黒魔法使いは訳アリ生徒会長(美女)の告白を二度断った癖にその期待には応えようとしているみたいです

光影

プロローグ 入学初日


 私立蓮華学園は今年で創立百年を迎える。

 伝統と格式ある学園で多数の魔法師候補生が通っている。

 この学園は実力主義である。

 魔法行使に特化した人間――魔人と呼ばれる人類が進化した生命体が地球上に存在する。

 魔人と同じく魔力を持ち魔法行使する魔獣(ペット)を倒す為の力が今この国には求められている。進化し力を得たごく一部の者と力なくそれに抗う者では考え方に違いがありお互いが理解し共存するには難しい課題が沢山あった。

 つまり魔法を使う為の知識が沢山あってもそれを使いこなせないのであればこの世界では評価されない。簡単に言うなら性能の差である。旧人類と新人類の差。その差を埋め新人類に対抗するため旧人類の学園生は魔力制御や魔法行使の実務が必須課題となっている。


 静かな教室に担任の先生の声が響く。


「今からDクラスの代表者を決める。誰かやりたい奴はいないか?」


 クラスの生徒が近くの人と悩み顔で相談を始める。クラスの代表とは、簡単に言うと責任者である。クラスの生徒が何か違反したり、魔法の評定が悪かったりすると代表者が怒られるのは勿論、将来魔法師としては統率力がなしと烙印を押される。逆に言えばクラスの評価が良いと統率力ありとなり、将来が約束される仕組みだ。この学校は国の魔法師協会と強いパイプがあり学校での評判はすぐに魔法師協会の耳に入る。


 皆、将来を天秤にかけ迷っている。


 赤城大和は過去に色々とあり感情に乏しい為か自身の将来にあまり興味がなく、将来の事はその時に決めればいいと思っているのでクラス代表をしたいかなど考えなかった。


 しばらくすると――。

 誰も挙手しないせいか担任の先生が貧乏ゆすりを始める。


「やりたい奴がいないなら勝手にこっちで決めるがいいか? ちなみにAクラス~Dクラスは学園ランカーが責任者として抜擢された。お前たちの学年は学園ランカーが六人。お前たちがこのまま挙手や意見を言わないのであればこれでこの話を終える」


 その時、一人の生徒が手を挙げる。


「先生。ちなみに学園ランカーはこのクラスに、そもそもいるんですか? 学園ランカーの存在は一ヶ月後の模擬線時に公開されるのでいずれ分かるものですが現時点ではまだそれも分かっていません」


 さっきの人が「模擬戦後に公開される」と言っていたが少し勘違いをしている事に気づいた大和は心の中で自己解決する形で終わらせる。


 先生が鼻で笑う。


「よく考えてみろ。今年は学園ランカーが六人もいるんだ。各クラスに一人ずつはいないと不平等だとは思わないか? 」


「……」


「そうゆうことだ。ちなみに本人達にはもう伝えてある。だから本人達が言えばこのクラスの学園ランカーがすぐに分かるということだ」


 クラス中がざわめく。


「なんでこのクラスの学園ランカーは自ら名乗り出ないんだ」


「そもそも本当にいるのか?」


「自分の保身が大事過ぎてビビってんじゃない?」


 一人の女子生徒が手を挙げ椅子から立ち上がる。

 彼女は皆の注目を浴びながら堂々とした態度で言う。


「私がこのクラスの学園ランカーよ。私は別に代表者になりたいとかはないわ。ただ皆と普通に学園生活を送りたいだけ。でも皆がしないなら私が代表者になるわ。意義があるものはこの場で立ちなさい」


 彼女の堂々とした態度に皆が驚いている。口を開いたまま見つめている者、何が起きたか分からず周りをキョロキョロしている者、興味津々(きょうみしんしん)の目で彼女を見つめている者、自分の意見を堂々と言う彼女に憧れの目を向けている者と様々だ。


「意義はないみたいね。私の名前は早乙女春奈。これから皆宜しくね」


 担任の先生が鼻で笑い、貧乏ゆすりが止まった。


「やっと決まったか。ではこのクラスの学園ランカーは早乙女とする。今からの時間は自習だ。クラスメイトと交流を深めてもいいし勉学に励むもよし、魔法の実践練習で校庭に行ってもいいが下校時間までにはここに戻ってこい。じゃあまた後でな」


 そう言い残し先生は教室を出た。



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