第58話 ドラゴンのブレスを利用して村に温泉を作る
国王陛下から宝剣を受け取ってから、僕たちはすぐに村に戻った。
そして早速村のみんなを集め、王都であったことを伝える。
「どうかみんな、父上を魔族から救い出すために、力を貸してください。そして、それが魔族の企みを打ち砕き、この村や国を守ることにもつながります」
「頼まれるまでもございません。このカエデとシノビ一族、主殿のためにこの力を使いましょう」
「わ、私も頑張りますぅ〜。……怖いですけど……」
「ボクたちキャト族もお役に立ちますニャ! 国中を駆け回って取引をしながら、情報を仕入れるのニャ!」
「領主サマのために役立てることがあるなら、なんだってやりやすぜ! なぁみんな!」
「「「応!!」」」
村のみんなは、当然とばかりに力を貸してくれた。僕は、とても良い村の仲間を得た。
「領主様のお父上には個人的に興味がありやす。武人として、一度手合わせしたいもんですぜ!」
タイムロットさんが拳を胸の前でぶつける。
「まず初めに、機動力と諜報力が高いキャト族の皆さんとシノビの皆さんに、情報収集をしてもらいたいです。父上をさらった魔族は、ワイバーンに乗って北の方へ飛んでいきました。もちろんフェイントの可能性も有りますが、まずは北の方を重点的に探すのが良いかと思います」
村のみんなが頷く。
「この国の中に魔族の拠点があると仮定して、国の面積の7割までしか絞り込めません。そして、魔族が人間に変装して人間の街に潜伏しているのか、それともモンスターの棲む森の中に住処を作っているのかも不明。魔族を見つけるまで数か月、あるいは数年かかるかもしれません。長期的な、とても険しい任務になると思います」
「かまいません。主殿のためにお役に立てるこの機会に、むしろ感謝さえしていますとも」
と、片膝をついた姿勢のカエデ。
「ではせめて、たまにでも村に休みに帰ってきてくれ。疲れをいやせるように、村で美味しいものを用意しておこう。他に何か、疲れを癒すために準備して欲しいものはあるか?」
「主殿のお心遣い、感謝致します。それでは1つ。“温泉“が欲しいです。温泉があれば、村に戻ったときに疲れを更にいやせるようになるかと思います」
「“オンセン“……?」
「極東大陸では、毎日水浴びではなく温かい湯に身体でつかる習慣があるのです。あれがとても疲労回復に効きまして。帰ってきて温泉があると思うと、きっと皆任務も頑張れるでしょう」
カエデの後ろにいるシノビのみなさんがうなづく。
「わかった、では早速そのオンセンというものを作ろう。しかし、人が何人も浸かれるほどの量のお湯を沸かすのは、とても大変そうだな。極東大陸では、どうやって暖かい湯を調達していたんだ?」
「温泉とは、火山活動の影響によって温められた湧水を使うものです。極東大陸の火山の近くでは、熱く煮えたお湯が沸き出すところがあり、そこから温度を調整しながらお湯を引いてくるのです」
「なるほど、火山の熱を利用するのか……残念ながら、この辺りにはそんなに活発な火山はないな。毎日大量に薪を使ってお湯を沸かすのも難しい。そんなペースで木を切り続けたいたら、村の周りの森がすぐになくなってしまう。残念だけど、オンセンを作るのは諦めよう」
「いえ、ご心配なく。実は以前より、この村に温泉を作る方法について考えておりました。私に一つ、簡単に大量のお湯を沸かす良い考えがございます」
それを聞いて、ナスターシャが目を丸くする。
「ふぇ〜、カエデさんすごいです。簡単にお湯を沸かす方法なんて、私にはどうやっても思いつきません〜。私もオンセン入ってみたいですぅ。一体、どうするんですかぁ〜?」
カエデが片膝をついた姿勢から立ち上がり、ナスターシャの肩をポンと叩く。
「はっはっは。ナスターシャ殿、ご冗談を。ここにあるではないですか。薪を使わずに簡単にお湯を沸かす方法が。ほら、すぐ近くに」
「ええー、どこですかぁ?」
ナスターシャが辺りをキョロキョロと見渡す。
「私は考えました。ドラゴンのブレスを使って毎日大量のお湯を簡単に沸かせるのではないかと。……ナスターシャ殿、あなたが温泉になるのです」
「えええええぇー!?」
こうして、村の温泉づくりプロジェクトがスタートしたのだった。
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