第3話 プロローグ③その名はサミエラ・ゴールディ

 次の瞬間、いつものマサムネスタイルと男声に戻る。


「はいはい、事前公開はここまでだよ。メタな話をするこのバーチャルマイルームではこのマサムネスタイルが俺のルールだからね。彼女の活躍は是非ゲームの中で見てほしい」


――おけおけ!!

――ますます高まる期待【投げ銭】

――くっ……また嫁が増えてしまう

――ちょ、まだ見足りない

――マサムネのキャラメイク相変わらずハイセンスだわ

――歴代マサムネコを一同に並べたい

――……


「さて、じゃあ初期設定を続けるね。性別の次は年齢と名前だけど、この時代は10代後半で一人前だったから年齢は17歳。名前はマサムネをいじってサム・マネからの、サムを女性っぽくサミエラにして、マネをマネー=お金ということでゴールド。それを名字っぽくしてゴールディで、サミエラ・ゴールディというキャラ名でいきたいと思います」


――おぉ、いいじゃん

――十代で一人前とか過酷な時代やな

――サミエラ姐さん!

――ゴールディの姉御!!

――おけまる!

――愛称はサミィかな

――うん。外見とも合ってる気がする

――……


「次は、始まりの町なんだけど、ゲーム開始時の時点では全部で60の港町があるらしくて、それを4つの国、スペイン、イギリス、フランス、オランダで分割統治しているみたいだね。だからどの町を選ぶかで所属国が決まっちゃうんだ。

 あと、このゲームそのものがプレイヤーの存在が歴史に及ぼす影響を検証する実験でもあるらしいから、1つの町につきプレイヤーは1人だけという制限があるんだってさ。すべてのサーバーはスタート時はまったく同じ状態でNPCも共通だからプレイヤーがいなければすべてのサーバーは同じ歴史を辿るらしいけど、プレイヤーという異物がどれほどのバタフライ効果を及ぼすかが知りたいらしいね。

 そんなわけで1サーバーにつきプレイヤーは上限60人でスタートして、プレイヤーがリタイヤして減っても基本的に補充や統合なしで進めるみたいだね。サーバー数は1000あるってことだから最大6万人までプレイできるってことだね。……あ、ちなみに事前予約でもう人数上限は埋まってるから今は予約を打ち切ってるね」


――間に合わなかったorz

――1サーバー60人って少なすぎ

――わい、998サーバー。ギリギリじゃった

――マサムネが予約したと聞いて申し込んだけど間に合わんかった

――562サーバー

――マサムネはどこ?

――……


「おぅ、悲喜こもごもだね。ちなみに俺のサーバーは内緒だけど1~100サーバーのどれかだから見つけたらこっそり声かけてね。ちなみに1~100は運営が直接声をかけたプロと応募者からランダムに選ばれたプレイヤーが入ってるらしいね。俺は運営にスカウトされたクチだけど」


――マサムネ呼ぶとか見る目あるじゃん

――マサムネの経済効果はヤバイからな

――人気実況者から良ゲー認定されたゲームの運営は勝ち組

――バトルオブブリテンも天下布武も今なお人気

――マサムネの実況で予習しつつサーバーの拡張と追加募集待つわ

――……


「話がちょっと逸れたから戻すけど、60の港町のうち、本国から植民地の全権委託された副王が治める大きな町が全部で4つあって、副王から各方面を任された総督の町が8つあって、残りの48の町は8つの総督の町のどれかに所属しているってことになってる。……で、ここがさっき言ってた、女性アバターへの初期サポートの1つなんだけど、女性アバターを選んだプレイヤーは早い者勝ちだけど4つの副王の町と8つの総督の町のどれかをスタート地点に選べるんだ。そこそこ発展していて治安がいいから女性アバターの安全がある程度確保されてるっていうのがその理由だね。俺はイギリスに所属するプエルトリコ島のサンファンという総督の町からスタートすることになったよ」


