第1話 学年代表とクラス代表
一人の女子生徒が立ち上がり何処かに向かって歩きはじめる。
周りの視線がそれに吸い寄せられていく。
顔立ちが整い、茶髪のロングヘアーでよく見ると可愛い。
そんな可愛い彼女が向かっている場所とは一体。
大和がしばらく彼女の方に視線を向け確認していると。
「赤城君、ちょっといいかしら?」
「……ん? 早乙女さんだっけ?」
「何で赤城君はさっき挙手しなかったの? 赤城君も学園ランカーでしょ」
「…………チッ」
思わず舌打ちした大和。
「「「えぇぇぇぇぇ~~~~~~~~~~」」」
クラス中が衝撃の事実に驚く。
大和は春奈の言いたい事をすぐに理解できた。
なぜなら大和もこの学園のランカーに選ばれた一人だから。
「簡単な理由だよ。俺は将来にそこまで執着がない。だから正直に言うなら代表者やランカーに興味がないんだ。さらに言うと魔術師にも。だから挙手しなかった」
大和の意見は正論。
そこに裏はない。
あるのは本音と言う真実のみ。
春奈がため息をつく。
「呆れた。ならなんでこの学園を選んだのよ? 将来、魔術師を目指さないなら蓮華学園じゃなくてもいいじゃない」
「それは何となくかな。理由をもしあげるなら今後何かしたいって思ったときに融通が利くから?」
「そう。なら校庭にいかない? 赤城君なら私の練習相手になれるでしょ」
周りから見ても違和感があるのだろう。
誰が見ても会話のキャッチボールが成立していない。
どちらかと言うとキャッチボールと言うよりは春奈の一方的な会話の投球だ。
彼女は自分の意見を早く伝えたい為に話しの道筋を強引に変えたのかもしれない。
――大和は迷う。
魔術の行使には魔力は勿論体力も使う。
簡単に言うと疲れるのだ。
しかし、今後を考えるなら春奈とも上手くやっていくのが無難。
だけど戦いたくはない。
今はそんな気分じゃない。
そのため大和にとっては辛い選択を迫られた。
クラス代表者となった春奈には今一般生徒ではアクセス出来ない資料の閲覧やクラスメイト処分決定権等の様々な権限が付与される。
また学園ランカーには特別な権限が付与されている。
大和以外の今年の学園ランカーは一般生徒から見れば全員が学年の高権限者である。
すなわち毎年学園ランカーは各学年で基本五人ずつだ。今年の学園ランカーは花園学園百年の歴史の中でも稀な六人だ。
暗黙のルールでクラス代表者=学園ランカーとなっていたりもする。
大和は冷静にクラス全体を確認し波風を立てないようにした。
「分かった。軽い手合わせ程度なら」
大和は頷く。
その言葉を待っていましたと言わんばかりの顔をする春奈。
「良し。なら第二校庭に行くわよ。第二校庭なら人も少ないだろから少しぐらい暴れても大丈夫だろうし」
大和は手合わせ程度なら、と言ったわけだがどうやら上手く伝わってないみたいだ。
――。
――――。
校庭に着くとあろうことかギャラリーが沢山いる。
よく見るとさっきまで見ていたクラスメイトが大半だ。
どうやら大和が思っている以上に周りは興味があるのだろう。
「あの二人学園ランカーらしいよ。ドキドキするね」
「俺、早乙女さん可愛くて一目惚れしちゃった」
と声が聞こえてきた。
「赤城君ルールを決めるわよ。勝敗は直接魔法が被弾しダメージを負うか地面に膝をついた方の負けって事でいい?」
「分かった。集合の時間もあるし制限時間は三十分でそれまでに勝敗が決まらなければ引き分けでいいか?」
「いいわよ。なら今から一分後に試合開始で」
春奈の提案に大和が頷く。
試合と言っても練習試合みたいなもの。
なのにこの盛り上がりはなんなのだろうか。
大和にはその理由がわからない。
それに他クラスの生徒も十人程いるみたいだが学園ランカーの姿は見えない。
大和とは対照的に春奈はワクワクしているのか少し笑っている。
――いざ、試合開始。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます