第5話

ストゥーパの見下ろす街の中、この派手に着飾った娘を連れて私はその伝手つての元に向かった。


「アーシャ、居るか?」

「どんな人かな」

黄色い壁に凭れかかりながら、アムリタは体を横に揺らしている。広場の方では見世物をやっているようで、陽気な音楽が聞こえてくる。


礼明リーミン!久しぶりね」

そう言いながら奥からその伝手は出て来た。浅黒い肌は瑞々しく、年の割には若さを保っている。アムリタを見るや否や、


「、、、また女の子なんか連れて、、、罰が当たるわよ、、、」

「勘違いだ。ただの人助けだよ」


「-そんで、情報が見つかるまでの間、ここに彼女を泊めて欲しいというわけだ」

私は一通りの説明を終え、アーシャと顔を見合わせた。

アーシャはアムリタを一瞥し、

「アンタには借りがあるから、泊める場所を貸すってだけならいいわ。でもちゃんとした安全は保証できない。見たところ、この娘、かなりの上物の服を着ているし、飾りもそこらに出回っているそれとは違うわ。うーん、最近、物騒なことも多いしね、、、安全面を考えると僧院が一番だと思うけど、女性禁制っていうのがネックなのよね」

「卿、ホントにここで大丈夫なの?ただの下町の宿屋じゃない」

「『ただの下町の宿屋』でごめんなさいね!でもこの辺りじゃ一番っていう自負はあるわよ」

アーシャは嬉しそうに筋肉の付いた二の腕を見せつける。自信アリとのことだろう。

「……で、どうなんだ?難しいか」

私は確認を入れた。

「アンタに任せるわ」



アムリタはアーシャのもとに泊まることになった。アーシャは気を使って私とアムリタの替えの服を用意してくれた。

私はそれなりに自分の体面には気を使う。

アムリタについても強盗に襲われかねないから、とのことだった。

華美な飾りは全て引き取られ、簡単な鍵の付いた金庫の中に入れられた。


普通の服装の中のアムリタは、素朴な感じがする。さっきまでとは違った趣の美しさを漂わせている。長い黒髪を結うと、そこには少女の横顔が現れる。


ところで、アムリタには社会性というものがまるで無い。

私はこの頃からすでに彼女は普通の人間、いや、ことに気づき始めていたのかもしれない。

アムリタは男の前で平気で服を脱いだり、そんな状態でみだりに体を触ってきたりする。

先の好奇心と言い、彼女は見た目以上に幼い。幼さの中に、また弱さが見え隠れする。


我々は街で聞き込みをしたが、カラッダについての情報は何一つ見つからなかった。路地を歩いたとき、新弟子の陽潜に見つかりそうになり、慌てて二人で建築物の隙間の中に身を隠したことも、私としては一つの思い出となった。

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