長剣ザクーハに手を掛ける。
ステータスは、武器などを装備した瞬間にステータスに反映される。
こうして、俺の装備強化という才能(タレント)もかなり有用だと証明できたものだ。
ーーーーーー
ATK: 103(59 + 44)
ーーーーーー
ザクーハの元々の攻撃力は44である。
ステータスというのも、結局は数値であるがそれは指標のようなもので、それが実際に敵に与えるダメージというものではない。ただ、速度が上がったり筋力が上がったり、そういった体感だけで、与えたダメージが見えるわけでない。
そういった才能(タレント)を持っているやつもいるらしいが、基本的に人間はダンジョンが出来てステータスは授かったが、それ以外に大した進化もしていない。
確かに、ダンジョン攻略なんてゲームのようだと思うかもしれないが、実際現実にあればそんな感覚ではいられない。低層だと遊び感覚なのは否めないが、実力に合った場所、それ以上の階層にいくと、命の取り合いである。真面目にやっても死にかねない。
こうして、才能(タレント)は飯の種で、どれだけ戦闘の技術があっても才能(タレント)が無ければダンジョンで食べて行くのは不可能だろう。
そう考えれば、俺の場合かなり運が良かったと思える。
レベルの上がった装備強化の才能(タレント)を発動する。
ーーーーーー
ATK: 125(59 + 66)
ーーーーーー
「まぁ、そんなところか」
元々Lv.3の頃は1.3倍。Lv.4になったら1.5倍。そんなもんである。
レベルが上がって興奮したが、すぐに強くなれるわけではなさそうだ。
ステータスに表示されるATKやDFなどは確認はしやすいが、それ以外の部分にも俺の才能(タレント)は効果があるそうだが、学生時代はいざ知らず、流石に機関に調べてもらうには些かお金が足りないだろう。
こんな時に、今の生き方は辛いなとは思うが、しかし無くても困らないのですぐに忘れることにした。
「そんなことよりも、この謎の瓶だよな」
確かに、昨日飲んでしまったはずだ。
だが、今日飲んだ時にはレベルが上昇した。
もしかして、昨日は飲んでなかったのでは? でもそう考えるのは早慶すぎるだろうか?
「考えても仕方がない。とりあえず、朝飯だな」
定期的に魔石を納めている定食屋へと向かうことにした。
宵越しのお金はないため、朝は基本的に文無しだ。だから定食屋に無理言って魔石の代わりに朝飯をもらう事にした。それが思ったより好評で、今では定食屋の方からお願いされるようになった。
確かに、Eランクの魔石だからって、現金なんだよな。
Eランクの魔石はFランクに比べてかなり潜らないと入手することはできない。
だから価値は10倍では効かない。1つで万の位はいくだろう。それを最低10個は収めているのだ。朝飯は一食で300円程度。相場の10倍以上支払っているのでそんな反応になるのはうなずける。
「らっしゃーい。今日は少し遅いねー」
看板娘のハルカが笑いかけてくる。
「久しぶりにレベルが上がってね、少し興奮していたよ」
「おーおめでとーー!! じゃぁ今日は味噌汁を豚汁にしちゃうね!」
「おお、サンキュー」
それでも余りある金額を支払っていることなどハルカは知らない。
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