第70話 ドワーフが村の仲間になる
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「「「人間さん達、ありがとうデス」」」
ドワーフさん達が一斉にそろって頭を下げる。
「人間さん達が助けてくれなければ、全滅していました」
「ありがとうデス、本当に、本当にありがとうデス!」
何度も、何度も頭を下げる。
村は見る影もなく破壊されてしまったが、ドワーフの皆さんを助けられてよかった。
「ドワーフさん、魔族は何故この村を襲って来たのか分かりますか?」
「魔族は、この土地に何か用があったらしいのデス」
「土地に?」
「はいデス。さっき人間さんが倒した魔族がぼく達を攻撃している間、別の魔族が何か魔法を使って、土地に何かをしていたのです」
「土地に?」
僕はその場で何度か足踏みしてみる。別に、変な魔法がかかっているという雰囲気はない。
「カエデ、何かわかるか? 毒がまき散らされていたりするとか」
カエデが音もなく、ひざまづいた姿勢で現れる。
「わ! 急に人間さんが増えたです」
「どこから出てきたデス!?」
シノビの中でも、特にカエデは動きが俊敏だ。初めて見たなら驚くのも無理はない。
「ご報告します。私は毒のエキスパートですが、特にこの土地に毒のようなものは感じません。また、部下のシノビも使って先ほどから調べていますが、特に罠のようなものは見当たりません」
ということは、何か良からぬモノを置いていった訳ではないのか。
ならばこの土地に元々あった”何か”を奪っていったのだろうか?
「ドワーフさん達が知らない、この土地にあった”何か”を魔族は奪っていったと考えるのが妥当か……」
「仰る通りかと」
カエデが跪いたまま肯定する。
「”何か”を奪った魔族は、先に帰って行ったのデス。きっともう遠くへいってしまったのデス」
「いや、僕の村のシノビ達ならまだ追いつけるかもしれない。カエデ、他のシノビさん達と一緒に追跡してくれ」
「承知しました」
カエデと、近くにいたシノビ達がまた音もなく消える。
”刻印魔法”によって強化されたシノビ達の索敵能力は凄い。もし見つけられたなら、追って魔族の本拠地の場所を突き止められるかもしれない。
魔族がこの村にあった”何か”を使って企みを進めているなら、きっとよからぬ事だ。何としても阻止しなくてはならない。
それに、魔族はいくつかの派閥に分かれていると言っていたが、今回の派閥と父上を誘拐した派閥が同じ拠点にいる可能性はある。父上を取り戻すにも、今回の魔族を追跡するのが最短だろう。
「さて、魔族の方は一旦シノビ達に任せてと」
僕はあらためて破壊されつくした村を見る。
住人は無事でも、村はとても住める状態ではない。さっきまで命が助かったことに喜んでいたドワーフさん達も、今は村の様子をみて途方にくれている。
そこで、僕はドワーフの村長にとある提案をする事にした。
「ドワーフさん、良ければ僕たちの村に来ませんか?」
「人間さん達の村にお引越し、デスか?」
ドワーフさん達はきょとんとしている。
「僕の村は、まだまだ発展中です。そして、できるだけ色々な種族の村人がいるほうができることも幅広くなると思うのです。どうでしょうか? もちろん強制はしません」
ドワーフさんは、宙をみたままぽけーっとしている。
……やはり引っ越すのは嫌だったか? 無理もない、慣れ親しんだ土地を離れるのはとても辛いだろう。
と、思ったのだが――
「「「喜んでお引越しするデスーーーー!」」」
ドワーフさん達が急に飛び上がり、満面の笑みで答えてくれた。
「助けてくれたうえに村に迎えてくれるなんて、人間さん達はなんて優しいデスか!」
「感謝感謝デス」
「人間さん達の村、楽しみデス!」
「では、よろしくお願いします。ドワーフさん」
僕はしゃがんで、ドワーフの村長さんと握手を交わす。
「この恩は忘れないデス!」
「お役に立って見せるデス!」
「頑張るデス!」
こうして、ドワーフさん達が新たに村の仲間になった。
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