――あ、察し

――このタイプのゲームは殺し有り、レイプ有りとなんでも有りだもんな

――男尊女卑かつ人種差別と奴隷制も合法だった時代

――小さい町だと海賊に襲撃されて拐われる可能性も

――初期サポートあってもやっぱり女性アバターには辛いなー

――マサムネ茨の道を選んだな……


「そうだね。まあなんとか生き残れるよう頑張るよ。リアリティ重視だから死んだら復活できずにゲームオーバーになるのは当然なんだけど、病気や怪我や部位欠損の後遺症もそのまま残るらしいから、後に引く怪我とかにも気を付けなきゃいけないね。撃たれたり斬られたりしたら普通に痛いし、手足を失ったらその後がかなり大変になるしね」


――マジでリアル

――味覚も嗅覚も痛覚もあるしセックスもできるし子供もできるからゲーム内にいる限り現実と変わらん

――食事はするけど排泄しないところだけはフィクション要素

――リアルでもフルダイブ中は生命維持装置に入ってるから食事も排泄も自分の意思ではせんけどねw

――ンコの為に情報処理領域使うとか誰得だよ

――ぶっちゃけタイムスリップと変わらんよな

――……


「まあこれだけフルダイブ環境のリアリティが上がると現実との境目が曖昧になるよね。こればかりはそれぞれの個人で折り合いをつけるものだと思うね。俺個人としては、さっきタイムスリップってコメントもあったけど、それに近い感覚かな。ゲームの中は一つの現実の世界として受け止めてるよ。古典ジャンルの異世界転移みたいな感じかな」


――それだっ!

――異世界転移か。なんかしっくりくるな

――心底納得だわ

――なるほど。マサムネスタイルの根底はこれか

――なるなるっ! マサムネは役になりきってるというより現実として受け止めてるからこのプレイスタイルなんだね

――……


「さて、初期設定を続けるよ。これは男性女性アバター共通だけど、自分がどんな方向に進んでいきたいかに合わせて得意ジャンルを3択から選ぶんだ。一度選んだら変更できないからよく考えなきゃいけないね。その選択肢はこんな感じだよ」


□経済/交易に役立つ目利きや交渉術の基礎知識


□海戦/水上戦闘に役立つ砲術や剣術や指揮の基礎知識


□航海/操船に役立つ航海術や帆船に関する基礎知識


――これは悩む

――全部欲しい

――どれも必要だろ

――絞れねぇよ

――マサムネは決めてるの?

――……


「んー、この中なら航海かな。海戦はほとんど経験ないけど砲術や剣術や軍勢指揮は経験あるし、目利きや交渉もそこそこできると思うんだよね。それより帆船についての基礎知識と航海術は未知のジャンルだから必要かなって」


――あ、納得

――プレイヤーの元々のスキルと経験値は盲点だった

――尾張のうつけ姫の経験値は大きいな

――歴代マサムネコの記憶を引き継いでるのはすごいアドバンテージ

――織田家の姫将軍とドイツ空軍大将の経歴を持つカリブ海の駆け出し商人(笑)

――これなら航海一択だわ

――……


「ということで得意ジャンルは航海にしたよ。じゃあ最後に、船と初期資金の設定なんだけど、これも3択から選ぶようになってるから共有するね」


□船重視/初期資金12000ペソとブリッグ船[最大積載80バレル、最速11ノット、最大大砲数16門、最大乗員50人、最低操船人数10人]


□バランス重視/初期資金20000ペソとスループ船[最大積載50バレル、最速11ノット、最大大砲数14門、最大乗員40人、最低操船人数8人]


□資金重視/初期資金30000ペソとピンネス船[最大積載50バレル、最速10ノット、最大大砲数8門、最大乗員30人、最低操船人数6人]


――ペソってクレジ換算でいくら?

――これは悩ましい

――ノットって?

――船の名前だけじゃわからんkwsk

――1日の経費はいかほど?

――詳細キボンヌ

――このデータだけだと船重視かバランス重視かな

――……



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