第4話

我々はナーガルモンの街にたどり着くと、食事を取るために行きつけの店に入った。

沿道には、美人の王侯令嬢が居ると噂を聞きつけて人だかりができている。

「卿!あれ何?」

「スパイスの入った瓶だ」

「スパイスって?」

「味を調節するためのもんだ。腐らせないためにも使う」

「じゃあ、あのオジさんが飲んでいるのは?」

「あれは酒だ!お前は酒も知らないのか!?」

「嬢ちゃんも飲むかい!?」

オジさんが満面の笑みで答えてくれた。


こんな調子で私はアムリタにひたすらに質問攻めにされる。僧の身で、女性と昼間っからこの店に居るのは憚られることだったが、致し方なかった。


「おいワンさん!あんた、なんだ、そんなかわい子ちゃん連れて修行をもう辞めちまうのか?」


外野からヤジも飛ぶ。


「辞めてください、困っていたから助けたまでです」


「ほんとにそれだけか?東方人の腹の中はどんななってんだろうね〜」

そこで出す話じゃないだろう、と外野を一瞥して私はアムリタに言った。

「取り敢えずここに来たのはお前が家に帰るためだ。俺にはカラッダとか言う所がどこか検討もつかない。出来るだけ情報を集めるんだ。寝泊まりする場所のつてならある。ここで飯を食ったらそこに向かうとしよう」


「うん…」


アムリタは寂しそうに黙りこくってしまった。外光を受けて緑に輝く髪の毛を垂らし、俯いている。

顔を上げたかと思うと、私の目をギュッと捕らえ、そして離し。

「お別れの話は今はよして、、、」

と儚げに呟く。


私は新たな自分に出会ってしまったような気がした。

姫の様な女に魅入られて、動けない自分を。

儚げな乙女を見せつけられて、言葉を失う自分を。


私が言葉を失っていると、店主がやって来た。

「商売の邪魔だ。沿道の連中をどうにかして、そんで帰ってくれ」

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