第22話

アールバーティの村は行商人の言った通り、街道の最果てにあった。

大きく開けた場所に至ると、小さな市が開かれている。街道の果、位置に面して建つのは大きな祭殿(と思われる建物)だった。


ここが村の中心部だろうが、そこには本当に小さな市しかなかった。祭殿から人が出てくる気配もない。

私は故郷の風景を思い出す。

黄土に覆われた痩せた大地。母を病気で亡くし、父を戦争で失ったあの少年時代を。

寂れた村というものはどこだって同じだった。


空気が死んでいる。

時間の流れが止まっている。


世俗から切り離された場所とは、都会の僧院などではなく、田舎の民家の事こそを指すべきだと思ってしまった。



早速、カラッダの場所を尋ねようと、村人と思われる男に話しかけた。


「すみません。私達は旅をしておりまして、ある場所を探しているんですが」

突然笑い出したアムリタ。

「卿、変な喋り方するのね」

「うるさい!こういうときは場を弁えるもんだアムリタ!」

「へーい」


男はキョトンとした顔で私達を見つめた。言ってしまえば悪いが、みすぼらしい服装がその顔によく似合っている。


「何?あなた、私達の言葉がわからないの?」


私はアムリタのその言葉を聞いてハッとした。


迂闊うかつだった。こんな寒村で中央の言葉が通じるはずがないじゃないか。)


ジェスチャーでなんとか謝罪の意を示したが、伝わったかどうか危うい。男は祭殿に向かって祈りを捧げた後、そのままどこかへ去ってしまった。


私は話せる限りの多くの言語で村人に話しかけていった。しかし、どの人にも通じない。アムリタに他の言語を知っているか尋ねたが「さあ」とだけしか答えてくれなかった。

(こういうときのアムリタは決まって頼りにならないな。)


とうとう宿もないまま、私達はアールバーティの村で最初の夜を迎えることになった。


夜のアールバーティの村は松明の灯りが点々と点くぐらいで、ほとんどの灯りがない。

高床の家々から光が漏れ出すこともない。

中心部の広場でも談笑の声すら聞こえてこない寂しい村だった。


今日も私達は雨で濡れた服を地面に敷いて眠りについた。

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