第59話 温泉づくりづくりプロジェクト、順調に進行
――王国武闘大会から数日後の、ロードベルグ伯爵家。
ザッハークと魔族の男がいなくなり、屋敷にはカストルと使用人たちしかいなくなった。
伯爵家の敷地内にある訓練場で、カストルは刃のついていない訓練用の剣を振るっている。
技を受け止めているのは、人の形をした木製の練習台だ。人形練習台の顔部分には、メルキスの顔の絵が書いてあった。
このメルキス練習台を剣で叩くのが、メルキスが追放されてからのカストルの憂さ晴らしの方法だった。
しかし、カストルは剣でメルキスの顔の絵を叩こうとして、寸前で止める。
「なんでだよ……」
カストルは、剣を取り落とす。
「なんで、なんで俺なんかを助けたんだよメルキス兄貴! メルキス兄貴がハズレギフトを授かったとき、あんな酷いことしたのに……! 俺は自業自得で魔王復活の核にされたっていうのに。どうして!」
答えが出ない苛立ちをぶつけるように、カストルはメルキスの絵が描かれていない練習台にがむしゃらに剣を振るい続けた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「それでは、手分けして”オンセン”建設プロジェクトを進めて行きましょう!」
「「「おおーー!!」」」
村のみんなと一緒に、僕は極東の”オンセン”を再現する計画を進めていた。
「僕は植物魔法を使ってオンセンを建てるための木材を用意します。タイムロットさん達冒険者チームは、体力を活かして穴掘りと岩系材料の調達を。オンセンの完成形を知っているシノビの皆さんは監修を。キャト族の皆さんは、魔族の探索ついでに村の中では調達できない材料を他の村から買ってきてください」
「「「了解(ニャ)!!」」」
種族や出身が違う村人達が、それぞれの強みを活かして1つの目的に向かって動き出す。人が増えれば計画通りにプロジェクトを進めるのが難しくなってくるのだが、マリエルが上手くコントロールしてくれている。
王族として人の采配について勉強しているだけあって、とてもスムーズに計画が進んでいく。
僕も早速畑に向かい、木材系の材料の調達を始める。
「では主殿、この”ヒノキ”という木を育ててください」
「わかった、植物魔法、“グローアップ“発動」
魔法の効果によって一瞬で木が育つ。
「見たところ、普通の木みたいだな。これならわざわざ育てなくても、村の周りの森から切ってきても良かったんじゃないか?」
「いえいえ。主殿、このヒノキの木を切ってみてください。
僕は剣で幹を両断する。すると――
「なんだ、この上品な香りは!?」
「そう、これこそがこのヒノキの特性です」
確かに、こんな木で建物を建てたらいい香りに包まれてリラックスできるだろうな。
僕は必要分のヒノキを育てて、切り出していく
「竹も必要です。公園の竹林から切り出してきましょう」
こちらも必要分、以前に作った極東大陸風公園の中にある竹林から切り出す。
「お、主殿。良いものを見つけましたよ」
カエデが、足元にあった茶色い円錐形の何かを指さす。
「なんだそれは?」
「これは、成長途中の竹で”タケノコ”と言います」
そういってカエデはタケノコを掘り起こし始める。
「そのタケノコもオンセンを建てるのに使うのか?」
「いえ。タケノコは柔らかくて建築材料には向きませんので」
だったら何故掘り起こしているんだろう。まさか……。
「もしかして、タケノコも食べるのか?」
「はい。コメに混ぜて炊くととても香りが良いのですよ」
極東大陸の人は、本当にいろんな植物を食べるな……!
しかし、極東大陸の料理が美味しいのは僕もよく知っている。楽しみにしておこう。
こうして、オンセンを建てるための木材はそろった。他のチームも、順調に作業が進んでいるようだ。
――そして三日後、オンセンが完成した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます