第21話

朝になった。太陽が、道の行き着く先から昇り始めているのが見える。


昨晩、襲撃とも言えないような場面に出くわした。アムリタは身勝手な行動をしていた私に怒ることはなかった。

むしろ彼女は私を包み込むように受け止めてくれた。


「昨日の晩はありがとう。俺が勝手なことをしてしまったばっかりに、」

「卿が気にすること無いのよ。あのガキがこの状況についてはある程度は教えてくれたんでしょう?」

「いいや、俺が言っているのはそんな損得の問題じゃないんだ」

「わかってるわよ、そんなの。でも、卿が何か悪いことをしていたわけではない。それは私にとっても、卿自身にとっても事実でしょう」

「ああ...」


私は言葉に詰まった。

彼女の優しさにははてが存在しない。損得を無視するなんてことは、これまで人間ができたことではなかった。

彼女はやはり人間ではない。

その現実を見つめ直した時、私はどうしようもないほど惨めな気持ちになる。

アムリタ自身、餓鬼・畜生の身では無いにしても、人外というものは、普通一般の人間に受け容れられるものではない。


「また妙なことを考えていたでしょう?」

活動的な服に身を包んだ

私は図星を当てられて、下手にごまかした。

「いや、そんなことはない。さあ、早く出発しよう」

「おー!」



私達は野原を越え、湿原を越え、1つか2つの谷も越えた。


それでも目指すカラッダの地はまだ遠い。

雨季に入り、行き交う行商人の数も日をまして少なくなる。

食糧問題に直面するのは時間の問題だった。


何より憂鬱だったのが、昼頃に降り出す雨だった。


突然降り出すものなので、対処のしようもない。酷い時は足止めを食らう。

降られれば、布はびしょ濡れ。荷物が純粋に重くなる。重くなった荷物は、私の足腰の大きな負担になる。


「雨季も時期に終わる。今年は長引いているだけだ」

山道を闊歩しながら、私はブツブツと文句を垂らすアムリタに言った。

「にしても変よ!私だっておかしいと思うわ」

「何か、裏があるっていうのか?」

「わかんない!」

変なことを言い出すアムリタを横目に私はあるき続けた。3日前に話した行商人の話によれば、そろそろアールバーティという少し大きな集落に着く頃だ。ナールガモンから始まった道はアールバーティを終着地点としていると聞いた。カラッダは道の終点にあるというイスマイルの話と矛盾するところもあったが、私はその行商人の言葉を信じて歩き続けた。



2日後の朝、私達は遂に峠を越えてアールバーティの村に到着した。

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