第12話
私は緑の幻想的な世界の中で絶句していた。
「おい、説明は、、、ないのか?」
「この状況で、果たしてそれは卿に必要?」
アムリタの月に照らされた頬が吊り上がる。
「
私は足元、葉から
現実から夢へと流れ、確かに足元に落ちる。
上を見る。
鮮やかな鳥の舞。
夜露に巻かれた森の中で、月光に舞踊る鳥の強かさを私は確かに目にした。
「こんなことがあっていいはずがない!こんな物はまさしく妖術のそれだ!」
私は怒った。夢幻の世界を前にして、現世を呪った。
「あら、お愉しみのためと思って見せたのに、」
幻想は収縮していく。
私はその前に立ち尽くす。
(この娘の前では私は非力だ。)
部屋は5秒もかからないうちに、そのすべてが元通りになっていた。
月も高木ももうそこにはない。
アムリタは私に背を向けた。
「私は人じゃないの」
「...じゃあ、一体なんだって言うんだ」
「言えないのよ。それに、もう行かなきゃ。思っていたよりも早いお別れになっちゃったわね」
「何を言っているんだ。カラッダへの方角はまだわからないんだろ?一緒に探そうと言っていたじゃないか」
「...私一人でも何とかなるわ。それに急がないと、これ以上沢山の人に迷惑をかけることになるのよ」
私はアムリタに掛ける言葉を探した。彼女の家を探すのを手伝おうと申し出ようか。
それとも、好きにしろ、と突き放すか。
私に選択肢はあったのだろうか。
今となってはもうわからない。
壁が揺れる。
真前の土壁にヒビが入っていく。
アムリタの顔が歪んでいく。
「もう来たっていうの?」
アムリタは割れていく壁を構えをとって見つめている。
「ここなら、安全だと思ったのに」
アムリタは手を上げて、崩れていく壁に添えた。
「卿、やっぱり私達少し遅かったみたいね、、、武器を準備して。数は多いけど、あなたにでも戦える相手よ。それと、皆を建物の外に出して」
アムリタの顔に迷いはない。
その顔は一切の「詫び」を孕んでいない。
これから起こる全ての未来を私は彼女の瞳中に認めた。
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